【更新】ゼファーの負債の影響をグラフ化してみる

2008年07月22日 06:30

ドミノイメージ先に【ゼファー(8882)が民事再生法適用申請、負債総額949億4800万円】でお伝えしたように、東証一部上場の大手マンションデベロッパー【ゼファー(8882)】が950億円近い負債を抱えて事実上倒産した。東証一部上場企業の、約1000億円もの負債を抱えた企業が倒れたことはインパクトが大きく、ましてや現在の不動産市場の状況からみるに関連企業に与える影響は少なくない。そこで同社が6月30日に提示した、直近の決算期(2008年3月末時点)におけるゼファーの負債を、いくつかの観点からグラフ・図化してみることにした。

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まずは負債一覧。こちらは【有価証券報告書(PDF)】の詳細を見ていけばリスト化は可能。ただし3月31日時点での話なので、(最後にまとめるが)倒産時の状況とは多少異なる場合があることに注意。

2008年3月31日時点のゼファーの負債一覧(有価証券報告書より)
2008年3月31日時点のゼファーの負債一覧(有価証券報告書より算出)

いくつか補足説明を。短期借入金の「パートナーズ・インベストメント」は【SBIとゼファーの金銭関係を時系列化してみる】でも触れているように、【SBIホールディングス(8473)】の子会社。そして【SBI(イー・トレード)証券(8701)】同様に、最後に整理するが倒産時には負債の一部が大きく変化している。またノンリコースローンとは、責任を負う担保(財産)が限定された借金。

ともあれ、多くの上場企業への負債を抱えたまま民事再生手続きに入ったことが分かる。もちろんそれぞれ担保を設定してある(はず)し、その担保物件も多数確認できる。無論優良物件もあるだろうが、現在の不動産市況においては、売却しても負債全体を弁済できる額が得られるとは考えにくいし、そもそも売却できるかどうかすら未知数(欧州におけるサブプライムローン問題と似たような状況だ)。……無担保公募債などは……ご愁傷様、としかコメントのしようがない。

次に、受取手形などでゼファーへの負債を相殺した上で、最終的な負債を概算。3月31日時点の上場企業単位(グループ会社はまとめて)の負債総額を棒グラフ化したのが次の図。

3月末時点のゼファーにおける上場企業への負債
3月末時点のゼファーにおける上場企業への負債

【NIPPOコーポレーション(1881)】がマイナスになっているが、これは手形の問題から。ゼファーが破綻したからといって支払いがチャラになるわけではなく、この額が利益になることはないので、念のため。メガバンク、そして親会社のSBIグループへの負債が飛びぬけていることが分かる。

この負債がそのまま全部貸し倒れになるわけではない。しかし最悪の事態を考慮し、最大でこれらの額の損失が発生しうると考えると、それぞれの企業の体力や収益との関係が気になるところ。そこで各企業のゼファーへの貸し倒れ可能性のある金額と、直近決算期における純利益とを並列したのが次の図。

3月末時点のゼファーにおける上場企業への負債とそれら上場企業の直近期期末の純利益
3月末時点のゼファーにおける上場企業への負債とそれら上場企業の直近期期末の純利益

とりあえず、メガバンクにとっては今件がほとんど影響のない範囲の損失であることが分かる。しかし同時に、他の企業の度合いがよく分からない。そこでメガバンクを除いて再構築したのが次の図。

3月末時点のゼファーにおける上場企業への負債とそれら上場企業の直近期期末の純利益(メガバンク除く)
3月末時点のゼファーにおける上場企業への負債とそれら上場企業の直近期期末の純利益(メガバンク除く)

大手不動産企業はともかく、中堅銀行や建設・不動産企業には少なからぬ痛手であることは間違いなさそうだ。……一社、直近決算期がマイナスのところがあるが、これは元々なのでコメントのしようも無し。


さていくつか補足を。まずは繰り返しになるが、今回のデータはあくまでも2008年3月31日時点のものであり、ゼファーが破綻した7月18日時点のものではない。そしてこれらは負債額であり、それぞれの企業の確定損失額ではないことに注意して欲しい(担保設定次第である程度は回収できる可能性がある)。

続いて、3月31日以降の状況変化について、現在確認できているものを以下にリストアップしておく。

・SBIグループ……先の時系列化記事にもあるように、最終的な貸付は120億円。「十分な担保価値を確保(≒担保物権で貸付分は回収できる)」と表明(【発表リリース】)

【若築建設(1888)】……7月18日時点で受取手形18.92億円を確認。回収可能性について精査中([発表リリース、PDF])→3月31日時点の17.91億円から増加

【安藤建設(1816)】……すでに全手形を(3月末までに)売却済みのため、貸付(手形)は皆無(発表リリース、PDF(http://www.ando-corp.co.jp/ir/pdf/irnews/ir_20080718.pdf))


恐らくは22日以降、関連する企業から「債権の取立不能のおそれに関するお知らせ」などと銘打ったゼファー絡みのリリースが配信されることだろう。願わくば影響が最小限にとどまることを祈るばかりである。


(最終更新:2013/08/04)

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