【更新】ニイウス コー(2731)、循環取引で300億円の資産過大計上・読売報じる

2008年04月25日 08:00

株式イメージ[読売新聞]は4月25日、ソフトウェア開発業者で現在経営再建中の【ニイウス コー(2731)】が取引先業者との間で「循環取引」を繰り返して売り上げを水増しし、過去数年間の連結決算で約300億円もの資産を過大計上した疑いがあることを報じた。関係者の話として伝えている。また、証券取引等監視委員会側でも虚偽決算の疑いがあるとし、金融商品取引法の「有価証券報告書の虚偽記載」などの疑いで本格的な調査に乗り出すとも伝えている。

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旧経営陣の循環取引300億円!?

元記事によると関係者の話としてニイウス コーでは2006年6月期までの数年間、実際には商品のやりとりがないにもかかわらず、取引先との間で売り・買い戻しなどの伝票上の操作で循環取引を繰り返し、売り上げ・利益を水増しする経理処理を実施。在庫などを過大に装い資産として300億円ほどを余分に計上したたと見られている。

循環取引の様子
循環取引の様子(加ト吉問題の時の図なのでうどんが用いられている)

ニイウス コーから提出されている有価証券報告書によれば、2003年6月期の売上高は504億9200万円。それが2004年6月期には788億0800万円に増加。2005年6月期は788億9080万円、2006年6月期は771億8000万円とほぼ同レベルの額で推移していた。一方利益は2006年6月期で30億8800万円まで伸びていたが、2007年6月期には売り上げが603億9000万円と大幅に減少し、純利益も302億6500万円の赤字に転落。この時点で40億6800万円の債務超過(会社の資産をすべて売り払っても借金を返しきれない状態)に陥った。

このあとニイウス コーでは第三者割り当て増資で資本増強を果たして破綻を免れたが、創業者の前会長らは経営責任を取って辞任している。

すでに社内でも調査中、元会長は「知らない」

ニイウス コーの循環取引などの不正な取引についてはすでに同社側も公式に認めており、2月14日の段階で「経営陣刷新後に事業内容の精査や資産再評価をしたところ、過去において不適切な疑いのある取引が行われた可能性がある」とし、調査委員会を発足させて調査を進めている([発表リリース、PDF])。

また中間報告書では「旧経営陣の下で行われた、複雑な取引関係」の中で「不適切な疑いのある取引」が発生した可能性を改めて示唆している(<[発表リリース、PDF])。今件元記事では「循環取引が行われ、旧経営陣が関与した疑いがある」という主張に対し前会長は循環取引などは「知らない」と語り、ニイウスコーは「コメントできない」としているとのこと。

あの「加ト吉」の循環取引をスクープした読売なだけに……

先に【加ト吉事件でのはてな「循環取引」とは?】で解説したように、循環取引は「経理上・伝票上だけで商品のやり取りを行い、多くの取引が行われているように見せかける」手法。元々商品が形として見えにくいデジタル・IT系業界でよく行われるものだが、これを用いて決算上の数字を水増しし、投資家の目をあざむくような行為を行えば当然金融商品取引法の「有価証券報告書の虚偽記載」に該当する。例えるなら歩数計のカウンターに細工をして、実際には1周も走っていないのに「グランド100周してきました」と申告し、「最優秀努力賞」の賞状をもらうようなものだ。

現在社内の調査委員会でも調査中だが、調査結果が出ないと中間決算も作成できないため、法定期限までに報告書が提出できず、ニイウス コーは3月30日付けで監理銘柄(確認中)に指定されてしまっている。元々同社では債務超過が発表された前後から【「ニイウスコー 循環取引」の検索結果】でもお分かりの通り、色々と問題が指摘されており、額はともかく循環取引による不当な会計操作が行われていたものという話が取りざたされていた。

今回の報は先に経営陣の大幅刷新、他社への吸収合併と上場廃止など大規模な業界再編につながった「加ト吉の大型循環取引疑惑」報道をスクープした読売新聞が、朝刊配達時間に先んじて夜中に行っている。このパターンはまさに「加ト吉問題」と同じ。

昨今では東京市場、特に新興市場において投資家の信用を取り戻そうと上場企業への審査を厳しくし、これまでは「伝家の宝刀」と呼ばれてきた上場廃止処分を躊躇無く行う姿勢を見せるようになっている。すでにニイウス コーは有価証券報告書(中間決算書)の提出が遅れたとして監理銘柄(確認中)に指定済みだが、証券取引等監視委員会が正式に動くなり、大規模な循環取引における改ざんが明らかになれば、「それなりの」措置が取られることは想像するに難くない。

今後事態がどのように進展するのか、調査委員会の結果発表や関連官公庁の動きと合わせて、注意深く見守りたいところだ。


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(最終更新:2013/08/07)

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