1.権利確定直前の購入は避ける
権利確定が近づくと、「短期間保有で優待を手に入れよう」と考える人が増える。当然、買い機運がじわじわと上昇してくる。株価は売り方と買い方のパワーバランスで決定するから、買い方が増えれば自然に値はつり上がる。もし「この銘柄で株主優待を手に入れたいな」と思ったら、早めに(出来れば権利確定の数か月前に)最低でも必要株数だけ手に入れておこう。

2.確定前後の動きを読む
「優待渡り」(優待銘柄を権利確定直前に買って権利確定し、その後はすぐに売って現金化し、別の優待銘柄の購入に当てる)や、「もうここの優待は今回でオシマイ」とばかりに、まるでボーナス受給直後に辞める会社員のごとく権利確定後に売り抜ける株主などの動きから、通常は権利確定後の株価は大きく値を下げる。配当もある銘柄ならなおさら。権利確定直前ごとに急上昇し、確定後に大きく下げるパターンを繰り返す優待銘柄も多い。

権利確定直前まで上げて、確定後は大きく下げる。その繰り返し

この場合は当然、権利確定直後の大きな下げを狙って買えばOK。多めに買っておいて、次の確定直前の上昇時に売り、確定益を得るのもあり。優待と一緒に少なからぬ確定益も得られるかもしれない。

3.銘柄毎のくせを読む
優待銘柄の中には、独特の株価パターンを持つものもある。原則的には「2.」のパターンを踏襲(とうしゅう)しているのだが、権利確定直前には逆に下げるというものだ。これは「2.」を先読みし「権利確定直前に買い込む人が増えて値が上がるだろうから、さっさと売りぬけて譲渡益を手に入れよう。配当や優待など要らないネ」という人が増え、結局売りに負けてしまうというもの。

2008年4月末のHuman21(8937)の例。権利確定最終日は4月23日だが、直近の高値はその2日前の21日。

優待そのものが欲しい人でも「あらかじめ多めに株数を確保しておいて、一部は権利確定前の株価上昇時に売りぬけて……」と考えている人もいるはず。その場合、このような「クセ」を持っている場合もあることを考え、事前にその銘柄のクセを調査しておこう。

同様に、権利確定後、逆に値を上げる銘柄もある。この場合、配当も優待も手に入り、株価も上がって一挙両得(とはいえ売らないのなら「両得」にはならないが)な気分になれる。どの銘柄が、とはここでは言及しないが、そのような「クセ」を持つ銘柄が存在するのも事実だ。もし見つけることが出来れば、見つけた人にとっての「お宝銘柄」になるのだろう。

4.パターンが崩れる場合もある
「1.」から「3.」のような定石パターンを取る優待銘柄は多い。しかし昨今の金融市場の激変や、個々の企業の動向次第で突然このパターンが崩れる場合がある。

安楽亭(7562)の場合。優待権利確定直前までじわじわと値を上げ、確定後は急速に落ちる定石パターンだったが……

有名な事例を一つ。焼き肉屋チェーン店の【安楽亭(7562)】。権利確定ごとに同じような値動きを繰り返し、優待狙いの人も値幅狙いの人にも美味しい銘柄だったのだが、去年8月の「サブプラショック」以降調子がおかしくなった。

同社の株主構成比を見ても外資系ファンドの姿は無く、彼らが直接換金目的で同社株を売ったようには思えない。むしろ一連の大幅株価下落で損失を受けた個人投資家が、比較的下落の少ない同社株を早めに現金化して他の株の損失の穴埋めをしようとした「連鎖売り」が考えられる。また、昨年11月以降のリストラ進行の遅れや下方修正による財務への懸念も一因なのだろう(今年3月以降の急落の原因は不明。類似業種の某銘柄が急落したことによる連鎖売りの可能性はある)。

このように、外部要因や「大人の事情」、さらには原因不明の事由により、突然パターンが崩れる場合がある。購入タイミングには十分に注意されたい。

いずれにせよ、定石・パターンというものはいつか必ず崩れるもの。それらを上手く使いこなすことはもちろん、万一「パターンから外れる」傾向(事業の改変や財務の悪化、配当の無配化など)が見受けられたらすぐに対処できるような機動力、臨機応変さを持つ事が、株主優待メインの投資家にも求められることだろう。

今記事は6月までにオープン予定の新サイト向けのものを加筆修正したものです。新サイトそのものは完成次第お知らせします。お楽しみに★