「人脈作りには19万のスーツが必要」・SNS経由の起業家の卵を狙った勧誘商法相次ぐ
2008年07月30日 08:00
東京都消費生活総合センターなどは7月7日、起業家を目指す大学生が大学構内やSNSで「人脈形成に役立つ」と称して19万円以上もする高額スーツを買わされ、トレーニングと称して知人や友人に向けて商品販売の勧誘をさせられる「マルチ商法」的なことをさせられる被害が続出していると伝えると共に、注意を呼びかけるリリースを発している(【発表ページ】)。大学構内以外ではSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)経由によるものが多いとのこと。
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リリースには具体的事例が伝えられているが、それらは次の通り。
●SNSに起業家希望のプロフィール登録をしていたら「君に最適な環境を紹介する」と誘いがあった。カフェで会うと「一流企業に勤める人とふれあい、自分を成長させる経験を積むことができる」と言われた。「社会人に会うにはオーダースーツが必要」と言われ、高額なスーツを契約、現金で支払った。
●SNSで知り合った知人から1日10万円稼げる話を聞き、興味を持った。19万円の高額スーツ購入が条件と言われ、10万円の頭金を入れて契約。ビジネストレーニングと称し、「とにかくアポを取れ」と指導され、友人のアドレスを書き出すよう言われた。親しい友人を勧誘することに抵抗があり、不審に思っていたら、友人に「マルチ商法だ」との情報を受けた。
●授業で隣の席に座っていた友人がスーツ姿で格好よく見えた。「何やっているのか」聞くとスーツの販売で月20万円稼げると言う。事務所に話を聞きに行くと「仕事をするにはスーツの購入が必要」「購入すれば詳細を教える」と言われ、約19万円のスーツを買った。スーツの金額によって報酬は15%、20%と異なり、友人を紹介するよう言われた。他の友人から「あの会社はあやしい」と情報があった。
●SNSで知り合った人からキャッシュフローゲーム会の案内がきて参加した。ゲーム後に起業家の話を聞くことになり、貯金より儲かると説明をされ、取引の仕組みがわからないまま、90万円のFX取引ソフトを購入した。また、知人を紹介するとマージンがもらえると言われたが、ソフトを使っている人が赤字続きという話を聞き、不安になった。
●知人から「儲かる話があるから話だけ聞いて」と誘われ会社に出向いた。馬券を自動的に予想し購入するソフトのシミュレーションを見せられた。疑わしいと思ったが、「サークルのみんなに広めればみんなでお金儲けが出来て楽しい」と勧められ、約90万円のソフトとパソコン8万円を借金して購入させられた。マルチ商法の疑いがある。
共通しているのは「SNSや大学構内など、不特定多数が集まるような場所で言葉巧みに勧誘してくる」「~万円儲かるなどという甘い言葉で誘う」「購入を求められる商品は実質的に支払い金額に相当する価値は持っていない」「購入しないと○×できないと、事実と異なる・購入を強要させる話へ展開する」など。まさにマルチ商法の手法そのものといえる。さらに対象者にむけてさらに購入対象者を増やすように求めるあたりも、マルチ商法・ねずみ講などのやり口と同様なのは一目瞭然。
正しい情報と知識、経験があれば、あるいは適切な助言をしてくれる相談相手がいれば、これらの話が問題のある、のってはいけない内容であることはすぐに分かるはず。しかし大学構内やSNSなど、気を許しやすい場所で、そしてこのような話や情報に疎い(しかもそれなりに購入力を持つ)大学生を対象にしているため、つい乗せられてしまうのだろう。
彼らの「魔の手」から学生などを守るためには、本人自身が少しでも怪しいと感じたら、身の回りの人に聞く必要がある。そしてあらゆる法令を駆使して彼らの手立てを取り締まると共に、学生を中心とした消費者全体にも、このような「魔の手」「甘い誘惑」が実在し、それらのやり口がどのようなものであるのか、いかに逃れるべきかなどを啓蒙していかねばならない。何しろ教えてもらわない限りは、自分で経験して失敗しなければ分からないのだから。
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