「ウォーレン・バフェットの憂鬱」
2008年04月23日 12:00
[このリンク先のページ(Cnn.co.jpなど)は掲載が終了しています]の中に、かのウォーレン・バフェット氏に関する興味深い話が寄せられていた。バフェット氏と学生との対談の語録から抽出されたものだが、その中でサブプライムローン問題に始まる昨今の(とりわけアメリカにおける)金融市場不信や不景気の状態に関するコメントで「我々はまだしばらく不況を体験しなければならないだろう」と語っているのである。
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バフェット氏が自社バークシャーの株主総会で株主と熱心にやり取りをする事はよく知られているが、同時に年15回ほどビジネス専攻の学生グループを招待し、2時間ほどの歓談の場を設けることでも有名。バフェット氏は質疑応答に応じたあと、学生を伴ってレストランに足を運び、そして最後に学生らと記念写真を撮るのだという。
その質疑応答の中で、もちろん話題に登ったのが今アメリカ(など)が置かれている住宅ローン問題に端を発する金融不況問題。アメリカの金融市場が競争力を失っているのではないか、大統領選挙に関してどう思っているのか、5月から始まる減税政策が景気に良い影響を与えるか、投資判断をどうやって得ているのか(ちなみにこの質問へは「ただただ読む事。一日中読む事。特に年次報告に目を通すこと」とバフェット氏は答えている)など、多種多様な質問を学生が行い、バフェット氏が自分の考えを述べている。相手が将来を担う学生諸子であるだけに、バフェット氏自身もいつもより饒舌のようだ。
中でも気になる質問が「The scenario you're describing suggests we're a long way from turning a corner.」というもの。要は「あなた(バフェット氏)が説明している話だと、我々はいまだ景気後退の道半ばでしかなく、景気後退から回復への転換点はまだ先だというように聞こえるのだが」というもの。それに対しバフェット氏は「その通りだと思う(I think so.)」と答えている。
さらにこの質問へのバフェット氏の回答は続く。
皆は「この不況は短期間でそれほど深刻ではない」と多くの人が言っているが、私はそうではないように思える。
(I mean, it seems everybody says it'll be short and shallow, but it looks like it's just the opposite. )
知っていると思うが、元々事態が自然に反転するには、多くの時間と痛みを伴うもの。
(You know, deleveraging by its nature takes a lot of time, a lot of pain.)
そして結果というものは終わってみるまで分からないし、その過程では終わりを予測する事は難しい。
(And the consequences kind of roll through in different ways. )
だから私自身は今、マクロ経済学の予想に基づいてはほんの一銭も投資していないし、他の人もマクロ経済の予想に基づいて株を売ったり買ったりしない方が良いと考えている。
(Now, I don't invest a dime based on macro forecasts, so I don't think people should sell stocks because of that. I also don't think they should buy stocks because of that.)
後半部分は多少訳が怪しいところがあるが、要は「現在はまだまだ景気後退中の真っ只中にある」「このような状況では特に先を読むのは難しいので、'株'を売ったり買ったりするのは望ましくない」というところ。
またバフェット氏はCDOやCDSなど俗に言う「金融三文字商品」や不動産担保商品などに対し、「(自分は注目した'商品'をひたすら読む事で判断している。だから)対象が分散され混ぜ合わされたCDOの中身が投資に値するか否かを判断するには、分割されている資産すべてをチェックしなければならない。それこそ1万5000ページやら75万ページもの報告書に目を通す必要があるだろう。そんなこと、私に出来るわけがあるまい」「大手の金融機関ですら把握できないのだから、一投資家が分かることなど無理」と一笑に付し、暗にこれらの金融商品への懸念と忌避を語っている。
世界一の資産家とはいえ一投資家の考えがすべて正しく、的中するとは限らない。とはいえこれだけの経験と実績を持ち、それらを築き上げてきた知恵と判断力を兼ね備えている人の言及であるだけに、耳を傾けることは決して間違った話ではないと思われる。
それと同時に、昨今においてバフェット氏がペトロチャイナの持ち株を売り抜け、株式ではなく債権に注目したり企業を丸ごと買収する方向に目を向けているのも、氏自身の根本的な戦略に基づいたものであることも理解できよう。
……個人的には先にCDS関連の解説記事を書いたときに相当頭を抱えた経験があるので、「三文字商品」に対する「一投資家が分かることなど無理」には激しく同意したいところではあるが(笑)。
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(最終更新:2013/09/07)
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