「週4日制導入」「遠足中止」「先生のリストラ」燃料価格高騰で経費削減が進むアメリカの学校
2008年07月30日 19:40
日本同様にガソリン代をはじめとする燃料代の高騰に苦しみ、社会のさまざまな仕組みが大きく変わりつつあるアメリカ。【USA TODAY】によるとその変化の波は教育機関にもやってきたようだ。1/7の公立学校は今秋から1週間の授業日数を4日に減らすことを考え、1/4の学校は運動競技や他のクラブ活動の制限を考えている。また、およそ1/3の学校が教員のリストラを検討しているという。
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スクールバスの運行にもガソリンが使われる。そしてそのガソリン高騰で……
燃料費の高騰がいかに学校経営を危機に追いやっているか……それはアメリカの学校管理者による団体 the American Association of School Administrators(AASA)が行ったアンケート結果からも明らか。実に99%の管理者(経営者)が「燃料高騰で非常に困っている」と答え、77%が「(自分たちの窮状に対して)州は何も手助けしてくれない」と愚痴をこぼしている。いわく「燃料価格の高騰は全学校の予算に影響を及ぼしてしまった」。
AASAに属している546人の経営者からの調査によれば、燃料費や光熱費は前年と比べて10~32%上昇。子どもを送り迎えするスクールバスのガソリン代も最大で40%上昇している。
これらのコスト増の結果、学校側では次のような対策を打ち出しているとのこと。
・15%の学区では通学バスのコースを変更するか廃止している。
・15%の学校は1週間の授業構成を4日に変更するよう検討している。
・44%の学校が遠足を取りやめ、あるいは計画変更。
・29%の学校が教職員の配置転換やリストラを実行。
具体的な学校側の対策状況
例えばオクラホマ州では2つの学校が「燃料と光熱費節約のために週4日制の導入を真剣に考えざるを得ない」とコメント。他の州では現在使っている通学用のディーゼルバスを天然ガス駆動のものに変えたり、風力発電所を建造してその電力で走る電気自動車でまかなおうかと検討しているところもある。いわく「20~25年間稼動し続ければ元は取れる」とのこと。
一方、教師生活35年のベテランであるCrawford氏は、このような燃料高騰による学校経営の緊縮財政問題は1980年代にもあったことだとして、あまりあわてた様子は見せていない。しかしながら「この流れは学校の姿かたちを大きく変えることになるかもしれない」という危惧も示している。いわく「もしこんな状況が続けば、我々教育界のビジネスも変わらざるを得ない(If it's for a prolonged period of time, it'll change the way we do business)」とのこと。
日本の学校経営事情はアメリカと事情が多少異なり、現状ではむしろ燃料費よりも食品価格の高騰による給食の問題にスポットライトがあてられている。【兵庫県ではすでに去年末の時点で問題提起の資料が作成され(PDF)】、最近では給食費の値上げやコストダウンに四苦八苦している教育関係者の話が毎日のようにニュースとして流れてくる。
ただし、今後さらに食品・燃料費の価格が上昇、あるいは高止まりすれば、日本もアメリカの学校のような状況に、遅かれ速かれおちいる可能性は高い。特に【東京都内のガソリン・灯油価格をグラフ化してみる】で示したように、現時点において灯油価格の冬場における価格高騰が予見されており、電気代も来年以降一律引き上げの予告が行われたばかり。
各学校の関係者にはアメリカの状況を「対岸の火事」としてただ見ているだけではなく、「他山の石」として見聞きし、今から備える謙虚さ・用意周到さが求められることだろう。
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