90年前のアメリカの新聞広告から当時の社会をかいま見る
2008年06月08日 12:00
先に【ニューヨークタイムズ紙、「タイム'ズ'マシン」を提供】で、ニューヨークタイムズ紙のシャレたサービス「昔のニューヨークタイムズ紙をネット上で閲覧できるサービス」【TimesMachine】を紹介した。記事執筆後も、もんまりとしながら斜め読みなどをしていたところ、記事そのものよりも広告に面白い・興味深いものが数多くあることを見出し、前回【100年前のアメリカの新聞広告】では100年前のものを色々と斜め読みしてみた。今回はそこから10年ほど先に進んだ90年ほど前、1919年の新聞をチェックしてみることに。
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対象にしたのは【1919年1月26日】、国際連盟の誕生を報じた日の新聞。今回あえてこの日のを選んだのは、国際連盟がどうとかいうからではない。たまたま日曜であったため新聞も「日曜版」としてボリュームも大きく、当然広告も多種多彩に及んでいたからだ。動画共有サイトや歴史映像を収めた資料DVDなどで当時の記録フィルムを見ればある程度状況は分かるのだが、新聞という媒体から眺めてみるのも趣がある。
この時代になると広告の量も増え、ビジュアル豊かなアピールをするものも多くなってくる。また日曜版ということもあり、男性勤労者だけでなく女性向けの広告も色々と目に留まる。また後述するが、写真を用いたものもいくつか登場している(やはり印刷の都合上、ややつぶれ気味だが)。
当時の女性向けファッションが想像できるセールスの写真。「Reorganization」とは再編集・再編成を意味する。現在の「棚卸し大バーゲン」のようなものだろう。
もちろん男性用の服飾品も。掲載が冬なため、コートの広告が多く。左側には皮製の手提げバックが見える。20%引き、定価17.5ドルのところが12.5ドル、7.5ドルのものがスペシャル価格5.0ドルなど、キャッチコピーは昔も今も変わらない。
当時の文化を知るという意味では服以上に興味深いのが家具や食器などの調度品の広告。休日版ならではのものといえる。家族みんなで新聞を広げてチェックして、買い物に来てくださいなという思惑なのだろう。
さまざまな家具がずらりと並ぶ。当然ながら現在から見ればアンティークな家具ばかりだが、基本的な機能は変わらないように見える。ある意味、家具というものはこの時点で形としては完成されたものになったのかもしれない。
ちょっと驚いたのがこれ。日本製の下着・室内服(ランジェリー)の広告が掲載されている。描かれているのは着物なので、おそらくはその類だろう。当時の日本の特産品だった、絹製であることが強調されている。
キャンディー、掃除機、そして「ふすま」を使ったダイエット食品(下の「HealthBran」)。姿かたちは違えど、昔も今も大衆が求めているものにさほど違いはない。
アメリカを支える自動車産業が活性化しだしたことを表すかのように、自動車関連の広告もかなりのボリュームを占めている。当時の「いかにも」的なスタイルの車両が色々と掲載されていて、大変面白い。
企画広告的な記事に描かれた当時の自動車。また右下にあるように、車の後部に取り付けることで荷物も運べますよ、的な貨車車両も販売されている。
自動車そのものでなく、自動車解説本の広告も掲載されている。自動車による輸送システムが革命的な変化をもたらすだろうことや、その仕組みなど、価値ある情報が満載、とのこと。男性の後ろにある電話の形が古さを物語る。
1919年といえば第一次世界大戦が終わった直後(1918年11月11日に終結)であるだけに、新聞には戦地から引き上げる兵士たちのようすや、荒廃した戦場の情景などが写真にて映し出されている。広告ではないので今回は取り上げなかったが、興味がある人は目を通してみるとよいだろう。また、革命の真っ只中のロシアのようすなど、戦争が終わって一息ついてはいるものの、まだ世界が混沌とした中にあることが記事からはかいま見れる。
一方でニューヨークに相次いで大型ホテルが新設されたり(一部は現在まで継続して営業されている)、家庭用ピアノの広告が複数掲載されていたりなど、平常さを取り戻そうとする人々の姿も見て取れる。ともあれ文章そのものが英文であったり、文字がつぶれて読めないものだったとしても、ビジュアルだけでも十分に楽しむことができるだろう。
(最終更新:2013/08/05)
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