ビタミン剤は寿命を縮める「おそれ」
2008年04月17日 19:50
今や食事やお菓子、ファストフードなどと同列に店頭に並べられ、口にされるようになったビタミン剤などのサプリメント。気軽に必要な栄養分を接種できるのが最大の売りだが、デンマークのコペンハーゲン大学の研究者によれば、サプリメントの摂取が寿命を延ばすどころか縮む恐れがあることを明らかにした。化学的に合成された抗酸化剤(要は老化防止剤)のサプリメントに対し「寿命を延ばしたという説得力のある証拠(no convincing evidence)を見つけられなかった」どころか、ビタミンAやビタミンEのサプリメントについては人間が元から持っている(病気に対する)防御力を減らしてしまうと伝えている(【該当ページ、BBC News】)。
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ビタミン剤の摂取は主に不足しているビタミンを補充すると共に、細胞の酸化ストレスを予防し、老化を防ぐ働きを持つといわれていた。また、この効果は老化だけでなくがんや心臓病にもポジティブに働くといわれている。
コペンハーゲン大学の研究グループは23万3000人を対象に行われている。その結果、ビタミンA剤では寿命を縮める可能性は16%増加し、ベータカロチンでは7%、ビタミンEでは4%の増加が認められた。また、風邪を引いたときに(レモンなどで)よく飲まれるビタミンC剤については、予防効果は確認できなかったという。
この研究結果を受けて研究グループでは
「主要、あるいは副次的な予防・防止効果をビタミン系のサプリメントからみつけることはできなかった」
"We found no evidence to support antioxidant supplements for primary or secondary prevention."
とコメントしている(ちなみに各種ビタミンそのものが摂取できなかったわけではない)。
この研究結果を受けてイギリスの保健省スポークスマンは「食事で得るべきビタミンは食物から摂るべきであり、大量のビタミン剤から得るのは避けるべき。ビタミンのサプリメントは代用品ではないのだから」と呼びかけている。
一方元記事では、サプリメント販売会社から資金を供給されているHealth Supplements Information Service(「健康的なサプリメント情報サービス」とでも訳すべきか)のスポークスウーマンPamela Mason嬢の言葉を研究結果に対する反論として併記している。彼女いわく「人々の多くは食事だけでは、体が必要とする栄養素のすべてを摂ることは絶対に不可能だ」「それら食事を上手にとれない人たちにとって、ビタミンサプリは非常に便利なもの足りえるし、摂取を止めるべきではない」とし、サプリメントの重要性を訴えているとのこと。
また別の栄養学者Patrick Holford氏も「今回の研究結果は死亡率のみに注目して、他のメリットをないがしろにしたものだ」とコメントすると共に、「抗酸化剤サプリメントは特効薬ではないのだから、飲んだだけで不健康な体を健康状態に戻せるものではない。ただし、禁煙を心がけて適切な運動と食事をとり、その上で適切量を摂取すれば、抗酸化剤は健康維持と促進に重要な役割を果たすことになる」と主張している。
ちなみにイギリスだけでサプリメント市場は年間3.3億ポンド(663億円)に相当するという。
要は「サプリメントで各種栄養分は取れるかもしれないけど、抗酸化剤による寿命を延ばす効果はないどころか逆に縮める可能性があるよ。体の抵抗力を弱めるかもしれないよ。だからビタミンはサプリメントじゃなくて食べ物から摂ろうね」という研究結果に対し、イギリス当局が「サプリメントは代用品じゃないんだから、食事をしっかりとりなさい」と警告を行い、サプリメント関係者が「そんなことはない。サプリメントは体に有益だ」と反論している次第。
最後のPatrick Holford氏の主張には「禁煙や運動、適切な食事を摂れば、そもそもサプリメントなど必要ないのでは? その状態を維持して長生きしてもサプリメントによるものかどうかは分からないのではないか??」という突っ込みをしたくもなるが、状況は人それぞれなので一概に「違う」「そうだ」とは言い切れないだろう。
ともあれ一つ確かなのは、サプリメントとて薬の一種(のようなもの)に違いないこと。イギリスの保健省が述べているように「サプリメントは食事の代用品ではなく、体に何か異変が起きた時、食べ物では摂取できない時に服用する」ものと考えるべきだろう。
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