人と環境にやさしい「だるま落し」・鹿島が新ビル解体工法実用化

2008年04月28日 06:30

だるま落しイメージ【鹿島(1812)】は4月22日、中高層ビルを下の階から解体する「だるま落し」のような工法「鹿島カットアンドダウン工法(KC&D工法)」を開発し、現在進められている鹿島の旧本社ビル2棟(地上20階・高さ75メートル、地上17階・高さ65メートル)の解体工事に世界で初めて採用したと発表した。ビルの下の階から順次各階を解体するもので、地上レベル付近だけで解体作業を行うというもの(【発表リリース】)。

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「鹿島カットアンドダウン工法」イメージ
「鹿島カットアンドダウン工法」イメージ

この「だるま落し工法」こと「鹿島カットアンドダウン工法」では建物を支える基礎部分と上部の構造が、「だるま落し」をする地上付近の解体作業階で切断された状態になる。するといわば建物の「背骨」が寸断され、作業中に地震が起きると建物そのものが転倒する可能性が出てくる。そこで建物内部に「コアウォール」という補強を行うなどして、安全性を確保する。その上で「ジャッキで固定」「地上に近い作業階を解体」「ジャッキを降ろして上層階を降ろす」「新たに出来た作業階を解体」を繰り返すことになる。

解体時に行われる補強「コアウォール」
解体時に行われる補強「コアウォール」

これまでビルの解体には上層部から順に(上に重機を運ぶなどして)壊す方法が用いられていた。今回発表された「だるま落し工法」こと「鹿島カットアンドダウン工法」による解体方法によって

・解体作業フロアが下層部に限定するため、騒音や粉じんなどの措置が固定化できるため、環境への影響を軽減できる(粉じんは3割減)。
・特に市街地での解体工事では近隣への不安感を抑制できる。
・解体で生じる廃材のリサイクル化もしやすい(リサイクル率が50%から90%前後に向上の見込み)
・作業の地上付近での集中化で、高所での危険性が減るため安全性が高まる。


などのメリットがある。

解体工事にかかる費用はさすがに現状では他工法と比べて割高だが、今後の技術開発次第でさらに安くできるとのこと。また適用対象としている建物は、20階建て程度の鉄骨造ラーメン構造だが、今回の鹿島の旧本社ビルへの「鹿島カットアンドダウン工法」による解体工事で得られる技術的知見を収集し、環境配慮・施工効率の向上、コスト低減など、本工法の更なる展開を図り、実用性を高めていく。

従来は煙突や鉄塔などの工作物の解体に適用されていたこの解体工法、写真にあるように一定の高さにまで低くならないと、解体工事をしていること自体気がつかれない可能性すらある(遠くから見た場合)。発想としてはありがちだが同時に非常にユニークで、実践するとなると色々なノウハウの蓄積が必要とされるこの技術、今後は周囲の環境を気にする必要があるビル密集地帯(例えば東京23区の「都心3区」など)での解体工事で歓迎されるに違いない。


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