2008年5月の新設住宅戸数、前年同月比6.5%減

2008年07月01日 06:30

住宅イメージ国土交通省は6月30日、2008年5月における新設住宅戸数のデータを発表した。それによると5月の新設住宅着工戸数は前年の同月比で6.5%減の9万0804戸に留まり、11か月連続して前年同月比で減少したことが明らかになった。先月と比べると前年同月比のマイナスポイントの割合が減少し、二か月前に懸念された「再び状況の悪化」傾向から、先月同様多少ではあるが回復した形(【発表リリース、PDF】)。なお前回発表分から国土交通省の公開ページや文章ファイルのナンバリングフォーマットが変更されているので注意が必要。

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具体的な内訳は持家が5.7%、貸家は8.6%、分譲住宅は3.4%の減少。再び貸家の大幅減少傾向が見受けられるが、その代わりに分譲住宅にはやや歯止めがかかったようだ。しかし相変わらずマイナスの数字ばかりが見受けられる。また、地域別では先月とうって変わって近畿圏の軟調さ(30.5%減)が目に留まる。近畿圏には大きな物件がまとまって動く傾向があるのだろうか。

改正建築基準法の施行、そしてそれに伴う行政側の準備不足・不手際(特に「大臣認定プログラム」や審査担当者絶対数の不足)が昨年夏以降の住宅市場における混乱と、新設住宅戸数の減少をもたらしているのはいうまでもない。不動産・建設業界の住宅建設におけるプロセスの遅延は、昨今の資源高・賃金上昇などの要因と相互作用し、「官製不況」をより悪化させている。その上景気悪化に伴う消費性向の低下も、住宅需要を押し下げ、堂々巡り状態の感がある。

新設住宅戸数の変遷
新設住宅戸数の変遷(2008年5月分まで)

昨年8月~10月の大低迷から上昇傾向を継続していていた前年同月比割合だが、3月には再び下落し、再度状況の悪化が懸念されていた。先月4月分においてやや持ち直し、今月5月分も同様の傾向を見せ、3月時点で見られた不安はひとまず取り除かれた雰囲気。とはいえ、自然回復以外にポジティブな要素は見つけにくい。また、上場企業はもちろん帝国データバンクの倒産データを見ても、不動産関連企業の破綻が相次いでおり、予断を許さない状況に違いはない。

着工床面積概要(前年同月比16.0%減)では、先月同様事務所は増加したものの店舗・工場・倉庫は減少。用途別では宿泊業・飲食サービス業用とその他サービス業用のみが増加している。特に医療・福祉用が42.8%減と大きく減らしているのが気になるところ。

耐震強度偽装問題を教訓にした
「改正建築基準法」の施行

・行政の不手際などで
新築戸数などが激減
・昨年夏で底打ちに見える。
・3月再び下落・失速感。
・4月以降再び上昇の気配?
・周辺環境の悪化から油断は禁物

国土交通省では同日、住宅着工に一か月ほど先行するといわれている建築確認件数も発表している(【「最近の建築確認件数等の状況について」発表リリース】)。これによると今回発表された5月分データでは11.5%マイナスとなり、4月分データの4.5%からは大幅に悪化し、今年に入ってから3月の14.8%に次ぐ二番目のマイナスを記録している。この分では来月分の住宅着工もあまり期待できそうにない。

国土交通省から今回発表されたデータも含め、いまだに前年同月比がプラスにならない状況を観る限り、改正建築基準法施行の影響の大きさ、そして資源高、さらには需要縮小による供給過多などタイミングの悪い時にやってきたマイナス要因が、不動産業界を大きく揺れ動かしていることが分かる。そして昨年秋以降最悪期から順調に立ち直りつつあった状況も、足踏み状態、むしろ後退気味となっているのが現状だ。【改正建築基準法で影響を受ける周辺業界たち】で挙げた周辺業界にとどまらず、不動産業の軟調さは多くの業界にマイナスの影響を与えつつある。

不動産・建設業界は3月末決算が多く、5月には多くの企業で2008年3月度決算短信が提示された。軟調な数字と文言ばかりが発表資料内を踊り、特に昨年夏以降(とりわけ昨年末以降)顧客側の支払い渋りや値下げ交渉、さらには売れ残り物件の増加など販売計画の遅れが短信から読み取れる。先日も【スルガコーポレーション(1880)、民事再生手続き申し立て・上場廃止へ~負債総額約620億円】でお伝えしたように、二部上場の分譲販売を行っていたスルガコーポレーションが民事再生法の適用を申請している。また上場企業に限らず、特に中小で余力のない関連企業が倒産企業として報じられることが多くなってきた。不動産・建設業界においては、該当企業のIRを含め、定期発表される当データを注意深く観察し、動向を見守る必要があるだろう。

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