各国の消費者物価上昇をグラフ化してみる

2008年07月15日 06:30

グラフイメージ6月30日に内閣府が発表した【世界経済の潮流】では、原油・食料を中心とした資源高や、サブプライムローン問題に端を発する金融信用不安など、昨今における世界経済の状況が分かりやすく解説されている。中でも(大まかではあるが)世界規模の経済状況をまとめた統計データが掲載されているのはありがたいお話。今回はその中から、2008年5月における主要各国の消費者物価上昇率をグラフ化してみることにする(【該当資料、PDF】)。

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諸国みな「食品」「エネルギー」が消費者物価全体を押し上げる

消費者物価の上昇率が統計データとして掲載されているのは、「総合」の他、昨今値上がりが著しい「食品」と「エネルギー」について。前年同月比と比べた単純上昇率と、消費者の生活に影響するウエイトの高さ(大きいほど家計に与える影響も大きい)がまとめられている。まずは単純に消費者物価の上昇率について。

主要国の2008年5月における消費者物価上昇率(前年同月比)
主要国の2008年5月における消費者物価上昇率(前年同月比)

なお元データではエネルギーについて、一部の国では「燃料費」「光熱費」の2項目で算出されていて、数字も別物になっている。ここではすべて「燃料費」で統一することにした。

ぱっと見で、ゼロ以下が無いことから、今回取り上げられている国すべてにおいて物価が上昇していることが確認できる。また、韓国・タイのエネルギー上昇率、中国とタイの食品上昇率がずば抜けていることが分かる。さらに多くの国では「総合物価上昇率」より「食品」「エネルギー」の物価上昇率が高く、この2項目が物価を引き上げる大きな要因であることも理解できよう(日本は意外に上昇率が抑えられていることも、意外といえば意外)。

ウエイト率を考慮すると各国の「事情」がよく分かる

さてこれだけなら単純に「どの国も特にエネルギーの値上がりが大きい」「アメリカのガソリン高も騒がれているだけはある」など、これまで語られて来たような話で終わってしまう。ここでさらに各国毎の「食品」「エネルギー」のウエイト率を考慮してみることにする。

上昇率自身は同じでも
ウエイト率が高いほど
家計全体に占める
影響力は大きくなる

繰り返しになるが、ウエイト率とは「消費者の生活に影響するウエイトの高さ」。例えばアメリカの「食品」へのウエイトは13.8なのに対し、台湾は約2倍の26.1に達している。仮に同じ10%食品が上がったとしたら、台湾の家計はアメリカの家計の2倍近く苦労することになる。もう一つ抽象的な事例を挙げれば「パンをほとんど食べない家庭にとってパンの価格が上がってもさほど家計には影響しないが、パンを毎日三食食べている家庭には大きな影響が生じうる」というところか。

そこでここではあくまでも他国との相対比を見てもらうため、「食品」「エネルギー」の2項目について、単純に「ウエイト率」に「物価上昇率」をかけた値を算出し、グラフ化してみることにする。それぞれの国の家計において、「食品」「エネルギー」の値上がりがどれくらい大きな影響を与えているかが分かるはず。

主要国の2008年5月における消費者物価上昇による影響
主要国の2008年5月における消費者物価上昇による影響

一般的に先進国より新興国の方が、「食品」「エネルギー」のウエイト率は高い(所得水準の高い先進国の方が、生活必需品の「食品」「エネルギー」以外の商品にまわす余力が大きくなるから)。これらの割合を見ると、中国の食品価格の高騰は市民生活に多大な影響を与えていることが分かる。また、タイでは「食品」「エネルギー」共に家計への影響は大きく、市民生活の今後が懸念される。

単なる消費者物価上昇率では先進国も新興国もさほど変わりはないように見えるが、生活へのウエイトを考慮して「消費者の生活に与えるインパクト」で見ると、新興国が受けている影響(特に「食品」)の大きさが改めて認識できよう。


今データでは残念ながら産油国(中東、ロシア、南米地域)のデータは掲載されていなかったが、恐らく状況的にはさほど変化はないものと思われる。産油国や食料輸出国ではその値上がりによる恩恵を享受し、物価調整や税制上の優遇を行っていることから、多少の安定感はあるものの、一般消費者が感じている「割高感」「生活の苦しさ」は変わるところがないはずだ。

「食品」も「エネルギー」も人間の社会生活には欠かせないもの。その2つが大きく値上がりすることで、直接消費者が受ける影響は大きく、さらに間接的にその他の商品の価格高騰の引き金にもなりつつある(例えばエネルギーのガソリンが高騰することで、運送トラックのランニングコストが上がり、運送業の採算性が落ちる)。

需要が伸びているのは事実だが、その増加率をはるかに超えた上昇の度合いには、世界中の人が多かれ少なかれ疑問符を抱きつつある。解決策を見出すのは並大抵のことではないだろうが、英知を結集してしかるべきアクションを取り、状況の改善に努めてほしいものである。


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