原材料費高騰が続けは経常利益は2割下方修正も・日本総研試算
2008年07月17日 08:00
日本総研は7月16日、業種別に見た原材料価格の上昇が企業収益に与える影響の試算レポートを発表した。それによると現時点で利益率は最大で1割程度抑えられており、さらに今後これまでと同等に原材料費が上昇すれば、2008年度の大企業・製造業の経常利益は平均で2割ほど押し下げられる可能性があることが明らかになった(【発表リリース、PDF】)。
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レポートでは2008年4月から6月の物価データを使って利益率を試算。原材料費が高騰を続けているため、利益率は大きく引き下げられる。特に原油高の影響が大きい電力や輸送業だけでなく、金属、食料品、工業品など幅広い分野で原材料高の影響を受けている。
原材料価格の上昇による利益率押し下げの度合い
リスト中では情報通信機器や電子部品・デバイスのみがかろうじてプラスを保っている。また、電気・ガス・水道では-12.0%のうち実に11.9ポイントまでもが「原油の影響」という試算。同様の傾向は「運輸」でも見られる。
一方、6月に発表された日銀短観では大企業・製造業の2008年における経常利益の伸び率は-9.9%となる試算が盛り込まれている。しかしこの試算は「2008年度は売上高原材料比率が下落する(原材料価格そのものが落ちる、コスト削減で利用量を減らしたり安い代替原材料に差し替えが進む)という楽観的な想定によるもの。
日本総研では2008年度が始まった4月以降も原材料の価格高騰が続いていることなどから、日銀短観の試算では甘いとし、「2008年度の売上高原材料比率が2007年度と同等の上昇率」という設定で試算をした。その結果、日銀試算の-9.9%に対し今試算では-32.1%という数字が出たという。これは日銀試算に対し-22.2%の下方修正という計算になる。
2008年度の経常利益の伸び率試算(原材料比率が上昇を続けた場合)
日銀短観の試算ではプラスを見せていた業種もマイナスに展示、わずかに金属製品のみがかろうじてプラスを維持している。特に日銀試算との差異では「木材・木製品」の-93.6%、「紙・パルプ」の-111.2%が大きい。
あくまでも今件は「原材料費の高騰が続いた場合」における、一シンクタンクの試算ではあるが、これらの業種の企業の下方修正が実際に行われる可能性は低くはないと見て良い。個別の企業によってはすでに「資源高が続く」という想定の元に業績予想をしているところも多いが、中には日銀短観同様に甘めの試算をしているところもある。差異の大きい業種の企業の業績には、今後原材料価格の動向とあわせ、注意を払う必要があるだろう
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