【更新】金融庁、国内全証券会社に「内部管理徹底」を要請
2008年04月29日 12:00
[読売新聞]などが伝えるところによると金融庁は4月28日、日本国内の全証券会社約300社に対し、内部管理の徹底を文書で要請した。【野村證券(8604)】の元社員(事件時は社員・4月22日付けで解雇)による大規模なインサイダー取引事件が発覚したことを受けての措置。
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今事件は野村證券の中国籍の元社員が、自分の所属する企業の合併や買収(M&A)部門(企業情報部)の立場を悪用。配属された直後から内部情報を用い、複数の知人名義で開設した証券口座を使ってインサイダー取引を繰り返し、合わせて21銘柄・1億8000万円に登る取引を行い、5000万円もの不当な利益を得ていたというもの。有名どころでは日本初の大手企業のによる敵対的TOBで話題となった【王子製紙(3861)】や、【味の素(2802)】によるカルピスの子会社化、さらに【エーザイ(4523)】の株式交換などが名を連ねている。
今件については王子製紙が「証券会社で企業情報に携わる人たちがインサイダー取引をおこなうのは絶対に許し難い(篠田社長談)」と野村との取引関係を見直すことを決算発表の中で明らかにするなど([日経新聞])、大きな波紋が広がりつつある。
証券業界を統括する金融庁側でも、今件については聞き捨てならぬものであると判断。直接対象となる野村だけでなく、全証券会社に対し、
1.法人関係情報を入手できる役職員による株取引の実態
2.社内の情報管理体制
3.役職員の株取引に関する社内規則の内容
4.法令順守の徹底のための研修の実施
5.類似事案が発生しないための措置
の5点について、社内体制を確認し、必要ならば適切な措置対策を取るよう求めたという。
これらの措置を見て気がつくのは、「証券関連の情報を取り扱う部署・業務なら知っていて、あるいは実施していて当然のこと」であると同時に、先のNHK職員によるインサイダー事件でも改善点として持ち上がった要件に似ていること。「基本的なことすら守られないのか」と言ってしまえばそれまでだが、それが事実であったことが分かる。
証券取引が手軽に行え情報が容易に入手できるようになるのと共に、多額の資金が目の前で簡単に動く昨今では、誘惑に駆られやすい状況にあるのは理解できなくもない。しかしそれを制して仕事を続けるからこそ、彼らはプロとしての立場を維持しつづけ、さらに高い給金をいただいている。そして利用者も彼らの仕事に期待し、信用をしている。
今件は単なるインサイダー取引という事象に留まらず、「天下の」という冠すらつけられる野村證券の中枢部の社員が、しかも(まるで意図的・計画的であるかのごとく)部署配属直後から問題行為を繰り返し、隠ぺい工作も綿密に行っていたことなど、多くの点で(不法行為なことはもちろん)顧客の信用を裏切っていたことが分かる。
該当者には厳正な対処をするのはもちろん、各証券会社は金融庁の指導に従い、「プロがプロ足りえる」体制を維持するよう徹底してほしいものだ。
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