【更新】1グラムで6リットル、自重の6000倍もの水を吸収! スイゼンジノリから新物質「サクラン」開発
2008年06月15日 12:00
北陸先端科学技術大学院大学は6月13日、マテリアルサイエンス研究科の金子達雄准教授と岡島麻衣子研究員らのグループが北九州で取れる食用の海苔(のり)「スイゼンジノリ(水前寺海苔)」から抽出した新物質が、既存の吸水剤の材料の5倍に相当する吸水能力を持つことを発表した。研究グループではこの物質を「サクラン」と名づけたとのこと([発表リリース]、[参照記事:読売新聞])。
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リリースなどによると今回発見された「サクラン」は糖分子が10万個ほどつながった多糖類(多くの糖成分同士が分子レベルで統合した物質)。これまで発見されている多糖類の中ではもっとも長い構造を持つ。その長さのために大きな吸水力を持つのが特徴で、水なら自重の6000倍、人工尿(塩分などを含む水)の場合でも2500倍もの吸収力を持つことが明らかになった。
従来吸収体として化粧品などに用いられているヒアルロン酸も多糖類として有名だが、こちらは塩分濃度が高まると吸収力が落ちてしまう。しかし「サクラン」はヒアルロン酸ほどの減少率は見られなかったという。他に高い保湿性(吸収した水の3割は80度以上に熱しても蒸発せず、0度以下でも凍らなかった)も見られたとのこと。そして「サクラン」はバイオ由来であり生分解性も有することから地球に優しい素材としても注目されている。
リリースや元記事などを見ると、その吸水率の高さから、
・化粧水……皮膚の表面をコーティングし、皮膚内の水分蒸発を防げる
・医療用品……患部を長期間に渡って保湿させることができる(薬品で)
・海水の貴金属回収……吸水力の高さから海水中の重金属を吸収させ、その回収に役立てる
などへの応用が期待できるとのこと。
また、「保水」というキーワードでは乳幼児用の「おむつ」が知られているが、この「おむつ」の吸水部分を用いて砂漠地帯の緑地化を推し進めているという話も聞く(どうやらうまく行っていないようだが)。吸水性の高さだけで緑地化が推進できるわけではないが(現地の降水量や土壌の塩分量など複雑な要素が絡み合う)、緑地化用素材も含めて「保水率の高さ」を活かしたさまざまな活用が期待できよう。
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