お米はすでに日本人の主食で無いのか

2008年07月06日 12:00

お米イメージ先に【お米の消費量がむしろ増えている件について】で「食品の多くで価格が高騰したため、相対的・絶対額的に値が下がったお米の消費量が増大している」としたところ、「お米の消費量はむしろ減少している」「一時的な現象に過ぎない」、さらには「直近ではパンの方が消費量は上回っている」との意見をいただいた。そこでそれを確かめるため、再び【総務省統計局の家計調査】からたどり着ける、【月次速報】分のデータを収録しているデータベース「e-Stat」にアクセスし、各種データを取得することにした。

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手法も先のものと同じ。二人以上の家庭を対象とし、主食三品「お米」「パン」「めん類」についてデータを取得。ただしデータベース上では2000年以降のものしかなかったので、その範囲でのグラフ化を行う。

まずは金額ベース。月間支出額推移は次の通り。

主食3品の二人以上家庭における月間支出額推移
主食3品の二人以上家庭における月間支出額推移

先の記事でも触れたように「お米は収穫時期の秋に消費額も増え、お正月は消費額が減る」の他、「めん類は夏と冬に消費額が増える」(冬は寒いから、夏は冷やし中華やそうめんか?)などの傾向が見られるが、やや細かすぎで変移がよく分からない。確かに最近ではお米の消費量が減少していることや、消費量が少ない時期に「お米」と「パン」の支出額が逆転しているようにも見えるが……。

そこで2007年以降に限ってデータを抽出しなおし、グラフ化したのが次のもの。

主食3品の二人以上家庭における月間支出額推移(2007年~)
主食3品の二人以上家庭における月間支出額推移(2007年~)

ここ一、二年に限れば通常月の消費額は「お米」と「パン」でほぼ同額程度で推移しているのが分かる。そして「お米」の消費量が増える時期は金額も跳ね上がり、減る時期には「パン」以下になることも例年通り。

ただし、先のグラフと見合わせると、お米の全体消費量が減っていること(とお米の価格下落)から「お米」の上下幅が次第に縮小、下降傾向を見せているのも分かる。

ちなみに「お米の支出額が減少している」のは次の年ベースでの金額の比較グラフを見れば明らか。ただし「めん類」や「パン」も増加しているようには見えない。

主食3品の二人以上家庭における年間支出額推移(2000年~2007)
主食3品の二人以上家庭における年間支出額推移(2000年~2007)

支出額だけを見ると、「お米」は「収穫時期に消費額が増える部分でかろうじて『主食』の位置を維持している」ように見える。ただしこのまま支出額の減少傾向が続けば、「パン」と「お米」の立ち位置が入れ替わる日もやってくるかもしれない。

今度は金額ベースではなく「消費量」で同様のグラフを作成する。まずは月間消費量の推移。

主食3品の二人以上家庭における月間消費量推移
主食3品の二人以上家庭における月間消費量推移

種類毎の繁閑期は金額ベースのそれとほぼ変わらない。傾向として見られるのは「お米は収穫時期の秋に消費量も増え、お正月は消費量が減る」の他、「めん類は夏と冬に消費量が増える」。

同様に分かりやすくするため2007年以降に区切ってグラフ化しなおす。

主食3品の二人以上家庭における月間消費量推移(2007年~)
主食3品の二人以上家庭における月間消費量推移(2007年~)

直近一、二年に限れば通常月の消費量は「お米」は「パン」の約1.5倍。そして「お米」の消費量が増える時期は3倍程度にまで増える。

ここで注意しなければいけないことが一つ。「お米」と「パン」では重量の単純比較はできないということ。一食分を換算する際に単位量となりやすい、標準的な食パンの1枚あたりの重量は6枚切りで110グラム。一方、「ご飯」の1杯あたりの重量は100~150グラム。平均すると同じか、ややお米の方が多いように見える。

しかしここで取り扱っているのは「ご飯」ではなくて「お米」。「パン」はそのままこの表の重量に反映されるが、「お米」は炊かねば食べられない。そして「お米」を炊くと重量にして2.0~2.3倍にかさが増す(『五訂食品成分表 2005』などから)。したがって口にする重量で比較すれば、「ご飯」の消費量はこのグラフにさらに2倍する値となる(ややレトリックな感もあるが)。

最後に年ベースでの消費量推移。やはり「お米」の消費量は年ベースでも減りつつあるものの、まだまだ「パン」「めん類」ははるかに及ばない。

主食3品の二人以上家庭における年間消費量推移(2000年~2007)
主食3品の二人以上家庭における年間消費量推移(2000年~2007)

上記のデータを見る限りにおいては、

・お米の消費量、支出額は年々漸減する傾向にある
・パンやめん類のは2000年以降さほど変化は無い
・ここ数か月に限れば価格の急騰を起因とし、パンへの「支出額」がお米のそれを上回る傾向がある(とは、この時期においてはここ数年繰り返されてきた傾向)
・「ご飯」の重量ベースで計算すれば、未だにお米は日本の主食足りうる。「お米」の重量でもしかり。


などの傾向が見て取れる。「主食」を調理済みの食品の重量ベース、調理前の食品の重量ベース、支出ベースのいずれで決定するのかは論議が分かれるところだが、今のところは「支出額ベースならかろうじて、重量ベースならまだまだ余裕でお米は日本人の主食たりうる」と見なして良いだろう。また、前年同月比ベースではお米の消費量が増えているのもまた事実である。

小麦などの穀物価格の急騰で、お米は色々な意味で注目を集めている。先の記事の内容とあわせ、今後のお米の価格や消費動向には十分以上に注視すべきだろう。


……やや蛇足になるが、「お米の消費が減ってパンやめん類も増えていない。すると主食の消費量が減っているから食事全体量も減っているのか?」という疑問がわくかもしれないが、さらあらず。【食料輸入が途絶えた時、食卓に上がるメニューとは】などで触れているが、主食の摂取量が減っている以上に、副食(つまりおかず)の量が増えている。要は食生活がぜいたくになっている、ということだ。


(最終更新:2013/09/06)

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