「物価上がったね」「食品高いし危険だね」1年間で不安3倍に

2008年04月15日 06:30

不安イメージ内閣府は4月14日、国民の基本的意識の動向を調査し、広く行政一般のための基礎資料とするための「社会意識に関する世論調査」の結果を発表した。それによると日本の現状について「悪い方向に向かっている分野」として「景気」「物価」「食糧」を挙げた人が極めて多くなっていることが明らかになった。昨年1月の調査と比べ「景気」は約2倍、「物価」「消費」は約3倍に跳ね上がっており、国民全体における心理的な懸念が深く広く浸透していることを裏付けるデータといえる(【発表ページ】)。

スポンサードリンク

今調査は2月7日から24日の間、20歳以上の人を対象に無作為抽出方式で選び、調査員による個別面接方式によって行われたもの。有効回答数は5494人。男女比は2538対2956。年齢階層比は男女によりやや違いがあるが、総じて年齢が上がるほど多い傾向がある(もっとも多いのは50代女性の11.7%)。

今調査結果では「国や社会との関わり」「社会の現状に対する認識」「国の政策に対する評価」「社会のあり方に関する意識」の4項目に大別し、それぞれ詳細項目の回答を掲載している。興味深い内容が各所で見られるが、今回は「国の政策に対する評価」から「良い方向に向かっている分野」「悪い方向に向かっている分野」について取り上げることにする。

悪い方向……「景気」2倍、「物価」「食糧」は3倍に増加

悪い方向に向かっている分野上位10位(複数回答)
悪い方向に向かっている分野上位10位(複数回答)

上記図表は「悪い方向に向かっている分野」について上位10位を抽出したもの。薄い横棒は昨年1月の前回調査における得票率を表している。

「景気」への不安……1年で2.1倍
「物価」への不安……1年で2.9倍
「食糧」への不安……1年で3.2倍

前回調査でワースト1だった「教育」は大きく下げ、ついで悪かった「治安」もやや下げているものの、順位としてはかなり下にまで落ちている。一方、「景気」「物価」「食糧」「国の財政」「医療・福祉」など昨今の日本経済を襲っている問題が上位にずらりと並び、特に「景気」「物価」「食糧」の3項目は前回調査から約1年の間に大きな不安要素として持ち上がったことがうかがえる。ちなみに「景気」の不安度は2.06倍、「物価」は2.90倍、「食糧」にいたっては3.15倍である。

不安イメージ特に「食糧」の不安増加度が高いのは、今記事のタイトルにもあるように、相次ぐ産地偽装事件や中国産の毒ぎょうざ問題、さらに価格面での資源高騰による相次ぐ値上げが行われるなど、複数面での問題(安全性と価格上昇)が同時に起きているからだと思われる。

公式サイトには【過去8回分の上位項目における変動チャート】も掲載されているが、それを見ても上位三項目がいかに急激に不安要素として浮上してきたかが理解できる。

良い方向……「科学技術」「通信・運輸」部門が上位、「医療・福祉」や経済系は下落

良い方向に向かっている分野上位10位(複数回答)
良い方向に向かっている分野上位10位(複数回答)

一方で「良い方向に向かっている」という回答項目では、今回も前回と同じく「科学技術」と答えた人が最も多く、ついで「通信・運輸」「国際化」「医療・福祉」「防災」の順となっている。前回調査と比べるとトップテン内では「悪い方向」でも上位層に見受けられた「医療・福祉」が、それ以外では「景気」「食糧」「経済力」「物価」など、やはり「悪い方向」に顔を出している項目の下落が目立つ。例えば「経済力」は前回比4.1ポイント、「食糧」は5.0ポイント、「景気」にいたっては9.4ポイントの下落を見せている。


今回取り上げた項目をはじめ、「社会意識に関する世論調査」のデータは調査対象者の心境によるもの。具体的に「物価上昇率○×%」「失業率△□%」というような計測値ではないため、ぶれがあるのでは、とする意見もある。とはいえ人々の心境の変化は経済や社会に対して大きな影響を与えうる要素に他ならず(例えば本当は景気が良くても人々が「景気が悪い」と思っていればサイフのヒモはきつくなるので消費が抑えられる)、今回の調査結果は少なからず「国民視点における」日本の経済・社会の実情を表しているといえる。

ここ一年で
経済面での
心理的悪化が
いちじるしい

特に株価や購買力の低迷、物価上昇による経済的な方面での悪化、制度改正による医療方面への不満が高まっているのが気になる。これらの問題は昨年調査で上位にリストアップされていた「教育」「雇用」「治安」と比べ身近で日常生活において毎日のようにかかわってくることだけに、切実さ・心理的な影響も大きなものがあるのだろう(※無論「教育」「雇用」「治安」問題を軽視してもかまわないという意味ではないので、念のため)。

また押しなべて「悪い方向」への回答数が「良い方向」のそれに比べて高く、全体的に心理状態がネガティブな雰囲気にあるのも困りもの。良い方向に向かっていると思われる項目「科学技術」「通信・運輸」「国際化」が、悪い方向の項目「景気」「物価」「食糧」を押し上げる効果を生み出すこと(例えば「通信・運輸」の発展で景気が良くなるような開発や企業の業績アップが行われるとか、物価や食糧問題を解決するようなテクノロジーが「科学技術」で浸透するとか)に期待をしたいところ。

しかし現実には逆に、短所が長所の足を引っ張るような状況すら見受けられる。該当官公庁や企業において、現状を見る限り主導権争いや責任逃れをしたり、経済問題を政争の具にしている暇などないはず。各自が「為すべきことを」再認識し、「速やかに為す」べく行動してほしいものである。

Related Posts Plugin for WordPress, Blogger...

スポンサードリンク



 


 
(C)JGNN||このサイトについて|サイトマップ|お問い合わせ