「三人乗り自転車」の安全基準公表・試作車は来春までに
2008年07月25日 06:30
警察庁は7月24日、6歳未満の幼児2人を自転車に同乗させる「三人乗り」について、新しく設けた安全基準を満たしている自転車に限り、これを法的に認める方針を中間報告の形で決定・発表した。また、すでにガイドラインに基づいた「三人乗り自転車」の試作も行われ採用内定も済んでおり、来年2009年3月までには具体的な安全基準を策定し、解禁される。地方自治体の都道府県公安委員会規則もこれに合わせて改正される予定(発表リリース(PDF)、【詳細要件(PDF)】)。
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【カワムラサイクルが「3人乗り」もできる四輪自転車「かるがも」開発】でも解説しているように、従来道路交通法においては自転車の運転者自身の前方のカゴと、後方の荷台の双方に幼児を乗せる「3人乗り」は禁止されている。2007年末には警察庁が改めて「3人乗りは危険だからやってはいけない」とし、自転車の規則に明記する方針を公表。しかし母親たちの間から「子どもの送り迎えや買い物が出来ない」などとして容認を求める要望が相次いだため、3月4日には自転車業界団体に対し「3人乗り自転車」の開発研究を要請し、3人乗りの自転車利用を認める条件などを話し合う委員会「『幼児2人同乗用自転車』検討委員会」が立ち上げられ、具体的な要件についてのすりあわせが行われていた。
実際には道路交通法そのものが改定されるわけではなく、自転車の乗車定員を定める各都道府県の公安委員会による規則改正で対応する。
今回提示された、具体的な「適当と考えられる」項目は次の通り。
1.幼児2人を同乗させても十分な強度を有すること
2.幼児2人を同乗させても十分な制動性能を有すること
3.駐輪時の転倒防止のための操作性及び安定性が確保されていること
4.自転車のフレーム及び幼児用座席が取り付けられる部分(ハンドル、リヤキャリヤ等)は十分な剛性を有すること
5.走行中にハンドル操作に影響が出るような振動が発生しないこと
6.発進時、走行時、押し歩き時及び停止時の操縦性、操作性及び安定性が確保されていること
もちろんこの他に、座席部分は国内の基準・規格に適合したものであること、ヘルメットを着用すること、講習の実施、対人賠償保険への加入など、安全利用に向けた環境整備が求められている。なお詳細説明文を見る限り、幼児の着座位置は「前座席、後座席等」という表記が行われていることから、運転者の前部分・後ろ部分どちらに配されても問題はなしという結論に達している。
また、今回の基準骨子策定と並行する形で、検討材料を提供する目的で「安全性に配慮した幼児2人同乗用自転車の試作」の公募も行われており、7月8日には12件の自転車の採用を内定。来年2月末までに試作が決定している(【発表ページ】)。今回発表された主要6骨子とすり合わせながら、さらに手を加えられていくのだろう。
試作が認められた12社(と個人)は次の通り。先の記事で取り上げた、ランドウォーカー社の「かるがもG」の姿も見える
・紀洋産業……前輪駆動方式による幼児2人同乗用自転車
・唐沢製作所……安全走行を目指した片支持・後二輪型自転車
・日本ロボティクス……WB-1
・ジョイジャパン……仮称:Fun 2-Top V-3
・寺川英太郎……前二車輪車
・宮田工業……スカーフウインディ・トリオ
・ランドウォーカー……かるがもG
※パナソニックサイクルテック……(未定)
※ブリヂストンサイクル……(未定)
※オーアンドエム……お子さんを2人乗せて安全に乗車出来る二輪自転車
※丸石サイクル……(未定)
※ホダカ……20/22 LT-01
「※」は2輪タイプ、他は3~4輪タイプ
ブリヂストンサイクル(上)と宮田工業(下)の試作車
試作12車をざっと見てみたが、3輪・4輪タイプは車輪そのものの配置による車体の安定性をアピールする一方、2輪タイプは構造そのものやスタンドなど他の工夫で安全性を確保するよう努めているのが分かる。前後して掲示板にも寄せられた意見にもあるように、単純に考えて2輪よりも3輪・4輪の方が「素人が運転する場合でも」安定性が確保できるのは明らか。ただし3輪・4輪となると、構造が大型化してしまうことや価格が(通常の2輪車タイプの自転車と比べて)高くついてしまうのが問題点といえる。
また、上記で触れたが「子どもを前に乗せるか後ろに乗せるか」という問題に関しては各社色々と苦慮している模様。同じく掲示板からは「前に乗せると自動車事故と同じように、万一の場合危険」という指摘があったが「通常運転時に運転者の親が、子どもを確認できるかどうか」という点では前に設置した方が良い。今後も利用方法自身の提案と共に、各社で工夫が続けられることだろう。
「三人乗り自転車」については価格問題、安全問題、さらには「三人乗りで色々文句を言っているが、ならば子どもが三人いる家庭はどうなる」など、さまざまな論議を巻き起こしている。今後委員会で詰められる「適当と考えられる」項目の内容や、試作される「三人乗り自転車」とあわせ、さらに「最適化」に向けたやりとりが行われるに違いない。
(最終更新:2013/08/04)
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