最近株式分割と単元株制度導入が増えているワケ
2008年05月19日 08:00
当サイトの一コーナー【株主優待・単元速報】をチェックしている読者の方は、最近「単元変更」に登場する銘柄が増えたことにお気づきだろうか。先日も【りそなホールディングス(8308)】と【三井住友フィナンシャルグループ(8316)】が、株式分割と単元制度導入(=単元変更)を発表している。それぞれのリリースに目を通せばお分かりになる人も多いだろうが、これからますますこのパターンが増えてくる可能性が高いこともあり、ここで一通りまとめてみることにする。
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●すべては「上場企業株式の電子化」がきっかけ
すでに【「タンス株」まだ150億株・全上場株式の4%も存在】でお伝えしているように、来年初頭から上場企業の株式が完全に電子化されることになった。これにあわせ証券保管振替機構(ほふり)では「たんす株(タンス株、タンスなど自分の手元に株券自身をおいている状態の株式・株券)」の証券会社への預け入れをアピールしている。上場企業の株券が電子化した際に、それまでに相続などで受け取った、保有者自身ではなく親族名義などのたんす株を名義変更せずにそのままにしておくと、株主としての権利を失う可能性があるからだ。
この「上場企業株式の電子化」の実施目標日が2009年1月5日と具体的な期日で設定されることになり、多くの企業が具体的なスケジュールの調整に向けて動き出している。この「株式(株券)電子化」に際し、「たんす株」以外に問題となるのが、「端株」(1株未満の端数株)の問題。
たとえば取引単位(単元)が1株の企業で、1対1.2の株式分割を経験していたとする。その場合、少なくとも0.2株という端株が存在することになる。
1×1.2=1.2……0.2株が端株
また、単元が10株の企業でも、1対1.2の分割をしていれば、やはり端株は存在しうる。
10×1.2×1.2=14.4……0.4株が端株
これら分割によって発生した端株以外にも、第三者割当増資や優先株の発行で、端株が生じている可能性はある。そして「端株」は電子化後は「ほふり」の取り扱い対象からは除外されるため、このままでは株主の端株の権利が失われてしまうことになってしまう。そこで現在端株を発行している企業は、電子化までに何らかの形で整理をする必要が出てきた。電子化までにこの小数点以下(小数第二位まで。第三位以下は切り捨て)の端株を処理しておかないと、株主は「丸損」しかねないからだ。
●東証の「売買単位を最終的に100株に集約」方針も一因
もうひとつ、昨今の動きの要因となっているのが【東証、正式に「売買単位を最終的に100株に集約」を発表】でもお伝えした、東証が2007年11月に発表した「売買単位は100株単位に統合すべき」との方針。投資家の混乱を避けるための措置だが、事実上の強制力を持つことから多くの企業でこの流れが加速している。そして【東証、株式売買の最少金額単位を「5万円」へ】でも説明したが、「売買'代金'」が5~50万円の領域に納まるようにもうながしている。
端株の処理
・単元を100株に
・売買代金の調整
↓
株式分割と単元制導入で
一括クリアへ
企業側としては「電子化で端株を片付けねばならない」「売買単位は100株単位にしなければならない」「売買代金は5万円~50万円の間に納まるよう努力の姿勢を見せる必要がある」というノルマが課せられたことになる。これを一度に解決するのが、「株式分割と単元制の導入」というわけだ。
●手持ち株式の価値は変わらない
「株式分割と単元制の導入」による端株処理・売買代金の調整・単元100株への移行は、主にこれまで売買単位が1株で、取引額が大きかった銘柄で見られる。【りそなホールディングスの例(PDF)】を見てみると、
・1株を100株に分割(小数点以下の端株が整数株になる)
・100株を1単元とする単元制を導入
これらを2009年1月4日に実施し、電子化が行われる1月5日からは100株を1単元として取引が行われることになる。
分割と単元制導入の一例(りそなの場合とは別)。端株のある銘柄でも事前に分割を行うことで、電子化による端株喪失による影響を受けなくてもすむようになる。
当日は自分の証券口座のポートフォリオ一覧を見て、株数が100倍に増えて驚くかもしれない。しかしその分株価自身は1/100となっているので、手持ち資産そのものには変わりがない。また、配当も原則的に1株あたりの額は分割前の1/100になるので、現在保有している株式に対する配当額に変わりはない。「株数が100倍になったから配当も100倍!?」というウマい話は無いので、念のため。
手持ちの資産に変わりはない
くだんのライブドア騒動から、東証では大規模な分割は市場と投資家を混乱させるものとして、できうる限り慎むべきとの通達を出している(【東京証券取引所、1万円以下の投資単位を認めないように株式分割時のルールを見直しへ】)。しかし今回の場合、東証側の指導を起因としていることや、同時に単元制も導入することで実質的に取引単位に変わりはないことから、特に問題は無い。
要は端株のある株式を分割することで、電子化後でも無くならないようにするのが一連の「株式分割と単元制導入」をしている企業の意図。なお端株が分割して増えた分は権利が失われることはないが、単元の調整がない以上、引き続き取引単位以下の株式に違いはない。当然、それ単独では取引所での売買はできない。企業自身に買取・買い増ししての単元化を処理してもらうか、証券会社で同様の処理(S株・ミニ株などを購入し単元株にするか、元端株の単元未満株を売る)をした方がよいだろう。もちろんそのまま放置するのもひとつの手立てだが。
これら一連の動きは証券会社・企業側が勝手にやってくれるので、株主はなんら手をわずらわせることはない。2009年1月5日に自分の口座を見て驚かないように心構えをしていればよい。
また、【三菱UFJ(8306)、1000株に分割し100株を1単元とし、投資単位を10分の1に引き下げ】にもあるように投資単位そのものが引き下げられ、売買しやすくなる場合や、【1単元が100株に統一、その時株主優待はどうなる!?】で指摘しているように株主優待制度が改善される可能性もある。今後の各企業のIR、そして【株主優待・単元速報】を注意深く見守るようにしよう。
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