言葉の意味も含めて考えよう・チャレンジしてみたいと思う「貯蓄」方法ランキング
2008年04月15日 06:30
検索エンジンgooにおいて実施されていた【チャレンジしてみたいと思う貯蓄方法ランキング】の結果発表が行われ、第一位には「株(長期取引)」がついた。ランキング上位陣の顔ぶれだけでなく、設問の方法もあわせ色々と考えさせられる内容といえよう。
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今調査は2月21日から22日、gooリサーチのモニターに対してアンケートを行い、その結果を集計したもの。具体的な日数や集計母数は掲示されていない。
今回いつもの「gooランキング」のデータを元にした記事と見出しや冒頭部分の言い回しが多少違うのは、設問そのものに少々問題があるため。設問では「チャレンジしてみたいと思う貯蓄方法ランキング」とあるが、選択肢に挙げられているもの、上位から「株(長期取引)」「株(短期取引)」「金・プラチナ」「外貨預金」「FX」「ミニ株」「投資信託」果ては「外貨MMF」にいたるまで、事実上「貯蓄」ではなく「投資」(「投機」なものすらある)。
問いの「貯蓄」という言葉は【goo辞典】によれば「金銭をたくわえること。また、たくわえた金銭」。他のオンライン辞書でもほぼ同じで、
goo辞典……「金銭をたくわえること。また、たくわえた金銭」
【ヤフー辞典】……財貨をたくわえること。また、その財貨。/所得のうち、消費されないで残った部分。
【エキサイト辞典】……金銭をたくわえること。また、たくわえた金銭。/たくわえること。また、そのもの。
とあり、要は「ツボや豚の貯金箱に貨幣を積み増すかのごとく、お金などを貯めていくこと」を意味する。この言葉「貯蓄」に「元本が損なわれる」リスク性は無い。貯金箱に入れていても泥棒に盗まれるかもしれないし、銀行に貯金をしても銀行そのものがペイオフの対象となるかもしれない可能性を考えれば、どんな方法でもリスクがゼロということはありえないが、それでもきわめて低リスクなものが(そして当然低リターン)「貯蓄」に該当する。
ところが今回「貯蓄方法」として選択肢に挙げられた項目のうち、「貯蓄」の言葉の意味に該当するものはせいぜい「個人向け国債」程度であり、それとて「タンス預金」や銀行・郵便局への預貯金と比べればリスクは高いといわざるを得ない。設問側はもちろん回答側も、これらの「金融商品」を「投資」「投機」ではなく「貯蓄」として考えているのなら非常に問題であるし、危険性も高いと判断せざるを得ない。
「投資」や「投機」とは
別物
なぜなら「貯金と同じように元本が損なわれる可能性はほぼゼロだよね」という考えでこれらの金融商品に手を出し、元本割れを起こした場合、当事者はほぼ間違いなく「そんなの聞いてないよ! 貯金と同じなんでしょ!!」と取引先(あるいは判断を下した自分自身)に非難をするのは目に見えて明らかだからだ。
上位についている株式も言葉の言い回し「株式'投資'」から分かるように、「貯蓄」ではなく「投資」であり、当然リターンと共にリスクも存在する。ましてや株式の短期売買やFXは「投資」よりも「投機」に近い。
「しょせん言葉のあやなのだから、そんなに気にすること無いではないか」とスナック菓子感覚にとらえる人もいるだろう。しかし金融商品取引法のこともあるし、お金周りの話については時として真剣に、まじめに考えねばならない。
今回のランキングは「貯蓄」と問い合わせた時点で正しいものとは言いかねるものとなってしまっている。むしろ「『貯蓄』と同じように考えられている、安定性が高いというイメージの強い、そして興味関心を持たれている金融商品」ランキングとみなした方がよいだろう。
一番気になるのは、百歩譲って「株式の長期投資」が貯蓄に近いイメージがあるとしても、短期売買や金・プラチナなどが「挑戦してみたい'貯蓄'」の上位に顔を連ねていること。株式の短期売買を繰り返すことで知られているデイトレーダーに対し「簡単でゲーム感覚ででき、数時間、時には数分で何百万円もの利益を挙げられる」といったイメージがあるのだろうか。もしそうだとしたら、非常に問題のある考えだと思わざるを得ない。
……と「貯蓄」「投資」「投機」の言葉の違いや、世間一般の金融商品へのイメージが分かったという観点で、今回のランキングは意義深いといえよう。
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