今調査は6月1日から5日までの間にインターネット経由で行われたもの。有効回答数は1万4060人、男女比は46対54、年齢階層は30代がもっとも多く38％、ついで40代29％、50代の16％など。なお現在のアニメ視聴においては「月に1本以上」「年に数本」もあわせた「現在アニメを見ている人」は65.9％。以前は見ていた人も含めた「現在アニメを見ていない人」は34.1％に達している。

現在アニメを見ていない34.1％の人に、複数回答でその理由を尋ねたところ、以下の結果が出た。冒頭にあるように、三つの「ない」がほぼ同数で2割ずつの得票を得ている。

現在なぜアニメを見ていないのか

第四位以降の理由には「子ども向け」「質が低い」「現実味が無い」「原作のイメージを壊される」など、むしろ世間一般に言われている「アニメが嫌われる理由」が連ねられている。しかし実際にはそれらに比して「面白いと思える作品がない」「興味がない」「見る時間がない」が倍以上もの差をつけ、見ない理由の上位についている。「見ない」という行為は「アニメ」に対する明確な否定の自己表現(少なくとも肯定しない表現)であるから、これらの理由は「アニメを好まない理由」にも通じるものがあるのだろう。

それではこの「三つの無い」をよく考えてみる。「見る時間がない」は個人のライフスタイルの変化によるものだから仕方が無い。ただし、これが「自分の自由時間と時間帯がずれていて見られない」ということを意味するのなら、昔と比べて夜7時前後のゴールデンタイムにおけるアニメ放送が減った今時分の傾向が、影響しているものと思われる(ビデオで録画しておくという手もあるが、「時間が無い」であきらめる人は、そもそも録画してまでアニメを見るほどのモチベーションは無いだろう)。

または、時間そのものが単純に足りないのではなく、優先順位が下がり、「アニメに費やすくらいなら別のことに」という選択の結果の可能性もある。相対的に順位を押し下げた理由としてケータイなどの存在も考えられるし、低い評価しか与えられないとなれば後述する「質や魅力」ともかかわってくる。

残る二つの「ない」こと「面白いと思える作品がない」「興味がない」は表現こそ違えど中身はほぼ同じ。「面白」いと思うことは「興味」を持つことであり、「興味」が出てくれば「面白」さを感じる。この二つの違いは、「面白いと思える作品がない」はどちらかといえば個々の作品に対する評価への傾倒が強いのに対し、「興味がない」はアニメ全体への強い、と読むところだろう。個々の作品・アニメ全体という対象の違いはあれど、「アニメってつまんない」と考えているからこそ、「見ない」という結論が導き出されている。

現在「アニメを見ていない」人を「見ている」人の層に呼び寄せるには、「見ない」理由を取り払う必要がある。「時間が無い」はアニメ側ではどうすることもできないが(放送枠の変更はスポンサーレベルの問題)、「面白いと思える作品がない」「興味がない」とも行き着くところは個々の作品の質・魅力の問題。ジャンル全体は個々の作品から構成されるものであるからだ。

個々の作品の質の低下は全体の質も下げることを意味する。もちろん予算の都合や制作ラインの厳しさなどの諸事情もある。しかし制作サイドの人は、この状況を放任していては縮小再生産の状態を生み出すだけだという認識を持った方がよいだろう。

……気になるのは「特に理由は無い」と回答している人が25.5％と、実はもっとも多いこと。一方で「アニメを見ている」人の25.8％も「(自ら積極的に見たいとは思っていないが)子どもなど家族や恋人、友人・知人などのつきあいで見ている」と答えている。「見ている人」も「見ていない人」も四分の一程度は「自分の積極的な意思表示ではなく、何となく」で判断していることになる。

あるいは積極的な意識を持って見る・見ないを決める人よりも、「何となく」の人たちを引き込むことこそが、アニメの人気を盛り上げるための本当の施策なのかもしれない。だがそれは、理由がはっきりしていないだけに非常に難しいものとなるだろう。