灯油+29.2、スパゲッティ+30.2%、即席めん+18.4%……必需品で急騰する物価

2008年06月01日 12:00

物価高イメージ総務省統計局は5月30日、消費者物価指数の2008年4月分を各種データと共に発表した。全体の総合指数は2005年を100とすると100.9、前年同月比では0.8%の上昇となった。食料・エネルギーを除く総合指数は99.3で、前月比0.2%の上昇、前年同月比0.1%の下落となりそれなりに安定した数字を見せているが、その分「食料・エネルギー」などの必要な消費財の値上がりが激しいことがうかがえる(【発表リリースページ】)。

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10大費目指数について、2005年を100とした相対値(以下同)を見ると次の通り。4月は光熱費・水道料金が跳ね上がっているのが分かる。

・総合……100.9
・食料……100.2
・住居……99.9
・光熱、水道……109.2
・家具、家事用品……96.0
・被服および履物……103.2
・保険、医療……99.5
・交通、通信……98.8
・教育……102.3
・教育、娯楽……96.6
・諸雑費……102.0


これだけでは物価上昇の実感がつかみにくいので、追加資料として添付されている主要品目を抽出してみることにする。

エネルギー構成品目の4月分における先月比・前年同月比
エネルギー構成品目の4月分における先月比・前年同月比
石油製品の値上がり
1年間で20~30%

万分比ウエイトとは全体に占める割合。数が多いほど家計に与えるインパクトが大きい、と考えればよい。4月に限ると灯油は前年比3割上昇。鼻血が出そうな額である。原油高の影響がいかに大きいかがわかる。また上記は4月分だが、元資料では3月分も併記されており、それを見ると前年同月比で「石油製品+18.2%」「ガソリン+19.0%」「灯油+29.2%」とある。2007年3月の値段と比べ、それだけ平均的に値上がりしたという計算。

一方、交通・通信費はほとんど前年と変わらず、むしろ下落している傾向にある。値上がりしているのは航空運賃やタクシー代くらい。自動車保険など競争の激化からか、逆に大幅値下げの数字が出ている。

耐久消費財もしかり。特に娯楽用商品において値を下げているのが分かる。

耐久消費財の主要品目における先月比・前年同月比
耐久消費財の主要品目における先月比・前年同月比
耐久消費財は
横ばいか
むしろ値下がり

表組をした側の意図もあるのだろうが、IT系品目の下落が著しい。ノートパソコンなど1年間で4割近い下落を見せている。少々やりすぎな気もするが、半ば飽和状態・技術の高止まりにあるパソコン市場では、コストダウンをした上で値引きをし、お得感で区別化するしか手がないのだろう。

しかしガソリン代と並びもっとも「物価高」を実感できる食料品になると「物価安定」「価格下落」など一部門での話などぶっ飛んでしまう。

食料の主な品目の先月比・前年同月比
食料の主な品目の先月比・前年同月比
スパゲッティ+30.2%
チーズ+27.7%
即席めん+18.4%

小麦価格の高騰に連動する形で、スパゲッティが+30.2%、即席めんが+18.4%。食パンが+10.8%に落ち着いているのが奇跡のようだ。また、チーズ+27.7%、マヨネーズ+16.0%など、「冗談にもほどがある」というレベルの値上げ。

「特定品目に限るからであって、例えば肉類全体で考えればそれほどでもないだろう。高いものは選ばねば良いだけでは?」という意見もあるだろうが、食料のうち「前年同月比に対する寄与度上位5項目」、つまり年間の値上がり率&食料品の中でウエイトが大きい品目5項目を見るとそうも言ってられないことが分かる。

食料のうち総合指数の前年同月比に対する寄与度上位5項目
食料のうち総合指数の前年同月比に対する寄与度上位5項目

小麦の大幅価格引き上げで穀物・穀物精製品の値上げがもっとも大きく反映されているのは理解できるとして、肉類も大きく値を上げているのが分かる。調理食品、外食、菓子類もしかり。リストアップされている主な品目を見ると、穀物項目の30%云々は別にしても、多くの項目で主要品目が1割前後の値上げをしているのが見て取れる。

例えば4割値が落ちているノートパソコンはよくて2年に一度くらいしか買い替えをしないだろうが、食品も買うペースを同じにするわけにはいかない。それこそ毎週、毎日買うことを考えると、他の商品と比べて値上げ率が高い食品の値上げは、ダイレクトに家計に影響を与えていることが分かる。


穀物や肉類の価格が1年で4~5%上がったとしても、同じ率だけ手取りが上がればそれは単なる「インフレ」で済む。各種計算上の問題もあるが、生活の苦しくなる度合いは最小限に抑えられる。しかし現状では「賃金の停滞・さらには下落」と「物価の持続的な上昇」が並立するという、スタグフレーションの状況を呈している(【零細企業の給与は7年連続減少中】)。

節約イメージ食料品は質を落としたり質素倹約を心がけたとしても、それ自身をなくすことは出来ない。エネルギーもまたしかり。今ではほとんど使われなくなった「エンゲル係数」なるものが存在し得たのもそのおかげだ。収入が増えずに食品の出費を削るのが難しいのなら、他の品目を削るしか生活していく手立てはない。今後は娯楽、住宅、耐久消費財などの需要が減少することは否定できまい。

スタグフレーションともなれば、物価がさらに上昇することで需要は減少し、需給関係のバランスが取れる状態になるまでその傾向は続く。今回の不況(サブプライムローン問題をきっかけに生じた金融信用不信不況)が、1970年代のオイルショックや1980年代の石油価格高騰時に生じたスタグフレーションと同様の状況を引き起こすのではないかという懸念があるが、可能性は決して低くないといえよう。一方、耐久消費財は値下がりの傾向が続いており、この品目に限ればすでにスタグフレーションの山を越した、と考えることもできる。

どちらにしても今しばらくは厳しい状態が続くことに違いはあるまい。消費者側としては上昇する物価と「必要なもの」「要らないもの」を見極め、知恵と工夫で無駄なき生活を心がけ、この不景気を乗り切るしかないのだろう。


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