空のガソリンスタンド、たなから消える生鮮食品……スペインのストライキ続報
2008年06月12日 08:00
先に【「ガソリン高すぎ!」 ヨーロッパ各地で発生するストライキやデモ】でお伝えした、スペインをはじめとするヨーロッパにおける、ガソリンなどの石油燃料の高騰を原因とする大規模なストライキ動きについて、同じく【BBC NEWS】で続報が伝えられたので、ここに紹介しておくことにする。
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群れをなすストライキのトラック群。さかんにクラクションを鳴らしている。
今件は燃料価格の高騰(今年に入ってからすでに20%)に打撃を受けたスペインのトラック輸送業者9万人が起こしたストライキ。彼らの多くは、自営業、あるいは中小企業に所属するトラックを担当している。これらのトラックは主に問屋や倉庫から末端の店舗への物資輸送を担っているため、このままストライキが続けばスーパーから品物が消え、ガソリンスタンドや家庭へのガソリン供給そのものが途絶えてしまう懸念すら生じていた。スペイン政府側でも事態を重く見て、緊急融資策をはじめとした各種対応策を検討中だった。
しかし政府の対応より早く、市民生活に大きな影響が出始めている。
ストライキ開始から二日目、早くもガソリンスタンドに殺到したお客によっていくつものガソリンスタンドのタンクは空になり、食料品店からは食品が消え始めている。カタロニア地方当局では自治体が所有するタンクローリーをパトカーの護衛つきで出動させ、ガソリンスタンドへのガソリン補充に当たらせているという。一方で政府当局側は対応策への指示のため、ストライキを起こしている輸送トラック団体との交渉をキャンセルしてしまった。
輸送トラック団体側いわく「今年に入って20%以上値上げしているディーゼル燃料(※トラックの燃料)の高騰をどうにかしろ。政府側から(トラック運送業者に対しては)燃料費の最低基準価格を守るように(ガソリン供給側に)指導してくれ」と要望。しかし政府側は緊急融資と早期退職への割増金を提示したものの、「公正な競争をさまたげるものだ」として燃料価格の是正には首を縦に振らなかった。
今回のスペインにおけるトラック業者のストライキには最大の勢力グループの団体は加わっていないが、ストライキに参加しているグループからの各種妨害(移動のさまたげや輸送物資の排除)なども起きているという。また、ストライキに参加しているトラック業者のトラック達は国境線沿いでバリケードを築き、国外からの輸送トラックの入国や荷物の搬送を妨害しているという記述も原文には見受けられる。すでにカタロニアの40%、マドリードの15%のガソリンスタンドが「品切れ状態」にあるとのこと。
「品切れ」のプレートを掲げるガソリンスタンド。
ストライキに参加しない業者のトラックに対し、ストライキ参加側の妨害も行われている。決して商品そのものに罪はないのだが。
トラック業者などの行動が、消費者に「買いだめ行動」を促進させているとの報告もある。スペインとポルトガルのスーパーマーケットではとりわけ生鮮食品の不足による行列が報告され、トラックの運転手自身も品不足を嘆いているとのこと(彼ら自身もそこの住民である)。元記事では食品が消えたスーパーの棚の写真が掲載されているが、そのビジュアルが現状を如実に表している。
BBC NEWSの動画が組み込み無効措置をとっているので、独立非営利・中華系メディアNTDTVによる6月7日付けの公式許諾動画を紹介。スペイン以外にフランス、イギリスなどで燃料費高騰に対するデモ・ストライキが行われている様子を伝えている(チャイニーズ・イングリッシュで伝えられているので、ある意味ネイティブより分かりやすい)。
「私たちトラック業者は、この国が動き続けるために必要な商品を運送する役割を果たしています」「燃料費を工面できないために我々が活動できなくなると、この国は活動を停止してしまうでしょう」とストライキに参加している、さるトラック業者の代表はコメントしている。
すでにこのストライキによって、現地の自動車工場のうち3会社(日産、メルセデスベンツ、スペインの大手メーカーであるシアト)が操業を中止したとのこと。また首都マドリードへの食糧輸送の手立ても非常に少ないものとなっている。しかし政府側は「食糧供給は維持する。不足の心配はない」と断言している。この自信の裏づけには「数日以内にストライキ解消のための打開策を(政府側が)用意できるはずだ」との当局筋の思惑もあるとのこと。
繰り返しになるが、ここ半年~一年における急激な原油・石油商品高が需給のバランスの変化によるものだけなら、ある意味仕方ないともいえる。しかし値上がりの度合い・スピードが通常の需給関係から来るものにしては、あまりにも急すぎることが、各種対応が間に合わずに今回のような事態を招いたともいえる。需給「以外の要因」で価格の急騰が起き、それがこのような事態を招いているのなら、早急に「しかるべき」手を打つ必要があるのだろう。
(最終更新:2013/08/05)
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