消費者物価指数の7倍の物価高を感じる消費者・かけ離れる物価上昇の実感と統計値
2008年07月05日 12:00
日本銀行は7月4日、6月に行なった「生活意識に関するアンケート調査(第34回)」の結果を発表した。それによると1年前と比べた物価に対する実感において、「かなり上がった」と答えた人が前回調査から15.6ポイントと大幅に増えていることが明らかになった。また、その物価上昇率をたずねたところ平均値で10.2%と、別途調査されている消費者物価指数の上昇率とかなりの格差が見られることも判明した(【発表リリース、PDF】)。
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今調査は日本銀行が定期的(3か月ごと)に行なっているもの。今回調査の期間は5月15日から6月10日、20歳以上の個人を対象にしたもので、4000人に対して郵送調査方式で行い、2378人から有効な回答を得られた。
現在の物価に対する実感として、現在を1年前と比べるとどう思うかについてたずねたところ、「かなり上がった」と答えた人は全体の4割に達した。3か月前の前回調査と比べて、実に15.6ポイントの増加になる。
現在の物価は1年前と比べると
グラフのうち今回結果(平成20年6月)と前回(20年3月)で比べて見るとよく分かるのだが、「少し上がった」「ほとんど変わらない」の層がそれぞれ10%・5%ほど減少し、ほぼそれと同じ量が「かなり上がった」層で増えているのがわかる。
考えていた人の約2割がわずか3か月間で
「やはり物価は相当上がってる」と
認識をあらためた!?
前回と今回調査の対象が同じ人物であるはずがなく、また一様に回答層がずれたとも思えないが、「物価が少し上がった、あるいはほとんど変わらないと甘い考えをしていた人の相当数(概算で2割ほど)が『やはり物価は相当上がっている』と認識を改めた」と見ることもできよう。
この「大幅な物価上昇という、厳しい現実への認識の表れ」は、次の「一年前と比べて具体的に何%ほど物価が変化したか」という回答からも見ることができる。
一年前と比べて具体的に何%ほど物価が変化したか
平均値は単純な「全部を足して(極端な数字は除く)該当数で割ったもの」。中央値とは回答を順番に横一列に並べ、中央に位置する値、つまりもっともかたよりの大きいポイント。^平均値は10.2%のプラス、中央値は10.0%のプラスを示している。この図を見ると、3月からの3か月間で「過去1年と比べた」平均物価上昇の割合は2.6ポイントも上がっており、さらに多くの人が「高い値での物価上昇」を考えていることが分かる。
それがもっとよく分かるのが次の図。今回と前回の調査結果を、「物価が変化した割合」の回答層別に区分してみた。
一年前と比べて具体的に何%ほど物価が変化したか・回答分布
青い線の丸で囲った、5%以上の領域の回答数が大幅に増えていることがこれではっきりとわかるだろう。
総務省統計局では6月27日に、直近2008年5月分の消費者物価指数を発表している(【発表ページ】)。これによると総合消費者物価指数は前年同月比で+1.3%、生鮮食品を除く総合消費者物価指数は前年同月比で+1.5%という値が出ている。
消費者感覚の物価上昇は+10.2%
統計上の母数や母体、対象となる商品の違いなど、そのまま二者の数字を比較するのは多少の難がある。しかしそれでも、「消費者物価指数は+1.5%、庶民感覚の物価上昇率は+10.2%」という違いには、多少以上の驚きを得られるだけのものはある。
「消費者レベルの物価上昇への感覚」には、購入金額以外に周囲の雰囲気、マスコミの報道など、多種多様な心理的影響が関わってくる。そのため、本当の価格上昇分とは「ずれ」が生じている可能性は否定できない。とはいえ、7倍近い差が出ているのもまた事実であり、計測上の数字以上に消費者が物価高に苦しんでいるのもまた事実であるといえよう。あるいは、この差が縮まるよう、消費者物価指数の計算方法も検討しなおす必要があるのかもしれない。
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