【更新】ノートパソコンお一つ205兆ジンバブエ・ドル
2008年07月10日 08:15
先に記した【札束抱えてお店に買い物……超インフレなジンバブエの買い物風景と現状】や【ジンバブエ政府、1000万ドルの紙幣を発行・ただしハンバーガー1つも買えません】にあるように、アフリカ南部にあるジンバブエは、色々な意味で世界中から注目を集めている。その中でももっとも関心が高いのは、世界経済史上最悪の状況で推移しているインフレと流通通貨ジンバブエ・ドル(Z$)について。それを示す一つの「実態」をインターネットを介して見ることが出来る。
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ジンバブエでは先日大統領選挙が行われたが、執拗な選挙妨害などで現行のムガベ大統領の対抗候補が選挙から手を引き、結局現行大統領が再任するという結果になった。もちろんこれには世界各国から非難が相次ぎ、先日まで開催されていた北海道洞爺湖サミットでも非難特別声明が採択されている。
一方ジンバブエ内部では経済政策での失策が相次ぎインフレ率は加速。次々に高額紙幣を増刷しており、ついに紙幣の印刷を担っているドイツの印刷大手会社ギーゼッケ・アンド・デブリエント(Giesecke and Devrient)に対し、ドイツ政府側が紙幣用紙の供給を停止するよう要請している(【AFP】)ほど。ちなみに確認できる限りでは、7月7日時点で1アメリカドルは公式レートで162億0499万6229.26ジンバブエ・ドル(【ジンバブエ準備銀行】)、闇レートでは1500億~2000億ジンバブエ・ドルとされている。
ここまで来ると、かつての世界経済史で最強のインフレとされた第一次世界大戦後のドイツにおける帝国マルク(ライヒス・マルク)などどこ吹く風、というレベルになる。その実情が理解できるのが、先日読者から送られてきたURLで閲覧出来る【ジンバブエのネットショップ】。このサイトはパソコン中心のもので、他に【自動車(中古車)ショップ】や【ゲームショップ】も確認できる。
まずは自動車ショップでトヨタ自動車のスターレットを見てみることにする。
スターレット
1993年製で走行距離は不明。価格は6000億ジンバブエ・ドル。6000万ではない。公式レートで計算すると37米ドル(3700円)程度になるが、どう考えても安すぎるので恐らく実際に問い合わせをすると「レートが変更されたので」と修正を求められるのがオチ。第一、闇レートで計算すれば4米ドル程度にしかならない。
エンジンオイルやタイヤも似たようなもの
他の車両も似たり寄ったりで、数千億ジンバブエ・ドルの車両が並ぶ。タイヤやオイルなどの備品なら……と【見てみるが】、グッドイヤーのタイヤが200億ジンバブエ・ドル、エンジンオイルが$15億ジンバブエ・ドルなど、状況的にはあまり代わりがない。そもそも車両の価格がエンジンオイルの400倍程度でしかないあたりで、金額の感覚がおかしなことになっているのは明らか。
らちがあかないので、パソコンショップにチェックを移してみる。トップページにはhp(ヒューレッド・パッカード)のレーザープリンターが掲載されていた。こちらの価格は56兆3000億ジンバブエ・ドル。56億や56万の間違いではない。
hpのレーザープリンタ。56兆3000億ジンバブエ・ドル
レーザープリンタが自動車の何倍も高いのもいかがなものかと思うが、入手難易度が価格の差となっているのだろう。
デスクトップパソコンを見ると270兆ジンバブエ・ドルのhp社製のビジネスクラスモデルのdx2300をはじめ、桁を読み取りづらいほど「0」が並ぶ価格帯のマシンが続く。ちなみにdx2300だが、通常の価格は米ドルにして600~800ドル程度。
兆レベルの数字が並ぶデスクトップパソコン
ノートパソコンならあるいは……と思ってみたのが間違いだった。日本円で10万円前後で買えるはずのhp Compaq 530 Notebookが205兆6789億0009万9800ジンバブエ・ドル。計算したくとも電卓の桁が足りないくらいだ。
ノートパソコンも状況は変わらない
ノートパソコンも状況は変わらない。一番上に桁違いの斜め上を行く値段設定のものがあるが、これは恐らく冗談でつけられたものだろう。
ここまでインフレが進むと1桁2桁くらいの違いなどどうとでも良くなってしまう気分になるのも分からないではない。当事者にとっては冗談ではない話に違いないが、直近の選挙の状況一つを見ても、「どうにかしたいがどうにもならない」のも実情だろう。
「経済」と呼べる領域をはるかに超え、子どものおもちゃのお買い物(駄菓子屋などで見かける「こどもぎんこうけん」などの、「1億円札」「1兆円札」の世界)が今現在ジンバブエでは進行している。このような状況がいつまでも続くはずもなく、そう遠くないうちに何らかの状況変化がおきるに違いない。
しかしここまでインフレが加速してしまった経済で、どのように収拾がつけられるのか。引くにしても進むにしても、いばらの道は避けられそうにもない。
(最終更新:2013/08/04)
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