富裕層にも及ぶ不景気の波・アメックスの四半期決算から見え隠れする、アメリカ経済の現状

2008年07月23日 12:00

カードイメージクレジットカード分野では世界的に名を知られているアメリカン・エキスプレス(アメックス)は7月21日、第2四半期(4月~6月)決算を発表した。それによると売上高は前年同期比で8%プラスの74.84億ドルに達したものの、純利益は38%減の6.53億ドル、1株あたりの利益は0.56ドルと前年同期0.86ドルに比して35%の減少を見せた。日本でも「プレミア的価値のあるハイソなクレジットカード」として名を知られているアメックスでも、減収となったこと自身驚きの話。だがさらに注目されているのは、今決算発表文に寄せられている状況分析の内容である(【発表リリース】)。

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発表文では最初に決算そのものの数字、そして6億ドルのクレジットカードの焦げ付きに対する引当金(課税分3.74億ドル含む)などを説明した上で、アメリカ経済について次のように現状を分析・報告している。

・該当期におけるアメリカ経済の凋落ぶりはここ数十年来もっとも速いスピード。消費者の信用収縮、失業率の増加、住宅価格の下落はきわめて著しい。個人消費は悪化し、銀行貸出などの各種クレジット指標も予想を超えて悪化している。

・これまでの4~6%という一株あたりの収益率増加を望むのは無理。特に6月の状況を見るに、それが不可能であることが分かる。

・事業及び経済全体に対する状況は1月時点の「それなりに悪かった」状況からあらゆる面で悪化しており、この6月は特にひどい状況にある。

・スーパープライム層のカードメンバー(Superprime Cardmembers※)の間においてですら、景気悪化の影響は及びつつある。


このうち「スーパープライム層のカードメンバー(Superprime Cardmembers)」というのは、くだんの「サブプライムローン問題」でよく登場する「プライム」という金融信用度の区分分けによる階層のひとつで、一言で表現するのなら「超優良のお金持ち顧客」のこと。【米国の消費者金融サービスにおける上限金利】によると

・サブプライム層……過去のクレジット利用実績や収入などに問題があり、相対的に信用度が低いとされる顧客層。

・プライム層……過去の返済履歴に問題がなく、所得も安定している相対的に信用度の高い優良顧客。

・スーパープライム層……利用額、利用履歴、所得額ともに申し分のない、最も信用度の高い超優良顧客。


を指す。

要はアメックスの第2四半期決算において、世界的に有名なカード会社の立場からも「アメリカの富裕層の間にも消費切り詰めや、ふところ具合の怪しさなど不景気ぶりが傾向として表れている。そして、それが業績に反映されるようになった」ということになる。

過去にUSA TODAYの記事などで何度と無くカードローン関連の記事を挙げているように、日本と比べてアメリカでは「収入が減っても節約するのではなく、生活水準の維持のためにローンを組んでお金を借りる」というライフスタイルが主流。その行動様式を支えるべく、多種多様の(そして低所得者だけでなく中高所得者向け、要はサブプライムだけでなくプライム・スーパープライム向けの)消費者金融サービスが用意されている。

そのような生活習慣を持つアメリカで、富裕層ですら貸し倒れ、支払い遅延、借り入れ審査の不合格という事態が増加しているのは、一つに「貸し出し条件が厳密化している」、もう一つは「借り受ける側の経済状態が悪化している」ことを意味する。

特に国、あるいは経済地域帯の金回りの主動力足りうる「富裕層の消費」そのものに歯止めがかかっている状況を示す今回のアメックスの決算発表は、今回のアメリカの不景気が根深いものであることを予見するのに足るだけの材料を提示しているといえよう。

先にイギリスのBBC Newsの報として【NYのエコノミスト曰く「僕らはみんなサブプライム層」】という話をお伝えした。この時は半ば自嘲ぶりな雰囲気が見受けられたもの。だが、それから4か月経過した現在においては、同じ科白(せりふ)「僕らはみんなサブプライム層」を同じニューヨークのアナリストが語るにしても、少々顔を青ざめる必要がありそうだ。


■関連記事:
【「ローンがおりない」人のために・三つの改善ポイント】

(最終更新:2013/08/04)

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