【更新】「クーラー28度」の根拠はどこに?
2008年07月28日 19:40
先に【メタボと非メタボ、●度も違う「室内設定温度」】で「メタボ自覚者と非自覚者の間には3度もエアコン設定温度が違う」という調査結果をお伝えした。メタボ自覚者は25度、非メタボ自覚者は奨励温度の28度なのだという。さてこの「奨励温度は28度」というのはどこから来たものなのか。覚え書き・おさらいの意味も込めてここでまとめておくことにする。
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●労働安全衛生法がおおもと・クールビズ運動が裏づけ
この「28度」という設定は労働災害防止のためなどに1972年に制定された「労働安全衛生法」に基づいて制定された省令【事務所衛生基準規則】第一章第五条「空気調和設備等による調整」の記述
3.事業者は、空気調和設備を設けている場合は、室の気温が十七度以上二十八度以下及び相対湿度が四十パーセント以上七十パーセント以下になるように努めなければならない。
をよりどころとしている。要は「法文上の上限ギリギリで何とか我慢してネ」ということだ。色々な検証をしたり科学的根拠があるわけではない。
さらに2005年から始まった【クールビズ運動】でこの「28度」が裏づけされ、「冷房温度は28度設定」がまかり通ることになった。ちなみに「すべての事業所などにおいて、夏の冷房の設定温度を26.2℃から28℃に1.8℃上げるとすると、ひと夏で最大約290万トンのCO2を削減することができます」とのこと。
●「28度設定」で本当に良いのか、反論相次ぐ
このようにして決まった「冷房温度は28度」という設定だが、最近になって特に反論が相次いでいる。【財団法人 省エネルギーセンターの調査】では、「主旨は分かるが実質的には25~26度にしないと仕事の効率が下がってしまう」という意見が大半を占めている。
少々古いデータになるが、2000年における「冷房室内温度28度」に対する意見
最新データ(【2005年発表】)の業務ビルの温度設定状況
また最近の日本建築学会による調査結果でも、「25度を超えると1度ごとに作業効率が2%低下」「28度で軽装で我慢すると25度と比べると能率低下で事務所1平方メートルあたり冷房期間中に1.3万円ほどの損失が出る」などの結果が出たという([参照:読売新聞])。冷房分のエネルギーを節約できても、それ以上に損失が生じてしまったのでは元も子もない。
蛇足ではあるがもう一つ、冬季における「暖房温度設定」について。先の「事務所衛生基準規則」では「17度以上」と記述されているものの、「ウォームビズ」ではなぜか「室内温度は20度(政府機関は19度)」と設定されている。クールビズでは「規則」と同じなのにウォームビズではやや甘めの設定なのはなぜだろうか。
「暑くて死ぬ人はいないが、寒くて凍死する人はいるかもしれない」という考えからなら大間違い。【熱中症対策・環境省が最新マニュアルで注意呼びかけ】にもある通り、室内ですら熱中症を発症し、倒れたり、最悪の場合死に至る場合も十分にありうる。
上記にもあるように、「いったん28度に設定したから意地でもそのまま押し通す」ではなく、「状況を見極めて逐次正しい方向に修正する」柔軟な姿勢が必要ではないだろうか。
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