「テラメント」事件、結局不起訴処分に
2008年04月09日 08:00
【ロイター通信】や[このページ(jiji.com)は掲載が終了しています]などが伝えるところによると証券取引等監視委員会は4月8日、1月25日に[トヨタ自動車(7203)]など6社の株式を51%ずつ、計20兆円強で購入したとする大量保有報告書を提出した神奈川県のテラメント社とその代表取締役であるY氏に対し、検察に対する刑事告発を行わないことを議決した。関係者の話によるとY氏への精神鑑定の結果、責任能力がないと判断した上での決定という。
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同事件は【トヨタやNTT、ソニー、フジテレビがテラメントに買収された日】にもあるように、神奈川県川崎市に本社を置く企業「テラメント」が、1月25日の夕方にトヨタ自動車や【NTT(9432)】など日本を代表する大手企業6社の株式をいずれも51%・計20兆円強分を取得し、大量保有報告書を提出したというもの。発表直後から浮動票株数などを超えており、公開買いつけルールにも抵触していることから、実際には取得していない株式に関する虚偽報告の可能性が高かったが、管轄官庁の金融庁でも同日の20時半から早くも記者会見を開き発表を行い、深夜にもかかわらずデータを公式サイトに掲載して説明を行うなど、異例の対応を見せた。
しかしその後のメディアなどに対する露出や報道などで【テラメント、期日までに訂正報告書提出せず 金融庁は厳しく対応へ・再発防止策も検討】にもあるように、大量保有報告書の提出内容はもちろん発言にも常軌を逸した雰囲気が見受けられたことから、精神鑑定が行われた(ある時点を境にY氏の映像がモザイク処理されたり、報道そのものが行われなくなったのも、それが理由かと思われる)。
ロイター伝によれば証券取引等監視委員会では大量保有報告書の虚偽記載と金融庁の訂正命令に応じないことに対し、テラメント自身(とその当事者であるY氏)を刑事告発するつもりではあった。しかし精神鑑定の結果、責任能力がないと判断、不告発の方針を決めて調査を打ち切ったという。なおEDINETでは現行法では「虚偽報告書であっても」金融庁側に削除する権限がないことから、テラメント側が削除に応じていないため、いまだに該当する大量保有報告書が開示されたままとなっている。対応策として今国会に提出した金融商品取引法改正案で、例外的措置として「公開された大量保有報告書を削除できる規定」を盛り込んでいるとのこと。
「責任能力が無い」という可能性は事件発生時から指摘されていたこと。現行法では処罰できないのは仕方のないことかもしれないが、「ならば何をやっても、どれだけ多くの人に迷惑をかけてもおとがめ無しなのか。何でもアリではないか」という理不尽さが被害者といえる多くの市場関係者の胸のうちに残ることになる。
欧米では本人の責任能力と共に、本人が成した事象そのものに対しペナルティを課す傾向がある。どのみち何か他人に多大な迷惑をかけ、それを故意的に行っている以上、社会的な観点・倫理観においてどこか「ネジが外れている」のは事実。にもかかわらずそれらに対しネジの外れ具合で責任能力のある無しを決めるのは、ある意味問題があるのかもしれない。
少なくとも関係官庁は今件情報がマスコミにリークされた時点で、正式な形での発表なりリリースを行うべきだろう。正式発表も行わず今件の不告発処分についてうやむやにし、時間の経過と共に市場から忘れ去られるのを待つのは避けるべきだ。
(最終更新:2013/08/09)
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