最近驚かされた上場企業の発表三種三様

2008年07月06日 12:00

株式イメージ上場企業は各種決算の他、株価に影響を与えうると判断される事例については、逐次東京証券取引所の【適時開示情報閲覧サービス】などにその内容を掲載する必要がある。投資家たちはそれを見て一喜一憂するわけだが、中には下手な漫画より笑わせてもらったり、びっくりさせられたり、ツッコミを入れたくなるようなものもある。今回は最近出会ったそれら「驚かされた適時開示情報」を3つほど紹介しよう。

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売れすぎちゃって困るの……サカタのタネ

食品価格の高騰から「家庭菜園」をする人が増え、さらに「菜園向けの各種用品や種のニーズが高まる」ことから業績もアップするのではないかと期待されていた【サカタのタネ(1377)】。7月4日に発表された【業績予想修正(PDF)】は上方ではなく下方修正だった。

説明にいわく「円高なので子会社の売上はアップしたが円ベースだと減収」「手持ちの有価証券が目減りしたので特損」の他、肝心の日本国内の売上について

・国内売上は野菜種子、苗が好調でほぼ予想数値を達成いたしました。
・(営業利益は)ホームセンター売上の急拡大に関する費用増と(以下略)


と説明している。要は「主力商品の売れ行きは好調」だったものの、売上が急に拡大したため費用が増加。それが下方修正の一因だとの説明。

詳細ベースは決算時に公開されるだろうが、「過ぎたるは及ばざるが如し」というところか。

株価が下がってもわが社を愛してくれる株主に感謝……フジオフードシステム

続いてこちらも7月4日に発表された、フジオフードシステム(2752)の株主優待内容の変更。【リリースはこちらになる(PDF)】。内容はといえば、これまで年一回だった優待を二回に増やし、内容を実質的に拡充するというもの。お米券が選択肢から外れたのは残念だが精一杯の努力をしているのが分かる。

気になったのはそのリリースの文面。いわく、

そんな中において、株主様より株主優待内容の充実に関してご意見を頂いていること、また、株価について株主様のご期待に沿うことができない状況でも当社を信じて株式を保有して頂いている株主様へ少しでも喜んで頂きたいという想いより、当社取締役会で検討させて頂いた結果、従来までは~(以下略)


と今回の優待改訂の理由を説明している。確かに同社の株価はお世辞にも堅調とは言いがたい。

直近2年のフジオフードシステムの株価動向。
直近2年のフジオフードシステムの株価動向。

自社株の株価動向はどの企業の経営陣も常に把握しているはず。その上でリリースの展開をするのもまた当たり前の話。しかし法的・倫理的に問題が無ければ都合が悪いことは極力控えるのも常というもの。そのような中、あえて自社株の株価が低迷している事実を述べ、それでも株式を所有し続ける株主に感謝の意を切々と語る、優待変更のIRリリースは初めて見た。

投資対象とするかどうかは別問題であるが、純朴な意味での好感を持てたことは事実である。

第二次テラメント事件勃発か?……ニューテック

最後はややお笑い系のネタ。6月27日に【ニューテック(6734)】が発表した自社株買いのリリース。時価総額9億円あまりの会社だが、発表当初の自社株買いの内容は次の通りだった。

・取得する株式の総数……45,000株
・株式の取得価額の総額……45,000,000百万円


訂正前のリリース
[UpDate]更新前のリリース

「総額45000000百万円」、つまり45兆円。確かに【テクモがものすごい勢いで自社株買いをしている件について】でも説明しているように、自社株買いの議決に法的拘束力はないのだが、いったいどこから資金調達をした上でこの計画を立てたのか、第二の【テラメント事件】か、と市場では一部で話題騒然となった。45兆円といえば日本の上場企業上位三位、つまり【トヨタ自動車(7203)】【三菱UFJフィナンシャルグループ(8306)】[任天堂(7974)]三社を丸ごと買収してまだ余りある。

しかししばらく後に訂正IRが報告され、結局「百万」の部分が余計だったことが判明。会社自身のプレスリリースでは現在【訂正後のリリース(PDF)】のみが掲載されている。単なるケアレスミスだとは思われるが、仮にも上場企業における金銭的な対外発表資料なのだから、もう少し気をつけてほしいものだ。


最後の件はややネタ的なものとなってしまったが、適時開示情報閲覧サービスに展開される上場企業のリリースには、このように企業の悲喜交々が見え隠れしているものが時々登場する。最近は会計スケジュールの厳密化や業績の低迷からか、単純な計算ミス(プラスとマイナスの取り違え)や表記の巧みさ(通常は「益」で掲示し、マイナスの場合は「-」「▲」で数字を表すところをその項目だけ「損」で掲載する)が目立つが、時々今件のようなものも表れるので気が抜けない。

各企業には自社が上場企業であることを自認しつつ、株主はもちろん市場にも投資家にも、そして法からも愛されるようなIRリリースを提示してほしいものだ。

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