イギリス海軍の新型空母、2隻で8000億円ナリ
2008年05月22日 08:00
イギリス海軍は5月20日、2隻の新型空母を建造すると発表した。クラス名は「Queen Elizabeth」級で、艦名は「HMS Queen Elizabeth(クイーン・エリザベス(女王陛下の意味))」「HMS Prince of Wales(プリンス・オブ・ウェールズ(皇太子の意味))」が予定されている。2014年と2016年にそれぞれ就航予定で、それ以降半世紀にわたってイギリス海軍の主力戦力として活躍する予定。同艦はこれまでイギリスで建造された中でもっとも大きな空母としても注目を集めている(【発表リリース】、【関連記事:DailyMail】)。
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イギリスの新型空母・Queen Elizabeth級(イギリス海軍資料)
「海上を移動する軍用飛行場」として、運用コストは高いものの非常に使い勝手のよい空母(航空母艦)だが、その運用にはさまざまなノウハウが求められ、効果的に活用できる国は案外少ない。ヘリコプター空母ではなく航空機の離発着ができる空母(軽空母含む)は、アメリカを除けば、フランス、ロシア、ブラジル、タイ、イタリア、スペイン、インド、そしてイギリスくらいなもの(余談ではあるがかつてドイツ海軍も空母を保有していたし、もちろん日本海軍も太平洋戦争時はアメリカに続く空母大国であった)。
現在イギリスでは垂直離着陸機のシーハリアーを運用する軽空母を保有しているが、今回発表された新型空母は固定翼機が運用できる大型の正規空母。イギリスの国防大臣もこの空母計画に対し「今後数十年間において、イギリスの国際軍事における能力を支えるに違いない。そして彼女らは平和維持と紛争防止に活躍するだろう」とコメントしている。
主なスペックは次の通り。
・排水量……6万トン(2万トン)
・全長……280メートル(210メートル)
・搭載機……48機(16機)+ヘリコプター
・搭乗員……1200人(1050人)
・機関……ガスタービンなど(ガスタービン)
※()内は現在イギリスが運用している軽空母インビシブル級
DailyMailによる図解。数十年前の週刊誌に掲載されたカラーの巻頭付録のようだ
搭載機は今のところアメリカとヨーロッパが共同で開発しているJSF・垂直離着陸機(F-35B)が搭載される予定。
特徴的なスタイルとしては「艦橋」が2つあること。それぞれ通常の艦橋と、航空管制専用のコントロールタワーとして位置づけられている。説明ではこのスタイルの採用によって「甲板スペースをひろげると共に、甲板上の乱気流発生を防ぐ効果がある」としている。
「軍の最大の敵は国内予算」という言葉にもあるように、DailyMailでも空母本体だけで40億ポンド(8000億円)、その他艦載機もあわせた各種装備品を含めると100億ポンド(2兆円)に及ぶであろう調達額は、「あるいは空母の予算確保のために駆逐艦やフリゲート艦、潜水艦の予算すら削減されてしまうかもしれない」など大きな論争を巻き起こすだろうと懸念している。
完成は早くても6年後。国家財政そのものが厳しい事情もあるが、いかに空母の建造には時間がかかることが分かる(促成のものならともかく)。6年後、大海にその姿を見せるころ、イギリスの国際的ポジションはどのように変化し、そして「女王陛下」はいかなる任務に就くことになるのだろうか。
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