景気動向指数・現状はやや改善、先行きは多少悪化

2008年04月09日 19:40

景気イメージ内閣府は4月8日、2008年3月における景気動向の調査こと「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。それによると、消費者・企業・雇用関係などの各種DI(景気動向指数)は相変わらず水準の50を割り込んでいるものの、昨月よりはやや改善の兆しが見られている。基調判断は先月同様に「景気回復の実感は極めて弱い」であり、また先行き判断がやや悪化しているなど予断を許さない状況にある。(【発表ページ】)。

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現状はやや改善、将来には多少不安

文中・グラフ中にある調査要件、及びDI値についてはまとめページ【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】上ので解説済み。そちらを確認してほしい。

3月分の調査結果は概要的には次の通り。

・現状判断DIは前月比プラス3.3ポイントの36.9。
 →2か月連続の上昇。「悪化」が減り、「変わらない」「やや良くなっている」が増えた(※底打ちの雰囲気?)
 →家計は節約志向の強まりに変化が無い中、気温が高く春物衣料品が好調。企業は受注量の確保から上昇。雇用は新規雇用減少傾向が続くが一部での採用意欲がみられたことからわずかに上昇。
・先行き判断DIは先月比マイナス1.3ポイントの38.2。
 →先月プラスに転じたが再びマイナスに。
 →身近な商品の価格上昇、原油などの上昇、円高懸念。


現状は反転の兆しか・しかし先行きはネガティブに

それでは次に、それぞれの指数について簡単にチェックをしてみよう。まずは現状判断DI。

景気の現状判断DI
景気の現状判断DI

飲食・小売部門など昨今の他記事で動向が懸念されている部門でそれなりの上昇率が見受けられる。しかし改正建築基準法の混乱がおさまりつつあると思われた住宅関連の回復が鈍化しているのが気になる。

続いて景気の現状判断DIを長期チャートにしたもので確認。

2000年以降の現状判断DIの推移(赤線は当方で付加)
2000年以降の現状判断DIの推移(赤線は当方で付加)

現時点ですでにITバブル崩壊後の不景気時期にあたる2002年~2003年(日経平均株価が7000円台を記録)の時期の水準に近いことがわかる。また、2月で見せた反転の兆しが継続し、反転時期に入ったかのように見える。2003年初頭のようにしばらくこのままもみあいを続ける可能性もあるが、今のところは上下どちらに推移するかはつかみきれない。

・反転の兆し
・今回ようやく
「雇用と全体の下落逆転」を
小規模ながらも確認。
→真の底打ちか

注意すべきなのは1月・2月の際にも指摘したように「前回の急落時には、家計や企業、雇用動向DIにぶれがあったのに対し、今回の下落では一様に、しかも急速に落ち込んでいる」こと。ただこれまでの傾向として見られた「最底値の際には雇用関連の指数が全体指数より下側に大きくクロスして落ち込む傾向」が、3月では小規模ながらも見られたことが特筆に価する。今のところ誤差のレベルではあるが、底打ち反転の時に見られる「全体指数より雇用指数が下回る」現象が見られたことは心に留めておく必要がある。

一方、景気の先行き判断DIについては、先月と逆で現実認識より悪い数字が出ている。小売がわずかながらに上昇している程度。円高の進行や素材関係の値上げがとどまるところを知らない状況に対する不安感が出ているものと思われる。

景気の先行き判断DI
景気の先行き判断DI

特に飲食関係の下落が著しい。材料費の値上げでさらに客足が遠のくのではという懸念がもたらしたのだろうか。

2000年以降の先行き判断DIの推移
2000年以降の先行き判断DIの推移

「現状判断」が連続して伸びているのに対し、先行きでは反落したのが分かる。この流れをもみ合いと見るのか、再び下落傾向と見るのかは今のところ分からない。先月指摘したように、2001年頭のように微妙な上昇をしたあとに急速に下落する、という可能性も捨てきれない。2003年以降よく見受けられるようになった上昇・安定時の傾向「雇用指数が全体指数を大きく上回る」がまだ確認できず、またクロス・逆転もまだ起きていないので、先行き判断指数に限ってはまだ底には至っていない可能性も捨てきれない。

発表資料には現状の景気判断・先行きの景気判断それぞれについて理由が詳細に語られたデータも記載されている。簡単に、一番身近な家計に関して事例を挙げてみると、

・前半は低温のためにやや苦戦したが、春らしくなってくるにつれて薄手の春物が動き出している。(百貨店)
・気候が良くなり、週末の行楽客が目立ち始めている。しかし、平日のサラリーマンや外の仕事の客が、コンビニ弁当などで済ますためか減少傾向にある。(一般レストラン)
・常連客のほとんどは収入が増えず、ガソリンなどの値上がりのため、食費など日常生活の節約に努めている(スーパー)
・4月からの自賠責保険の引き下げ、暫定税率の行方が不透明なことなどで模様眺めの客が多く、商談も長引いている。不振だった前年3月を更に下回る。その中、ガソリン価格高騰を背景に、低燃費のコンパクトカーの売行きが堅調である(自動車販売店)
・今後とも続く原材料及び商品の値上げの影響は大きく、買い控えは続く。たとえ、4月からガソリン代が下がっても一時的なもので、あまり関係はない(スーパー)
・・女性客から「毎日食べるパンやドーナツを始め、値上げ商品がめじろ押しで大変だ」という声が聞かれ、婦人服の購入予算が削られる(衣料品専門店)


など、先月同様物価上昇など現状をしっかりと認識した消費者が節約に努め、消費そのものが抑えられているようすがうかがえる。また先月期待された「年度・季節の変化による消費活動の活性化」は、物価そのものの上昇で打ち消されてしまったようだ。さらにガソリン税の暫定税率の期限切れの影響(期待感)も、他の物品の価格上昇で影に隠れてしまった(あるいは相殺された)形だ。


前回の調査結果から一か月が経過したが、不景気要因の「資源高騰という外部要因」「雇用形態の違いによる消費者の財力の減退(内需を支える力の不足)」という問題は相変わらずでむしろ前者においては悪化する状況が見られる。現状認識はさらにプラスとなったが先行きがマイナスに転じているあたり、「これ以上は悪くならないだろう」という期待感と「もしかしたらもっと値上げが相次いで……」という不安感が錯綜しているものと思われる。

金融市場の信用不信や不安定感などから株価は低迷したままで、商品価格の上昇もさらに今後引き続きそうな気配を見せていることから、直近における経済の見通しはけっして明るいものではない。それらを解決してくれるはずのお役所や政治家も、体たらくばかりが次々と明るみに出て不信感がつのっている。世界経済のターニングポイントは今年の半ば頃といわれているが、それまでには少なくとも安定した状態を作り、状況の変化に「敏速に対応」できるような状況になるよう望みたいものだ。


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