2008年3月の新設住宅戸数、前年同月比15.6%減・昨年末水準まで逆戻り

2008年05月01日 08:00

住宅イメージ国土交通省は4月30日、2008年3月における新設住宅戸数のデータを発表した。それによると3月の新設住宅戸数は前年の同月比で15.6%減の8万3991戸に留まり、9か月連続して前年同月比で減少したことが明らかになった。先月と比べると前年同月比のマイナスポイントの割合が増加し、昨年末の基準まで後退した形。先月の「底打ち・踊り場」感から、再び軟調な雰囲気が見受けられる(【発表リリース、PDF】)。

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具体的な内訳は持家が6.1%、貸家は22.0%、分譲住宅は18.0%の減少。貸家は民間・公的資金共に大幅な減少を見せており、分譲住宅ではマンションの下落率が著しい。昨月までの数か月間に渡る「堅調な回復感」が半ば台無しになってしまったようなものだ。また地域別では特に近畿圏の軟調さ(前年同月比24.5%減)が気になる。

改正建築基準法の施行、そしてそれに伴う行政側の準備不足・不手際(特に「大臣認定プログラム」や審査担当者絶対数の不足)が昨年夏以降の住宅市場における混乱と、新設住宅戸数の減少をもたらしているのはいうまでもない。今冬以降改善の兆しが見られつつあるが、いまだに昨年の水準にまでは回復していないのが現状。さらに市場価格の大幅な値上げ(業者側の出し惜しみ以外に、材料費や工賃などの経費の増加)や、建築許可までにかかる時間が長くなってしまったことが、需要をしり込みさせているという指摘もある。

新設住宅戸数の変遷
新設住宅戸数の変遷(2008年3月分まで)

グラフや各種データを見る限り、激減した8月分からほぼ横ばいに推移していたデータも10月分からは上昇傾向を継続している。今回発表された3月分は先月発表時のデータ中「建築確認件数」による「嫌な予想」が的中してしまったことになる。最悪の時期を脱していることに違いはないが、基準的には昨年末まで逆戻りという形に。

幸いなのは着工床面積概要。前年同月比は3.1%減となり、2月の15.0%から下げ幅を大きく減らしている。これは居住用が9か月連続して12.7%の減少となったものの、非居住用が15.7%の増加と9か月ぶりに増加に転じたのが要因。中でも事務所用が85.3%増なのをはじめ、工場・倉庫共に9か月ぶりに増加しており、昨月減少した店舗用も再び22.8%増と増加に転じている。

耐震強度偽装問題を教訓にした
「改正建築基準法」の施行

・行政の不手際などで
新築戸数などが激減
・今夏で底打ち。
本格的な再上昇の気運強まる
・3月再び下落・失速感?
非居住用は大いに堅調

国土交通省では同日、住宅着工に一か月ほど先行するといわれている建築確認件数も発表している(【「最近の建築確認件数等の状況について」発表リリース】)。これによると今回発表された3月分データでは14.8%マイナスとなり、2月分データの5.5%からさらに大きく悪化している。「構造計算適合性判定の合格件数は大幅に増加し初めて2000件を突破」とリリースにあるが、気休め程度にしかならない。

国土交通省から今回発表されたデータは、先月同様改正建築基準法施行の影響の大きさを再認識させる。そして秋以降最悪期から順調に立ち直りつつあったものの、3月は言葉通り「失速」してしまった様相を見せている。【改正建築基準法で影響を受ける周辺業界たち】でも触れたように、需要側の購買力低下や原材料費の高騰という「絶妙な」タイミングにあわせての問題発生ということもあり(特に今年に入ってからの急激な値上がり)、建設業そのものだけでなく周辺業界への影響も深刻さは否定できない。

他の原因もあれど、今夏以降の不景気感の一因は建設業界の問題にあり、それが周囲業界の足を引っ張っていた形。しかし今度は逆に、回復基調にある建設業が日本全体の不景気に足を引っ張られ、回復がもたついているという見方もできる。さらに外部的要因が互いに作用・後押しする形となり、まさにネガティブスパイラル状態になる可能性すら否定できない。

建設業界においては4月の「暫定税率」問題で、一番の受注かきいれどきである春先において公共事業が多くの自治体で足踏みしてしまい、経営不振におちいる企業が後を絶たないという話も耳にする。決算を発表した上場企業のレポートにも「契約の取りやめ」「値引き交渉の激化」という文言を多く見かけるようになった。今後も定期発表される当データを注意深く観察し、動向を見守る必要があるだろう。

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