男性の肺がん死亡率がものすごい勢いで上昇している件

2008年06月23日 08:00

医療イメージ厚生労働省は6月4日、2007年における人口動態統計月報年計(概数)の概況を発表した。それによると悪性新物質(主に「がん」、以後「がん」と表記)で亡くなった人のうち、部位別の死亡率では胃がやや減少傾向にあるものの他の主要部位は上昇傾向にあり、特に男性の「肺」は急上昇のカーブを描いていることが明らかになった。単純に他の病気の治療可能性が高くなったことや寿命が伸びたことだけでは説明がつきにくく、肺がんの主要要因足りうる「喫煙」と大きな関係があるものと思われる(【発表リリース】)。

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今調査は日本の人口動態事象を把握し、人口及び厚生労働行政施策の基礎資料を得ることを目的として行われたもので、戸籍法などに基づいたデータが集計されたもの。概要についてはすでに【死因3割は「がん」が原因・長寿の大敵はやはり「がん」】で解説済み。

統計データでは男女別に、「がん」の部位別死亡率のデータも掲載されている。10万人あたりの部位別死亡率は次の通り。

「がん」の部位別の死亡率(男性)
「がん」の部位別の死亡率(男性)
「がん」の部位別の死亡率(女性)
「がん」の部位別の死亡率(女性)

これらのデータから以下の事柄が推測できる。

・男女とも「胃がん」は徐々に減りつつある(が、男性は最近再び増加?)
・女性特有部位の「子宮がん」は減りつつあるものの、似たように女性に発症しやすい「乳房がん」はじわじわと上昇しつつある。
・男女とも「肝臓がん」「大腸がん」は少しずつ増加。食生活の変化が影響か?
・特に男性において「肺がん」の増加率が著しい。


先の記事でも指摘したように、時代と共に「がん」の死亡率が増加したのは、何らかの要因で「がん」そのものの浸透率が高まった以外に「他の病因による死亡率が減少したため、相対的にがんを発症・それが起因で亡くなる人が増えている」可能性がある。「がん」はその病理構造上年を経れば経るほどリスクも高まるので、「長生き」≒「発症率の増加」となりうるわけだ。

無論、検査方法や治療方法も進歩しているので、発症しても早期発見・早期治療で助かる率も増加している。これらの部位による死亡率上昇は、それにもまして寿命の延びによるものが大きいための結果と思われる。

しかし。そのように考察したとしても、男性の「肺がん」の上昇率はやや特異的であると見ざるを得ない。「肺がん」の発生原因のメインは「喫煙」。喫煙率の増加が「肺がん」の発症率を増加させたのだろうか。

【シンクタンクふくしま】経由で厚生労働省の【最新たばこ情報・たばこと健康のデータ(PDF)】から、紙巻タバコの販売本数を見てみると、やはり戦後に入ってからたばこの販売本数は増えている。人口増加や女性の喫煙率の推移を考えると一概には言えないが、やはり男性の喫煙本数がそれなりに増加していると見てよい。

紙巻たばこ販売本数(横軸は西暦)
紙巻たばこ販売本数(横軸は西暦)

さすがに今世紀に入ってからは世界的な喫煙運動の高まりから、販売本数が少しずつ減少の傾向を見せている。しかし「がん」が蓄積性の高い病症であることを考えると、たばこの消費量が減ったらすぐに肺がん率が減るとは考えにくい(【日本は5番目のヘビースモーカーな国・10人に3人は毎日喫煙】では10~20年のタイムラグが生じる、とある)。今しばらくはこの急カーブを描き続けることだろう。


(最終更新:2013/08/05)

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