若者達の夏のドライブ激減中・原因はやはりガソリン高
2008年06月30日 12:00
原油・石油価格の高騰はさまざまな方面に影響と変化をもたらしているが、その一端が【NewYorkTimes】で報じられていた。夜中にドライブを楽しむ10代の若者たちの姿が激減しているというのだ。普段「若者たちがドライブを楽しむ(そして時々暴走する)ルート」を巡回し、注意と取締りをしている警察官によれば、例年と違って彼らの車上の姿を見かけることは少なくなった。彼らは近所のショッピングセンターや映画館などでたむろしているというのだ。このような「行動様式の変化」も、ガソリン高に起因するとの声が支配的だ。
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アメリカの原油価格が1ガロンあたり4ドル(日本の感覚では1リットル200円)を超え、消費者の自動車利用の節制傾向はますます強まるばかりだが、10代の運転傾向に対する調査は現在のところ政府レベルでは行われていない。しかし、親が節約せざるを得ない状況で子どもに無駄使いをさせるはずもない。元記事の調査でも、多くの両親が子どもたちに対しガソリン価格の高騰を原因とした「厳しい選択」を迫ったという。
中にはガソリン代の高さのあまり、自分の自動車を手放した大学生もいる。元記事では「ガソリンをがぶ飲みする1996年製の日産クエストを手放さなければならなかった」という表現で、イリノイ大学の工学部の学生(19)が、両親がガソリン代と保険代を支払うのを拒んだために、自分の自動車をチャリティーに寄付することを伝えている。彼は今夏、友だちの車に相乗りすることになるだろう。車を手放したあと、彼は週末の夜にスターバックスで友だちとたむろするようになった。友だちも皆、夏休みのバイトを懸命にしないとガソリン代も稼げないと嘆いている。
当方(不破)はアメリカを訪れたことがないので実情は分からないが、アメリカでは昔から週末の夜になると自動車で周辺を徘徊するのが「10代の通過儀礼」であったという。音楽を大ボリュームで鳴らしながら街道を走り、同じようなライフスタイルの車を見つければ手を振って合図する、異性の子を見つければ声をかける、などなど(まるで映画の『アメリカン・グラフィティ』のように)。もちろんガソリンを大量に浪費して。
しかしガソリンの高騰でそのような「自動車を駆って青春を謳歌すること」が出来なくなった彼らは、自動車を駐車場に置き、周囲を散歩するだけとなった。同様の現象があちこちでおき、10代の若者たちは自動車で徘徊する代わりに、マクドナルドやスターバックス、深夜まで営業しているレストランでたむろしている。彼らの多くは「ガソリンが高くてやってらんない」と愚痴をこぼす。
自動車を駐車場に置き
スタバやマックにたむろする
ガソリン価格の高騰は、10代のアルバイト状況にも影響を与えている。自動車を使わないと通えないような場所で働くと、結局ガソリン代の方が高くつくという状況も起きるようになった。そのため、歩きで通える場所を選ぶ人が増えてきたというのだ。
親の財政事情もさまざまで、「よほどのことが無い限りは運転しないように」と注意しながらガソリン代を(厳しい家計事情の中から)出す親もいれば、ガソリン代支払い用のクレジットカードを渡す(要はフリーハンドでガソリン代を使える)親もいるという。家計の問題は人それぞれだが、後者の事例を説明した前者の該当者は「そんなことは自分の家じゃありえない話なんだけどね……」と寂しげにも聞こえるコメントをしたという。
原油・石油価格の高騰がさまざまな方面で大きな影響を与えている現状は、ひとえにこれまでの日常生活において、どれだけ石油に傾倒していたかをも示している。単純に生産と消費というレベルでの需要供給以上の力が働いていることもあり、値上がりの加速度があまりにも大きすぎ、社会そのものの仕組みが対応しきれていないのが、昨今の混乱の大きな原因だろう。
元記事は10代の夜間の自動車での徘徊がめっきり減ったという点から「ガソリン価格の値上がりを実感している」という論調でまとめられているが、日本でも最近良く「自動車の混雑ぶりが以前と比べて減った」「自動車そのものを見かけることが前と比べて少なくなった」との話をちらほらと耳にするようになった。当方はまだそこまでの実感はないものの、小型車・軽自動車の割合が以前と比べてかなり増えている様子はうすうす感じている。
このまま価格高騰が続けば、代替エネルギーの開発促進や省資源化技術の開発のスピードアップという世界規模な流れは当然起きるだろう。そして今回の「10代の夜のドライブ」といった身の回りのごくありふれた社会現象においても、大きな変革を迎えることになるのだろう。
(最終更新:2013/09/04)
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