積極的な男性ほど心筋こうそくのリスクが低いでござる
2008年07月19日 12:00
厚生労働省研究班による多目的コホート(JPHC)研究班は7月18日、行動パターンと虚血性心疾患(狭心症や心筋こうそくなど)との関係を調べた結果を発表した。それによると自己審査で「せっかち、怒りっぽい、競争心が強い、積極的」と考えている男性ほど、心筋こうそくを発症するリスクが低くなる傾向が見られることが明らかになった。欧米の研究ではまったく正反対の傾向があることが知られており、文化の違いなどがこのような結果をもたらしたのではないかと研究班では分析している(【発表リリース】)。
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今調査は岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古に在住の40~69歳の男女8万6000人ほどを対象に、1990年・1993~94年を調査開始年とし、2003年まで追跡したもの。
欧米の調査ではアクティブな行動パターンを持つ(せっかち、怒りっぽい、競争心が強い、積極的)部類の人を「タイプA行動パターン」と、それらのパターンを持たない人を「タイプB行動パターン」と呼んでいる。そしてタイプAの人たちはタイプBに比べ、虚血性心疾患のリスクが高いことで知られている。要は「積極的な方が心筋こうそくにかかりやすい」。
そこで日本でも同様の結果が出るかどうか、統計学的に調べてみたところ、次のような結果が出た。
「タイプA」と虚血性心疾患の関係について
男女合わせた結果では差は見られなかったものの、女性においては欧米と同じように積極的な性格の方がリスクが高いという結果が出た(最大で1.3倍)。ところが男性では逆に、タイプAよりもタイプBの方が最大でリスクが1.3倍も高いという傾向が見られる結果が出た。
さらにそれぞれのタイプにおける生活習慣を比較したところ、タイプA(積極派)はタイプB(消極派)と比べ、身体活動量だけでなく、喫煙や多量飲酒、日常ストレスの保有率など、虚血性心疾患のリスクを増加させる要素も大きいことが明らかになった。欧米の調査結果でも同様の内容が出ており、「日本の男性だけが、リスクと思われる要因が大きいほど、虚血性心疾患の実リスクが低くなる」という奇妙な結果が出たことになる。
「ストレス解消で減少するリスク」では
今件は「減少するリスク」が大きいようだ
この結果について研究班では「興味深い結果」としながらも、日本人社会においては「積極的な意思表示をすることは否定的な風土がある。そこでタイプAを性格に持つ男性はお酒やたばこなどでストレスを発散しているが、タイプBは身の内にためこんでしまう。結果としてストレスがたまる一方のタイプBは、ストレス発散の手法そのもので増す以上に発症リスクを高めてしまう」と分析している。さらにこの推論から「行動パターンの影響が性・文化的背景によって異なる」とも述べている。
要はストレス発散で得られる「ストレス解消による発症リスクの低減」と、ストレス発散のために使われる手段で生じる「発症リスクの増加」を比べたときに、今件では「低減」要素の方が大きかった、ということなのだろう。何事にも天秤を用いた差し引き(しかもそれは目に見えるものではなく、個人差も大きい)で、結果としてどちらが有益なのかを考えねばならないとも受け止められよう。
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