2008年4月分の景気動向指数・現状も将来も悪化傾向強まる
2008年05月13日 06:30
内閣府は5月12日、2008年4月における景気動向の調査こと「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。それによると、各種DI(景気動向指数)は相変わらず水準の50を割り込んでおり、さらにすべての値で昨月より悪化している。基調判断は先月同様に「景気回復の実感は極めて弱い」であり、また先行き判断が先月からさらに悪化しているなど予断を許さない状況にある。(【発表ページ】)。
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●現状も将来も不安傾向
文中・グラフ中にある調査要件、及びDI値についてはまとめページ【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】上ので解説済み。そちらを確認してほしい。
4月分の調査結果は概要的には次の通り。
・現状判断DIは前月比マイナス1.4ポイントの35.5。
→3か月ぶりの低下。「悪化」「やや悪化」が増えている(※再下落の雰囲気?)
→家計はガソリン価格の低下も身近な商品の値上げに打ち消されることでネガティブに。企業は原油・原材料価格の高騰が続く。しかし一部の製造業は堅調。雇用は新規雇用減少傾向が続くことで下落。
・先行き判断DIは先月比マイナス2.1ポイントの36.1。
→先月からマイナスが続く。
→身近な商品の価格上昇、原油などの上昇による消費意欲減退。雇用調整への懸念。
●反転の兆しもついえて先行きは再び下落へ
それでは次に、それぞれの指数について簡単にチェックをしてみよう。まずは現状判断DI。
景気の現状判断DI
家計動向関連は押しなべて軟調。しかしやや切り返しを見せていた住宅関連が、このような中では一番下げ率が低い状態に留まっている。また、企業動向関連では製造業が堅調に推移し先月比でプラスを維持。雇用関連の下げ率もキツい。
続いて景気の現状判断DIを長期チャートにしたもので確認。
2000年以降の現状判断DIの推移(赤線は当方で付加)
現時点ですでにITバブル崩壊後の不景気時期にあたる2002年~2003年(日経平均株価が7000円台を記録)の時期の水準に近いことは先月来からの通り。2月から見せた反発の兆しも今回発表の4月分で再び下落し、冷や水をかけられた雰囲気。2003年初頭のようなもみ合いになるのか、それとも俗に言う「二番底」をつけるために大きく下落傾向を見せるか、今のところは不明。
・「雇用と全体の下落逆転」を
大きく確認。
→真の底打ちに向けた動きか
注意すべきなのは今年に入ってから指摘しているように「前回(2001年~2002年)の急落時には、家計や企業、雇用動向DIにぶれがあったのに対し、今回の下落では一様に、しかも急速に落ち込んでいる」こと。一方これまでの傾向として見られた「直近の最底値の際には雇用関連の指数が全体指数より下側に大きくクロスして落ち込む傾向」が3月では小規模ながらも見られ、今回発表された4月分ではその幅が大きくなったことが注目に値する。反転が行く先に期待できる「大底」時に見られる「全体指数より雇用指数が下回る」現象が確認できたことは心に留めておく必要がある。もっともそれは同時に、今後さらに数字が悪化する可能性も示唆しているのだが……。
景気の先行き判断DIについては、先月同様現実認識より悪い数字が出ている。特にサービス関係の下落が著しい。一方で悪化が叫ばれている小売はプラスに転じている。
景気の先行き判断DI
企業動向は横ばい。資源・原油高の中で「もうこれ以上悪くなる事はないだろう」というあきらめか、あるいは商品価格などに現状を反映させることができたからか……。
2000年以降の先行き判断DIの推移
「現状判断」が連続して伸び、今回分で下落したのに対し、先行きでは反落した3月に続き、今回発表の4月分も下落が続いている。どうやら先月以降繰り返しているように、2001年頭のように微妙な上昇をしたあとに急速に下落する、というパターンを踏襲しそうである。2003年以降よく見受けられるようになった上昇・安定時の傾向「雇用指数が全体指数を大きく上回る」がまだ確認できず(それどころか大きく悪化している)、クロス・逆転もまだ起きていないので、先行き判断指数から見ると「直近における景気感の底打ち」は先送りになりそうだ。
発表資料には現状の景気判断・先行きの景気判断それぞれについて理由が詳細に語られたデータも記載されている。簡単に、一番身近な家計に関して事例を挙げてみると、
・4月は前年同月比110%と観光客の利用が増加している。ゴールデンウィーク前半戦は
前年割れだったが、直前になって持ち直してきた(レンタカー)。
・客との会話では、レジャーや買物などをあまりしていない様子である(美容室)。
・天候要因以外に大きな材料がなく、ガソリンの値下げも特に追い風とはなっていない(その他レジャー施設)
・4月に入り、客は一気に生活防衛に走っている。いつもならばにぎわう年金支給日も、今月はほとんど活況が無い。ボリュームゾーンであるミセスの客層も、何度も吟味を重ね必要最小限の物しか買わない傾向が強い(百貨店)。
・「この商品は以前いくらだったのに、何もかも高くなって」という客の声が多く聞かれ、商品の値上がりへの意識がかなり強く、買い控えにつながっている(スーパー)。
など、先月以上に物価上昇など現状を認識し、消費者が苦しいながらも節約に努めている様子が分かる。期待された「年度・季節の変化による消費活動の活性化」「ガソリン税の暫定税率の期限切れの影響」も、他の物品の価格上昇で影に隠れてしまった(あるいは相殺された)形。
今調査は一か月毎に発表されるので、当然ながら前回の調査結果から一か月が経過したことになる。不景気要因の「資源高騰という外部要因」「雇用形態の違いによる消費者の財力の減退(内需を支える力の不足)」という問題は相変わらず山積し、原油高が留まるところを知らない状況にあるのをはじめ、悪化する状況が見られる。4月分は現状認識すらマイナスに転じてしまい、「これ以上は悪くならないだろう」という期待感が「やっぱり値上げが相次いでもっと大変になったのね」という不安感が増加した事が分かる。
金融市場の信用不信や不安定感などから株価は低迷したままで、商品価格の上昇もさらに今後引き続きそうな気配を見せている。直近における経済の見通しはけっして明るいものではない。それらを解決してくれるはずのお役所や政治家も、体たらくばかりが次々と明るみに出て、端から見れば「もっと他にやるべき事があるだろう」といった行為ばかりが繰り返され、不信感がつのっている。世界経済のターニングポイントは今年の半ば頃といわれているが、それまでには少なくとも安定した状態を作り、状況の変化に「敏速に対応」できるような状況になるよう望みたいものだ。……一度「大再編」をしないとこの硬直化状態からは抜け出せないのかもしれない。
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