「全国民の所得額大公開」→猛抗議とアクセス過多で即日中止

2008年05月03日 12:00

ユーロイメージ【BBC NEWS】が伝えるところによるとイタリアの国税当局は4月30日、イタリア国民の全申告所得額をインターネット上で公開したことが明らかになった。同サイトへは有名人やスポーツ選手、果ては隣人の所得を知りたい人たちによるアクセスが殺到し、サーバーは一時ダウン。その前後、あらゆる方面から非難が殺到し、結局一日も経たずして今サイトは閉鎖されてしまった。国税当局側では「納税率が低いことへの対処策と情報透明性の確保のため」と説明しているが、単に反発を招いただけに終わってしまったようだ。

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ある日突然、同僚やお隣さんの所得を知る事ができたとしたら……?
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今回の「究極の情報公開」は先の上下院総選挙で、中道右派のベルルスコーニ前首相率いる「自由国民」を軸とする中道右派が勝利し、敗北が決まった現政権の「民主党」中心の中道左派政権が行った最後の政策の一つ。

イタリアでは2007年の1年だけで国内総生産(GDP)の7%に相当する945億ユーロ(15兆3000億円、政府報告書)にも及ぶ所得税未納という現実がある。この事態を解消する「ショック療法」として実施されたのが、この「全国民の申告所得額のインターネット上での公開」。つまりこの情報公開によって、近所に身振りが良いのに異常に納税額が低い人がいる場合、その人が脱税をしている可能性があることが分かるわけだ(暗に通報する事を奨励しているようにも見える)。さらに情報の公開性をアピールする意味合いもあったようだ。

公開データは実名入りで2005年における申告所得額、課税額が記載され、地域別に閲覧が可能となった。しかし野次馬根性的に有名人や自分の知り合いの所得を知りたい人たちによるアクセスが殺到。ほとんど閲覧は不可能な状態となり、まもなくサーバーはダウン。さらに「この情報公開はプライバシーの侵害にあたるだけではなく、犯罪者を利する行為にもなる」という抗議も続出。結局個人情報保護当局が介入し、公開中止を勧告。サーバーがダウンしたまま公開そのものが終了してしまった。

経済・財務大臣のVincenzo Visco氏はこの「究極の情報公開」について「世界ではすでに常識なことをやっただけ。1月にはすでにシステムは完成していたが、選挙期間中は論議を避けるためにあえてリリースを遅らせていた」と説明。評論家の中には「新政権に権限を委譲する直前にこのような事をしでかすとは、自分達の権威を再確認させるためのものか、それとも単なる新政権への嫌がらせなのか」と推測する者もいるという。

日本でもかつて「長者番付(高額納税者公示制度)」という、多額の所得税額(当初は収入額)を公開する制度があった。しかし犯罪抑止の観点や公示逃れが脱税と税務当局に認識されたこと、そして個人情報保護法の施行などの理由から2005年には廃止されてしまった。

経済・財務大臣の主張するように「究極の情報公開」に違いなく、多額の所得税滞納という現実においては、一つの解決策といえる。確かにその面の効果はあるのだろう。しかし実際には【イソップ童話の「きつねとぶどう」】のように、今回の「情報公開」は政権末期の中道左派政権における「すっぱいぶどう」でしかなかったのかもしれない。「ふん。情報公開は、まだイタリア国民には時期早々なのさ」とでもいわんばかりに。

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