お米の消費量がむしろ増えている件について

2008年07月03日 12:00

お米イメージ先に【値段上げたのに売上が減る!? 総務省の統計データから明らかに】で、「今年に入ってから大きな値上げ幅を見せた食品に販売数の減少傾向が見られ、一部には売上そのものも落ち込んでいる傾向がある」ということを示した。値上げが今後も行われれば本格的な「値上げ幅と売上高の逆転現象」が起きることだろう。このように「消費性向の減少」が見られる中、主食として欠かせない「お米」は消費性向・消費量が増えていることが明らかになった。

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これは【総務省統計局の家計調査】からたどり着ける、【月次速報】分のデータを収録しているデータベース「e-Stat」のデータによるもの。具体的には「家計収支編 > 二人以上の世帯 > 詳細結果表 > 月次」の順にチェックし、データベースにアクセス。過去のデータを参照し、先の「値段上げたのに~」と同じような表を作成した結果によるもの。消費者物価指数のデータが抽出できないので、「金額=名目支出額」と「消費量」から表を作り、それを基に「前年同月比」を算出。物価上昇の気運が見られた2007年5月以降における「前年同月比の変移」をグラフ化した。

なお絶対値ではなく「前年同月比」でグラフ化したのは、食品の中には月ごとに消費性向が異なるものが多く、単純な前月比では意味のあるデータとはいえないため。例えばお米は収穫時期の9~10月は消費量が多く、おせち料理などを食べることが多い正月には消費量が少なくなる傾向がある。

それでは早速、まずは月別平均購入金額の前年同月比の変移グラフ

主要食品における月別平均購入金額の前年同月比の変移
主要食品における月別平均購入金額の前年同月比の変移

平均家庭の購入金額の前年同月比。企業の売上にほぼ類すると見て良い。先の記事でも指摘した「4月の値上げでカップめんが大幅に売上を減らした」事象が、2008年4月では唯一前年同月比で「売上でも」マイナスとなっていることからも分かる。また、今年に入ってから年初の値上げと年度切り替えの際の値上げ(4月)の値上げで、購入金額そのものがかさ上げされていること、それでもなお(これも前記事で指摘の通り)マヨネーズ・ドレッシングが売上自身ですら落としているのが分かる。

さて問題なのは次のグラフ。支出金額ではなく、「購入」の推移を前年同月比で描いたもの。

主要食品における月別平均購入量の前年同月比の変移
主要食品における月別平均購入量の前年同月比の変移
今年に入ってから
各食品の購入量が減る中で
お米は購入量が増えている

大きな値上げが行われた2月以降、主要食品の購買量が大きく落ち込んでいるのが分かる。それと共に、唯一お米(特に太くした青い線)はむしろ今年に入ってからずっと、前年同月比でプラスを示している、つまり購入量が増える傾向にあることが把握できる。特に大規模値上げで購入量が大きく減じられた4月にも、前年同月比でプラスを見せているのが注目に値する。


先の記事の推測「消費者物価指数を勘案した実質増減率が減っているのだから、恐らく購入している量は減っているのだろう」が、今回の図表である程度裏づけられたことになる。また、前記事中の元資料では掲載されておらず、比較対照としてはどうしても欠かせないと思われた主食のお米について、他の食品とは異なる傾向「消費が増えている」ことが見て取れる。恐らくは他の食品からお米への食生活のスライドが起きているのだろう。

食糧事情は世界規模で
大きな変革の時を迎えている。
減反政策は
「前世紀の遺物」として
放棄すべき時が来ているのかも。

小麦粉など他の粉系食品が値を上げる中、原材料として米を使った「米粉」が注目を集めているという話も最近よく耳にするようになった。これだけニーズがあることだし、関連当局はさっさと減反政策を取りやめ、田んぼを「あるべき姿」に戻すべきだと思われる……というより、わざわざ補助金を出してまで生産量を減らしている状況ではないことは、誰の目にも明らかなはずなのだが。

また、現時点では値上げ効果が功を奏し、売上の点では増加の傾向を示しているが、売上個数は確実に減っている。今後さらに値上げが行われれば、適切な調整額でない限り、販売個数減少に拍車がかかることだろう。そして「販売個数減少による売上ダウン分」が「価格値上げによる売上アップ分」を上回り、売上そのものもマイナスに転じてしまう可能性は十分考えられよう。


■関連記事:
【チーズ25%、即席めん10%……価格上昇率を農林水産省が公表】

(最終更新:2013/08/04)

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