正規交換レートの10倍以上の価格で1000億ジンバブエ・ドル札が売り出されている件について
2008年07月30日 12:00
先に【ハイパーインフレのジンバブエ、大規模なデノミネーションの可能性】などでお伝えしているように、歴史的なインフレが進み貨幣価値がナイアガラの滝状態にあるジンバブエの流通紙幣「ジンバブエ・ドル」。この紙幣が多数、アメリカのオークションサイトebayで「レアな商品」として競売にかけられていることが明らかになった。落札価格を見ると、明らかに現行のジンバブエ・ドルの交換レート以上の価格で取引されている。
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【ジンバブエのインフレをグラフ化してみる】でも言及しているが、今回のジンバブエにおけるインフレが注目されているのは、そのインフレスピードの速さもさることながら、インターネットが普及して世界のどこからでもほぼリアルタイムで情報を入手できるようになった「ネット社会」に至ってはじめての、ハイパーインフレであること。これまでのインフレでは現地や近隣諸国に在住している人や、報道機関を通じてしか得られなかった関連情報が、地球の反対側にいる人でも手に取るように把握でき、記録が逐次行われ、論議も活発に繰り広げられている。
主要国ならば為替を取り扱っている大手の銀行で自国通貨と交換することが可能。しかしジンバブエ・ドルの場合、日本では交換そのものが非常に困難な状態にある。一部のブログで国際線のパイロット経由で手に入れたという話も目にするが、一般の人はなかなか入手しにくい。海外でも似たような状況のはずなのだが、日本よりはハードルが低いようで、世界を相手にしているオークションサイト【ebay】で「Zimbabwe」(ジンバブエ)をキーワードに検索すると、山のようにジンバブエ・ドル紙幣が出品されていることが確認できる。
単に「Zimbabwe」で検索すると芸術品やその他の一般出品アイテムもリスト化されてしまうので、紙幣を意味する「note」を検索キーワードに加えると、ある程度すっきりとした結果が得られる。
「Zimbabwe」「note」でアンド検索をした結果。189品が展示されている。
一番上に掲載されている1000億ジンバブエ・ドル紙幣10枚はすでに入札者が一人いて、199米ドルの値がつけられている。日本円なら2万1000円程度。7月30日現在、ジンバブエ・ドルの公式レートは1米ドルが588億8656万2526.04ジンバブエ・ドル。つまり、1000億ジンバブエ・ドルそのものは「7月30日時点で」「公式で」1.7米ドル程度の価値しかない。10枚ならば17米ドル。ジンバブエ・ドルへ交換可能な外為銀行があれば山ほどこの紙幣は手に入るはずだが、それがほとんどの人にとってかなわない現状では、10倍以上の200ドル近くを出しても欲しい「アイテム」に違いない。
今、一番の人気は先日発行されたばかりの1000億ジンバブエ・ドルで、いずれも(状態の良し悪しにもよるが)50ドルから200ドル近い値がつけられ、多くの入札者が競売中。これに伴い以前に出品されていた500億ジンバブエ・ドルをはじめとする高額紙幣は「最高額紙幣」の座から滑り落ち、値も急落している。
下手をすれば交換手続きをしている合間にも「紙幣」としての価値は下がり続け、言葉通り「紙くず」と化してしまう可能性はある。しかし「歴史に名を残すようなインフレ状態の流通紙幣における最高額面紙幣」という点での価値は後々まで残るのだろう。……これ以上高額の紙幣(特別アグロ小切手)が発行されなければ、の話だが。
ちなみに日本のヤフーオークションでは【取り扱い禁止商品】項目にもあるように、「債権、有価証券」の類は出品を禁止されている。紙幣も当然有価証券に該当するので、ジンバブエ・ドルも入手は出来ないハズ(以前、南満州鉄道の株券が出品を取り下げられたという話も耳にしている)。日本でebay経由で入手したければ、海外か海外通の知人に協力してもらうか、独力でebayのアカウントを取り、挑戦するしかないだろう。
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