地価はすでに天井感・取引高減少、一部地域では下落傾向も
2008年06月02日 08:00
国土交通省は5月29日、主要都市の高度利用地地価動向に関するレポートを発表した。それによると土地の価格は一部地域を除いて全般的に「上昇率低下」「一部では下落」「取引高減少」にあり、近郊地域では下落傾向が見られることが明らかになった。土地価格そのものの天井感が再確認できるデータといえる(【主要都市の高度利用地地価動向報告~地価LOOKレポート~】)。
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今調査は鑑定評価員(不動産鑑定士)88人によって収拾された情報を元に国土交通省が集約・統計を取り分析された。調査対象は東京圏43地区、大阪圏26地区、名古屋圏11地区、地方圏20地区。なお「高度利用地」とは市街地において土地の高度利用を指定した土地のことを指す。大規模なビルを建てることができ(るというより促される)、税金の軽減などの援助を受けられる。要は高層ビル化が促進される場所で、開発業者にとっては狙いどころ、世間一般から見れば「一等地」と表現できる。
東京圏の地価動向
サイトの横幅の事情で分かりにくい縮小サイズとなっているため、詳細は元資料を参照してほしいが、「赤系統は上昇」「緑は横ばい」「青は下落」としてみてみると、東京圏ではほぼ横ばい、一部上昇している地域もあるがその動きは鈍くなっている様子が分かる。特に23区外の近郊エリアでは地価の変化に乏しい(横ばい)の地域が多い一方、神奈川県の一部地域、東京23区内の銀座・丸の内・表参道地域の地価上昇率の高さが目立つ。
これは先の【2008年の23区内大規模オフィスビル供給は前年比43.7%減・中心部開発の終了が原因】でも触れているように、「外資系金融機関にも人気の高い都心3区(「千代田区」「中央区」「港区」)」のニーズが高く、必然的に地価もうなぎ上りであることからくるものだろう。人気が高く売買される土地の量が小さければ、当然価格は上がるものだ。
また、神奈川県の一部地域で地価の上昇傾向が見られるのは、【首都圏の地価は「西高東低」「南高北低」】でも触れており、こちらは鉄道網整備の良さが反映されているものと思われる。
千葉県では海浜幕張が健闘しているものの、本八幡、新浦安共に大きく下落している。都心にも近いという立地条件のよさから新築高層住宅の建造が続くものの、ニーズは急減しているのだろう。
名古屋圏ではほぼ横ばい、大阪圏ではなんば・梅田地域で一部上昇機運が見られるものの全般的に横ばい、京都駅付近では下落傾向も顕著に見受けられる。
大阪圏の地価動向(大阪府周辺に限定)
これらの図やデータを見ると、国内の地価は上昇機運は一部地域で見られるものの全般的には横ばい、あるいは少しずつだが下落傾向にあるようすが把握できる。また資料には各地域の詳細報告書(具体的な場所に加えて取引価格、利回り、取引件数、供給量、賃料や分譲価格の傾向一覧)が掲載されているが、取引件数で「上昇傾向」と表記されている場所が一か所も無く、横ばい地域が3割強、取引高減少地域が6割強という傾向が見られる。
また具体的な項目概要に目を通しても、「投資家の姿勢が慎重」「供給の過多と需要の弱化」「需要の伸び悩み」など、天井感と今後の需給調整の到来を予見しそうな文言がずらりと並んでいる。
本文中に参照記事としてあげた過去の記事にもあるように、出し惜しみと諸経費の高騰で上昇した不動産・住宅価格も、投資家をはじめとした需要側の急速な落ち込みと購買力の減少から、一気に供給過多・価格下落の傾向が見られるようになった。一部地域では未だに引く手あまたな状態のため、価格の高値維持・あるいはさらなる上昇が期待できるが、大部分の地域では今後大規模な需給のリバランスが進められることだろう。
バナナの叩き売り状態、とまではいかないだろうが、今後はこれまでの「造れば黙っていても必ず売れる」という殿様商売は通用しなくなる。不動産業者側としてはいかに付加価値をつけて他社との差別化をはかり、さらに需要側のニーズを満たしてサイフのひもを緩めさせるかに、かかってくることになるのだろう。
(最終更新:2013/08/05)
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