【更新】新型インフルエンザ用プレパンデミックワクチンを6000人に事前接種へ

2008年04月17日 08:00

新型インフルエンザイメージ[読売新聞]などが伝えるところによれば厚生労働省は4月16日「新型インフルエンザ専門家会議」を開催し、現在備蓄している新型インフルエンザ用ワクチン(プレパンデミックワクチン)を臨床研究としてインフラ従事者など関係者6000人に接種し、効果が確認されれば対象を1000万人に拡大することを決定した。

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これは前日15日、舛添要一厚生労働大臣の記者会見などで明らかになったもので、【議事録】によれば

・プレパンデミックワクチンの備蓄追加
 現在ベトナム、インドネシアで発生した鳥インフルエンザなどを原株にしたプレパンデミックワクチン(※事前対応としてパンデミック(大量感染)が起きる前に発生している感染事例・ウイルスから対抗薬を作り、事前事例のウイルスの派生型に対してあらかじめ対応できるようにしておくワクチン)合わせて1000万人分の現液に加え、中国発のパンデミックも想定し中国株のものを1000万人備蓄している。合計2000万人分の原液を保有しているが、これを増やす方針(後述の臨床研究の成果を見極めて)。
・プレパンデミックワクチンの臨床研究実施
 ワクチンを製剤化し、税関や検疫所、入管職員、感染症指定医療機関職員6000人を対象に事前接種を行い、安全性や有効性を研究する。良好な確認が得られれば、警察官、医療従事者やインフラ維持者など1000万人への事前接種を検討する(実現すれば世界初)。
・パンデミックワクチンの製造体制の期間短縮
 現行は鶏の卵から製造しているため、国民全員分を作るには1年半かかる。これを細胞培養技術の確立を行い、半年程度に短縮することを目指す。


などを骨子としている。

また16日に国立感染症研究を視察した舛添大臣は「安全性を確認した上で接種を行う。とりあえず1000万人。(一般にも)希望する人がいれば増やすことも考える」とコメントしている。

また「ワクチンの製造期間の短縮のための細胞培養技術の確立」については4月10日、バイオベンチャーのUMNファーマが細胞培養によって作られたたんぱく(リコンビナントタンパク)をもとにしたワクチンによる試験を6月中旬から開始する予定(【発表リリース、PDF】)。アメリカのプロテイン・サイエンス・コーポレーションが開発した技術によるものだが、これと何らかの関係があるものと思われる(無ければないで早急に連絡を取り合い、研究の加速化を行うべきだろう)。

16日の会議の詳細は[毎日新聞]の記事などで見られるが、プレパンデミックワクチンの接種には上記理由の他に「完全な日本への侵入阻止、一定地域への囲い込みは不可能」とする現実的な見方や、原液の保存期間(約3年)などの事情もあるようだ。

国民全員分のワクチンを用意すればよい、という考え方もあるが、予算の都合上それは難しい。1000万人分のワクチンの買い取り額は43億円、製造開始の設備投資には120億円かかる。単純計算で全国民分となれば43億円×12で516億円が初年度予算として必要とされ、これが有効期限が切れる3年おきに発生することになる(実際には製造期を分散するため計算はもう少し複雑になる)。それほどの予算は無い、というのが実情。

とはいえ、中国内での新型インフルエンザの話も昨年末からちらほらと漏れ伝わっていることや、韓国で大量の鳥インフルエンザが猛威を振るっているという報道もある。「病状発生と致死までの時間が短ければパンデミックにはならない(広まる前に感染者が移動不可能になるため)」とする説もあるが、移動機関が進歩発展している現在では、過去の事例は参考にしにくいこともあり、油断は禁物。

今後の関連報道に注意深く耳を傾けながら、状況の進展を見守りたいところだ。

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