【更新】「特定健診」内容を知らない人は6割強・保健指導も「自信がない」が過半数
2008年04月10日 19:35
計測器メーカーのタニタは4月9日、4月からスタートした特定健康診査・保健指導(特定健診・保険指導)に関する意識調査の結果を発表した。それによると「特定健診」の内容をよく知らない人は全体の6割強にのぼり、調査時は制度開始直前であったにもかかわらず認知度が低いままであることが明らかになった。また実際に保健指導の対象になったとしても、その指導を実践していく自信がないと回答する意見も過半数に達しており、制度へのとまどいや自分の意思への不安感が見える調査結果となっている([発表リリース])。
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今調査は2月22日から27日までの間にインターネット経由で40歳以上(つまり大部分は特定健診の対象者)の男女に行われたもの。有効回答数は556人。男女比は80.4対19.6で、男女共に40歳代がもっとも多い。
●「特定健診・保健指導の内容は知らない」6割強
特定健診・保健指導とは【メタボリックで四人に一人が要指導・来年4月から特定健診、特定保険指導開始】や【メタボ対策全国民体制・40歳から74歳に「特定健診」実施へ】にあるように、今年4月から40歳~74歳の男女に対して行われる、肥満対策の制度。40歳以上(74歳以下)の被保険者やその被扶養者全員に対して各種チェックリストに従い健康診断を実施(特定健診)。その結果次第で各種肥満対策(要はメタボリックシンドローム対策)の支援を受けることができる(保健指導)。費用は原則として無料(保険者である国や自治体が負担する)。
健診や指導の内容は上記記事や各担当官公庁、医療機関などで詳細に説明されているが、初めてのこともあり十分な告知がされているとはいいがたい。今回の調査でも「言葉は耳にしたことがあるが、内容は知らない」の層がもっとも多く4割近くを占めていた。
特定健診・保健指導の認識レベル
言葉だけなら知っている人は7割に達しており、少なくとも「特定健診・保健指導」というキーワードそのものと「4月から何かやるんだな」というレベルの認識は浸透している。しかし実際に何をやらされるのか、何をしなければならないのかについては7割近くが「知らない」と答えていることになる。
言葉だけが広まっても意味は無い。実施されれば経験で知ることになるし、口コミで広がるだろう。来年以降は認識レベルも高まるに違いないが、今からでも「内容も含めてこれまで以上に啓蒙を推し進めねばならない」と関係者に再認識させるだけの数字といえる。
ちなみに男女別では意外にも男性の方が認識度が高い。体系や肥満に対する普段からの情報収集は女性の方が活発かとも思われるのだが、これは恐らく職場で事前告知していることが反映しているのだろう。
●過半数は「保健指導」を受けても実践する自信がない・理由は「面倒だから」
特定健診の結果、要注意ラインを超えた肥満体質、数字が確認できれば、その内容に応じた保健指導を受けねばならない。これは今まで任意で実施されていた肥満対策指導プログラムや、入院した際に実施されることもある栄養士による栄養指導のようなもので、ムチで叩かれたり個室に閉じ込められて食事制限を強要されるわけではないので、変な心配は無用。
その「保健指導」について、「保健指導の内容を十分に把握している人」に対し指導を受けても実施していく意志があるかどうかとたずねたところ、「ある」と答えたのは3割強にとどまった。一方で「意欲はあるが(自分の誘惑に負けそうで・やる気が出なくて)実践する自信がない」は5割近くを示している。
保健指導を実践する意志の有無
注意して欲しいのはこの結果が「保健指導の内容を'十分に'把握している、特定健診・保健指導のことに十分な注意を払っている人」に対するものであるということ。関心を寄せている人ですら過半数が「自信がない」と回答しているのだから、関心があまり無い・まったく無い人ならばどれほど保健指導の内容を実践していけるのだろうか。
なおこの「自信がない」と答えた人にその理由を尋ねたところ、もっとも多かったのは「面倒だから」だった。
■保健指導を実践する自信がない理由(「保健指導の内容を十分に把握している人」中「自信がない」と答えた人。複数回答)
1.面倒だから……70.2%
2.時間が無い……36.2%
3.指導の内容が分からない……29.8%
4.成果が得られない……17.0%
5.家族の協力が得られない……14.9%
6.その他……2.1%
「面倒だから」という答えには単に「本人が面倒くさがり屋である」であるほかに、指導内容が把握しにく、難しいから、ということも含まれているものと思われる。ましてやこの回答は「保健指導の内容を十分に把握している人」によるもの。本人の性質まではアンケートからは把握できないが、指導内容の不明確さや複雑さが面倒さを感じさせ、自信がないと答えさせている可能性が高い。
【「悪玉コレステロール」、低すぎると逆に死亡リスク増大】にもあるように、単純な枠組みですべてをふるいにかけ、一様に「問題あり」として指導を行う今回の制度には、基準そのものもあわせて不信感や疑問を持つ向きも多い。また日本においては保険制度そのものはほぼ全員が加入することになっているものの、健診やその後の指導まで一律に行う仕組みはあまり聞いたことが無い(せいぜいかつてのインフルエンザやはしかワクチン程度だろうか)。
今年は初年度ということもあり、特定健診・保健指導は告知・啓蒙も含め紆余曲折が繰り返されるに違いない。健診や指導を行う側はもちろん、受ける側も納得し、積極的に行えるような制度への進歩を望みたいところだ。
(最終更新:2013/08/09)
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