たばこと酒を止めれば月1万円のおこづかいがもらえる制度
2008年06月25日 19:40
【Metro.co.uk】が伝えるところによると、イギリス・スコットランドのダンディー地区(Dundee)の貧困層のエリアに住んでいる喫煙者に対し、「禁煙支援金」が支給されることになった。スコットランド政府と国民医療サービス(NHS)、地方当局の手によって、禁煙推進策の試験プログラムとして今年の秋から実施されるもので、たばこと酒を断つことで毎週12.5ポンド(2650円)が電子マネーの形で支給される。NHSでは予算として50万ポンドを用意、900人がこの2年間でこのプログラムを遂行し、禁煙を果たすと予想している。
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元記事によれば、この「禁煙支援金」プログラムの概要は次の通り。
・プログラムに参加して禁煙すると、近所のスーパーマーケットで使える電子マネーカードに1週間あたり12.5ポンドを振り込んでもらえる。このお金は食べ物などで使うことができるが、たばことお酒は買えない。
・プログラムに参加する人は近所の薬局でニコチン置換療法(NRT)を受けねばならない。
・薬局では週一回、一酸化炭素とアルコールの検査を行い、たばこも酒も飲んでいないことを証明しなければならない。
・そのほか、ダンディー地区を支援するボランティアから禁煙に関するアドバイスをはじめとする、さまざまな社会的支援を受けられる。
また関係者の話では計画が成功裏に進めば、今後スコットランド全土でプログラムを実行するという。
NHSの当局者は「現在3万6000人の喫煙家がダンディー地区には確認できるが、そのうち半分は食事もままならない状態にある。国全体としての禁煙プログラムは成功を収めつつあるものの、貧困層の喫煙問題はその貧しさと喫煙の複雑な関係(愛煙家は貧しくても喫煙を優先する傾向があるため、ますます食を得がたくなり、また健康を害するためさらに貧しくなる)から、現行の解決策では問題を解消しにくい。それ以上の手(つまり今回の禁煙支援金のようなこと)を打つ必要がある」とコメントし、今回の支援策に自信を深めている。
禁煙法が施行。
公共施設内での喫煙が全面的に
禁止されている。
なお事情説明としていくつか補足すると、スコットランド地方はイギリスの中でも特に喫煙率が高い地域。この地域では2006年3月26日から、公共屋内における全面禁止令と違反者へ罰金50ポンド(1万円)を科すという【禁煙法(Smoking, Health and Social Care (Scotland) Act)】が、他の地域に先駆けて施行されている。
また、スコットランドの喫煙率の高さ・ヘビースモーカー度は色々な資料でその姿を見出すことができる。例えば【スコットランドの情報を展開しているスコットランド情報ドットコム】によると
スコットランドは心臓疾患発病率が世界でも最悪国のうちに数えられる。最近出たデータによると、ここ数年やっと発病率が減少し始めたが、それでもやっぱり世界第2位とか。(中略)
このあまり自慢にならない統計は、いくつかの原因がからみあった結果だ。喫煙は大きな問題の一つで、何しろ今でもバスの中に喫煙席がある土地である。特に所得が低い層ほど喫煙率、特に女性の喫煙率が高くなる傾向があり、女性の心臓疾患が特に多いのは喫煙が直接の原因らしい。
(後略)
などという表記を見つけることができる。
心臓発作の患者減少率が
3%から17%へ
大幅に増加
禁煙法が2006年に施行されてから1年後の2007年9月には、スコットランド自治政府の発表データによると心臓発作で入院する患者数が年17%も減ったことが確認されている(これまでは年3%のペースでの減少)(2007年9月11日付け時事通信発)。これらのように、一般市民へは禁煙を推し進めているものの(先のNHS当局者のコメント中「国全体としての禁煙プログラムは成功を収めつつあるが」の部分がそれに該当する)、貧困層には(その貧困さゆえに)なかなか良い手立てが見つからなかった。
そこで今回「禁煙支援金」という手を使い、貧困と喫煙による健康問題の双方を解決しようという手に出たわけだ。これは間接的に、健康の害が少なくなれば医療費も削減できるため、回りまわれば禁煙補助金以上の医療費削減が望めるという腹積もりもあるもよう。
「禁煙支援金」は「アメと鞭」のたとえ話なら、「アメ」をたくさん、「鞭」を少々、といった雰囲気の政策といえる。果たして思い通りに事が進むのか、続報を待ちたいところだ。
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