ネットやケータイ増やしてテレビや新聞、雑誌は削減・今年の広告費動向
2008年06月04日 12:00
日経広告研究所、日経メディアラボ、株式会社ディーツー コミュニケーションズは6月2日、携帯電話を利用したモバイル広告に関する企業の利用動向調査結果を発表した。それによると、2008年度における各媒体の広告費の割合において、既存4大メディアはいずれもその比率を「減らす」とした回答が「増やす」よりも少ない一方、デジタル広告に該当する「インターネット広告(パソコン向け)」「モバイル広告(携帯電話向け)」は「増やす」とする回答が「減らす」を大きく上回っていることが明らかになった。今年度は既存メディアへの広告費を削減しててでも、デジタル広告への出稿量を増やす意図を多くの企業が持っていることか想像できる(【発表リリース、PDF】)。
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今調査は日経広告研究所の調査データ「有力企業の広告宣伝費」の上位企業1500社を対象に、2008年2月18日から3月18日にかけて行われたもので、うち218社が回答した。回収率は14.5%。母数がやや少なめのため、実情とは多少のぶれが生じている可能性を考慮した上でデータを見る必要がある。
昨年度(2007年度)までの広告費の配分比率はすでに【デジタル広告出稿比率は全体の9%、特にケータイ広告は「口コミが期待でき、安くて使いやすい」】でお伝えしたとおり。4大既存メディアは現状維持のまま、他メディアへの配分率を減らし、その分をデジタル広告にまわしているようすがうかがえた。今年2008年度においてはさらに、4大既存メディアへの配分率を減らしてでもデジタル広告への出稿量を増やそうとする意図が見えてくる。
2008年度の広告費総額における各媒体の比率(増減の意向について)
特に「新聞」において
広告費配分は
減少する可能性が高い
「新聞」「テレビ」「雑誌」「ラジオ」いずれにおいても「増やす」と回答した割合は「減らす」よりも少なくなっている。単体それぞれの金額の差はあるだろうが、数だけで単純比較すればいずれの媒体も2008年度は広告出稿数が減ることが推測される。また、「ラジオ」は元々ボリュームが小さくリストラ対象の先頭にも挙げられていたことから、これ以上削りようがないのか、約2倍とはいえ「変わらない」が7割を占めている。一方で他メディア、特に「新聞」は変わらないが約5割でしかなく、「減らす」が「増やす」の約2倍も回答されている。
一方でインターネット・モバイルなどのデジタル広告は「増やす」が「減らす」のそれぞれ7倍、5倍と「増やす」意向が圧倒的に大きく、2008年度ではこれらの分野への予算配分が増加されるだろうことは容易に想像がつく。
なおモバイル広告において「変わらない」が6割強を占めるなど現状維持派が比較的多いのは、【ケータイ広告普及進む・2007年度は2割、今後3割が「新規に使うかも」】にもあるように「新規に導入したい企業は多いものの、携帯電話向けサイトを持っていない企業がまだ多数に及ぶから」だと推測される。
今朝の「デジタル広告出稿比率は全体の9%、特にケータイ広告は「口コミが期待でき、安くて使いやすい」でも触れたように、デジタル広告、特に携帯電話向け広告は、今まで「オールラウンドで何でもあり」としていた4大既存メディア広告の「実は弱点だったけどあまり表ざたにされていなかった点」、すなわち「口コミ(バイラルマーケティング)」「効果の分かりやすさ、スピーディーさ」「ターゲットの絞り込み(効率の良い広告展開)」「低予算」を補完する広告媒体として企業に認知され、活用される傾向にある。
この動きは単に「4大既存メディアの広告費が、新参者のデジタル広告に奪われている」のではなく、「効果の低かった領域の予算分が、効果の高い新勢力にバトンタッチされた」だけに過ぎない。例えるのなら、和洋中何でもありだった大衆食堂の近所に中華専門の美味しいお店が新しくオープンし、中華好きな人がその新店舗に足を運ぶようになっただけ、という感じだろうか。
なお今調査の主要対象であるケータイ広告(モバイル広告)について、「利用したいタイプ」では全体の回答では「検索連動型」、すでにモバイル広告を出稿した経験のある企業では「掲載期間保障型」がトップに経った。携帯電話でも検索エンジンが多用されるようになったことを証明すると共に、携帯電話の広告では「表示するだけでも意義がある掲載期間保証型」「利用者のニーズが強烈に絞り込める検索連動型」の2種類がとりわけ人気が出るようすを表しているといえよう。
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(最終更新:2013/08/05)
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