アーバンコーポレイション(8868)の株価急落、社長持ち株の強制売却が原因

2008年07月07日 12:00

株式イメージ商業複合施設、オフィスビルなどの開発・再生、マンション分譲などを行う【アーバンコーポレイション(8868)】は7月7日、同社房園博行社長の保有株式の一部で担保権が実行され、自社株式が売却されてしまい、房園社長が筆頭株主で無くなったことを発表した。房園社長の持ち株数は7月4日付けで3月末時点から2831万5000株分減り、議決権割合は16.60%から4.03%に減少している。また、7月4日の同社株式の急落は、この担保権実行による市場での売却とも説明している(【発表リリース、PDF】)。

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アーバンコーポレイションの直近一年間(上)と7月4日(下)の株価・出来高推移
アーバンコーポレイションの直近一年間(上)と7月4日(下)の株価・出来高推移

アーバンの株式は7月4日には253円の始値をつけてから大きな売りが断続的に入り、急落。ストップ安183円に何度か張り付きながら結局189円で場を引けている。同社からは具体的にこの株価急落を裏付けるような発表はなく、同社が先に手続きをした転換社債や上層部に関する噂話が流れるばかりだった。

今件についてアーバン側が正式な発表をしたのは7月7日の朝8時になってから。発表リリースによれば、筆頭株主だった房園社長個人が自分の持ち株を担保に金融機関9社から借り入れを行っていたが、同社株式の株価下落に伴い追加担保の差出(さもなくば「担保権を行使する」)を要求される。担保権行使阻止の方策を模索していたものの、それもかなわず、9社のうち6社について「担保権行使」(貸出金回収のための担保株式の売却)を実行されてしまったとのこと。一連の状況説明について、房園社長から同社に「連絡が行われた」ということで今回の発表となった(※本人自らが自社におもむいたわけではないことに注意)。

リリースの中では房園社長が、今回強制売却のきっかけとなった担保設定が行われた借入金について、

・個人としての金融商品への投資
・  〃  所有を目的とする不動産の取得
・一部ベンチャー企業への投資


という説明をした、としている。アーバン社自身の名前が出てこないので、文面からは自社のための間接投資ではなく、個人レベルでの投資である可能性が高い。また、さらに同社株価が7月3日終値から7月4日の終値時点で下落している以上、7月4日時点でまだ保有している907万5600株のうち担保とされている株式、つまり残り3社が担保としている株式も、(担保契約次第ではあるが)担保権が設定され売却される可能性はある。

社長個人が自社株を大量に保有し、その株式を担保に個人レベルで投資を行い、その失敗で担保としてとられている株式を売却されてしまった(強制売却)の事例としては、先の【井上工業の株価急落、社長保有の自社株強制売却が原因】がある。また未遂に終わったが【テンポスバスターズ(2751)の社長、信用取引で大損して会社から緊急融資・自社株の強制決済を避けるため】【テンポスバスターズ(2751)】の件が記憶に新しい。

以前はあまり見る機会の無かった、このような事例が多発する背景には、株価急落も大きな原因だが、その他に「金融機関の貸付条件や担保設定の厳粛化」「中小規模の経営陣の投資感覚」「経営陣による自社株保有の重要性への認識の薄れ」があるものと思われる。

なお今件でアーバンそのものの業態・業務には現時点では何ら影響はないため、当期業績予想の変更はない、とリリースでは伝えている。

井上工業の株価イメージちなみに類似事例で強制売却による株価急落を体験した【井上工業(1858)】だが、一部リバウンドはあったもののその後も株価は低迷を続けたままの状態で推移している。たとえ事業内容・業務成績に変化がないとしても、現経営陣の所業に対し市場はネガティブな判断を下したようだ。アーバンが今後どのような株価変動を見せるのか、気になるところではある。

(最終更新:2013/08/04)

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