【更新】値段上げたのに売上が減る!? 総務省の統計データから明らかに

2008年07月02日 19:40

値上げイメージ総務省は6月27日、2008年5月分の家計調査を発表した。それによると、昨今の物価高で特に価格が上昇している実感の高い「パン」「カップめん」など粉系主食を中心に、4月の大幅値上げ以降、消費者の名目・実質購入金額が大きく落ちていることが明らかになった。企業側は商品価格の引き上げや内容量の減少でコスト高を補おうとしているが、消費者による買い控えがそれ以上に進み、値上げ分すらもまかなえないほどの売り上げ減におちいっている可能性がある([発表ページ]、【特設レポート部分、PDF】)。

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家計調査は、全国の世帯を対象として、家計の収入・支出、貯蓄・負債などを毎月調査し、国民生活の家計収支の実態を把握。国の経済政策や社会政策の立案のための基礎資料を提供することを目的としている。結果は逐次データ化され、毎月発表されている。

6月末発表分の2008年5月分データでは追加資料として「価格が上昇した主な品目の対前年同月増減率の推移」も発表されている。ここでは2007年5月以降2008年5月までの毎月の主要食品中昨今値上げが著しい「マヨネーズ・ドレッシング」「パン」「カップめん」「スパゲティ」「チーズ」の5品目について、家計の平均出費金額の相対比が掲載されている。

まずは「マヨネーズ・ドレッシング」。今後の図も同じだが、ピンク(名目増減率)は名目、つまり価格や消費額そのものの絶対額的な増減。売上高だけを見るのならこちらを見る。そして各品目の消費者物価指数(価格)を考慮した実質的な増減数(実質増減率)が濃い青色の線になる(いずれも前年同月比)。消費者の購買意欲も見るのならこちらが重要。

「マヨネーズ・ドレッシング」
「マヨネーズ・ドレッシング」

価格そのものもやや下落しているが、それ以上に消費者の購買意欲が減退し、支出額が大きく落ち込んでいることが分かる。これはたとえ見た目が安くなったとしても、周辺の商品が値を上げているため「節約心」が高まっていることからだと推測される。数字的には支出金額は前年同月比で実質増減率で16.1%ものマイナスを示している。価格そのもので見た名目増減率でも5.2%のマイナスと「売り上げ」上でもマイナス。

続いてパン。

「パン」
「パン」

パンは去年の暮れから大幅な値上げが続いており、それと共に実質的な支出金額が大きく落ち込んでいる。2月にはやや盛り返す機運も見られたが3月以降は再び下落。5月の時点で実質増減額は前年同月比5.9%のマイナス値を示している。かろうじて名目増減率がプラスを維持しているので、売り上げの上ではトータルで前年同月比でプラスだが、おそらくパン業界ではかなり厳しい状態にあるのだろう。

カップめんはやや持ち直す雰囲気も見られる。

「カップめん」
「カップめん」

カップめんはパンにやや遅れるタイミングではあるが、上昇傾向などはほぼパンと同じ。やはり2月にやや持ち直し、直近の5月でも大きく戻す気配があるが、実質増減率では今年に入ってからずっとマイナスを示している。ちなみに5月時点の実質増減率は前年同月比で6.2%のマイナス。名目増減率がプラスなので「セールス上」は前年同月比プラスではあるが……。

次にスパゲッティ。パンやカップめんと比べれば主食としている人は少ないかもしれないが、大切な主食には他ならず、また粉系食品の代表格の一つでもある。

「スパゲッティ」
「スパゲッティ」

こちらもやはり去年の暮れ以降大きく値上がりする動きを見せている。それと共に、とりわけ3月以降は支出金額を下げる気配がある。5月はやや持ち直したものの、それでも三か月連続して実質増減率はマイナスを示したまま。こちらは5月データは前年同月比-6.1%。なお大きな値上げ幅のおかげで名目増減率は前年同月比で24.2%と大きなプラスを見せている。

最後にチーズ。こちらも4月の値上げ時に大きく支出額を減らしている。

「チーズ」
「チーズ」

実質増減率は3月にマイナスへと転じてから三か月連続してマイナスのまま。5月はやや持ち直しているが、実質増減率は3.9%のマイナスを示している。名目増減率はかろうじてプラス(9.5%)を示しており、売り上げ面ではプラスではある。


今回提示されていたのは5品目のみだったが、いずれも(月ごとの消費傾向が異なる場合があるので)前年同月比で比較した場合、実質増減率、つまり購買意欲そのものは全品目で大きく減じていることが分かる。5月時点では「マヨネーズ・ドレッシング」以外は名目増減率がプラスの粋にあるので、売り上げそのものは前年同月比でプラスを示しているものと思われるが、消費者側の「買い控え」は明らか。

このまま物価高、さらに値上げが続けば
消費者の買い控えがますます進み
「名目増減率」もマイナスに転じる可能性も。

「価格を上げ」ても「売り上げが落ちる」という
企業にとってはお手上げ状態に

今後値上げ状態がそのまま維持される、あるいはさらなる値上げが行われれば、他の品目でも名目増減率においてマイナス域に転じ、企業サイドにとって「値上げをしたのに売り上げが落ちる」という八方ふさがり的な状態になる可能性は十分に考えられる。また、その可能性は多くの企業が一斉値上げを行った4月に、すべての項目で大きく「名目増減率」も下げていたことから、「ありえるかも」の前に「十分」が入るほど。

[6月17日付けの日経新聞]では、4月に大きく値を上げた主力商品の多くにおいて「値上げをしたあとに売り上げが落ちている」現象が起きていることを報じた。具体例としては[日清食品(2897)]のカップヌードルが88円から118円に値上げしたところ売上高は52%も減らしたのをはじめ、10~30%もの「売上高減」(売り上げ個数減、ではない)を示したという。各企業はこの報道を一様に否定しているが、規模の大小はあれども似たような結果が出ていたものと思われる。

【10月に再び30%値上げも!? 小麦売り渡し価格引き上げ示唆】でお伝えしたが、現時点で小麦価格の暴落は起きていないため、10月に予定されている輸入小麦価格の売り渡し価格が再び30%の値上げを行うのはほぼ確実な情勢。当然ながら前後に粉系の食品の3割程度の値上げが想定される。4月時点の値上げで「名目増減率」ですら0からマイナス域ぎりぎりを推移していた各食品が、再び値上げされれば本格的な買い控えの対象となり、「売上高減」現象がますます進展するものと思われる。

消費者も企業も、英知を振り絞って対応していくしかないだろう。むろしこれを機会に大規模な代替用品の開発促進や、戦略物質としての価値を高めた小麦・米などの主食の増産を推し量る手もあるものと思われる。


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(最終更新:2013/08/04)

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