5月時点のサブプライムローン関連損失総額は●●兆円
2008年07月14日 08:00
6月30日に内閣府が発表した【世界経済の潮流】によると、2008年5月19日時点で世界全体におけるサブプライムローン問題に関連する損失額の総計は3209億ドル(約34兆円)に達していることが明らかになった。そのうちアメリカとヨーロッパによる損失がそれぞれ1525億ドルずつと、両地域で大半を占めていることがわかる(【該当資料、PDF】)。
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「サブプライムローン問題」とはすでに何度と無くかたられているが(参照:【「サブプライムローン」という名の亡霊を退治する10の提言-(上)】)、低所得者向けの住宅ローンで貸し手も(そして一部では借り手も)無茶なことを仕出かし、さらにそのローン債券そのものを「金融工学」の名の下に細分化して新しい金融商品として世界中にばらまいたため、誰もその総額を把握できない状態になった「膨張する借金」のこと、そしてそれを原因とする金融市場の収縮を指す。膨らんだ金融市場のフタをいざ開けてみたら、刻み込まれた張りぼてだったという感だ。
「住宅が売れない」「担保価値が下がる」「ローンが払えない」「市場が縮む」のマイナススパイラルが続いているのが現状で、金融機関などは資本の増強を迫られている(関連:【成長続けるSWF、2007年時点で3兆3000億ドルの規模に】)。
「世界経済の潮流」による、2008年5月19日時点の世界全体におけるサブプライムローン問題関連の損失額は次の通り。
「世界経済の潮流」による、2008年5月19日時点の世界全体におけるサブプライムローン問題関連の損失額
損失額の95.0%は
アメリカとヨーロッパが計上
当事者たるアメリカ(の各種銀行)と、ほぼ同時期に自国内でも同様の住宅ローン問題を抱えていたり、サブプライムローンを元とする金融商品を大量に買い込んでいたヨーロッパ勢が、大きな損失を受けているのが分かる。両地域を合わせると総額の実に95.0%に及ぶ。
表内には自己資本額も描かれており、その額と損失額を比すると、どの地域(あるいは銀行)が痛手を受けているのかも把握できる。ちなみに日本は87億ドル(自己資本額は769億ドル)。
2008年5月19日時点の世界全体におけるサブプライムローン問題関連の損失額(各国損失額を全体に占める比率で表示)
せっかくなので、自己資本額に対してサブプライムローン関連損失がどれほどの割合を算出した。アラブ諸国がトップについているあたりからも、あまり意味のない表のようにも見えるが、イギリスやスイスなどが意外と上位についている(≒ダメージが大きい)ことが分かる。ちなみに「ヨーロッパ」はヨーロッパ全体を意味する。
ただしこれらの情報はあくまでも決算書などを元にしたもので、いわば公開上のデータからの総計に限られている。これからまだ露呈するものも出てくる可能性は高い。また中国などのように、情報公開性そのものが疑わしいため、今後「破綻していきなり判明した」というパターンもおきてくるものと思われる。今後の状況の変化を注意深く見守る必要があるだろう。
また、今回のデータはあくまでも「直接の損失」に過ぎない。今件をきっかけにおきた「有価証券評価額の低迷で必要に迫られた上での増資」「投資資金の株式市場からの流出と商品市場への流入を起因とする物価上昇での損失」など、間接的な損失はこれに数倍するものと思われる。経済が世界規模でリンクし、さまざまな分野が相互につながりを持つ以上、何かに変化が生ずれば他の分野にも影響を及ぼすのは仕方ないところではあるが、このような状況においては「とんだとばっちり」ともいえよう。
(最終更新:2013/08/04)
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