「値上げは困る、けどと品質が高ければ我慢」消費者の本音が見え隠れ
2008年03月31日 08:00
[電通(4324)]は3月27日、消費実感調査の一環として、商品などの値上げに対する消費者の意識調査結果を発表した。それによると消費者の過半数は値上げに対して圧迫感を感じているものの、単なる買い控え以上のさまざまな工夫を行うと共に、「どの道値上げをするのなら、品質や安全の向上をしてほしい」という前向きな考えを持つ消費者が多いことが明らかになった(【発表リリース、PDF】)。
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今調査は2月29日から3月3日の間にネット経由で行われたもので、対象は20~69歳の男女(学生除く)。有効回答数は1000。男女比、年齢階層費は未公開。
●「物価上昇で圧迫感」5割を超える
最近特に目立つ物価の上昇に圧迫感があるかどうかについての問いでは、「非常に家計を圧迫」が14.0%、「やや家計を圧迫」が40.5%となり、あわせて家計の54.5%が「物価上昇で家計への圧迫感がある」と回答している。また、圧迫感のレベルについても相当高いようだ。許容できる値上げ幅は「10%未満」、しかし現状では「20%未満」まですでに価格が上がっているという認識が多数を占めている。
ちなみにとりわけ生活に影響が大きい商品は「ガソリン」「灯油」「カップめん」が上位を占めていた。日常生活でほぼ毎日のように消費するインフラ・生活必需品の価格上昇がキツい、ということだろう。これから暑くなり冷房を使うようになれば、「灯油」の代わりに「電気料金」が上位にくるものと思われる。
●「安い商品への切り替え」ではなく「安く売っている店を探す」
物価が上昇してもそのまま甘んじて受け入れるというわけではなく、さまざまな手を消費者側も打っている。値上げ対策行動の上位は次の通り。
・少しでも安い店を探す……62.7%
・特売などの日を選ぶ……53.9%
・購入する量や回数を減らす……49.5%
・より安い国産ブランドを試す……32.6%
1.我慢する
2.じっくり考える
3.安い店・時を選ぶ
カップめんでたとえるなら、お気に入りのブランドが値上げしたからといって安いブランドに切り替えるのではなく、そのブランドが1円でも安く手に入る店を探したり、特売で多少値段が下がるタイミングをまとめて購入する。品質などを落としてでも安いものに切り替えるより、賢く買い物をして値上げの影響を回避する傾向にあるようだ。
また、生活そのものや買い物に対する心境の変化では、
・欲しいものを我慢する……37.6%
・購入する前に商品やサービスを慎重に検討する……37.6%
・衝動買いが減った……31.1%
など、消費そのものに対して慎重・堅実な姿勢が見える。
●多少高くても安全・品質アップならOK
値段が高くなるのは我慢できない、賢く買い物してなんとかしようと考えている消費者だが、一方で「単に値上げするのはイヤだが、安全性や品質の向上を伴うのなら勘弁してあげる」という考え方も多いようだ。
■値段が上がっても次の要件を満たしていれば納得する
・安全性について信用できる……80.6%
・値上げと共に品質も向上する……57.2%
原材料の値上げは明らか。便乗値上げは許さないが、通常の値上げは仕方のないところ。しかし値上げするのならこの際品質や安全性を高めてほしい、それなら値上げも許容できる考え方が支配的に見える。特に「安全性」「健康」「味や品質」など付加価値面でプラスαを求めているようだ。
物価上昇に伴う消費者の消費生活スタイルの変化については先日【「外食節約」「娯楽やファッションをチープに」物価上昇で変わる庶民の生活スタイル】にもあるように、別の調査機関における結果も発表されている。「少しでも安い店を探す」「特売などの日を選ぶ」などが上位にくるあたりは、そのデータから導かれた「小売業界における現状の推測」を裏付ける形となっている。
一方、物価が上がったから単に安いものを選ぶのではなく、「(どうせ高いのなら)多少高くても品質や安全性に優れたものを選ぼう」という考え方は、去年から相次いで発覚している食品の安全性に疑問符を投げかけざるを得ない問題について、消費者が学んだ結果といえるだろう。
ガソリンや光熱費など、品質云々を問うことができないインフラ系商品・サービスの値上げは仕方ない。しかし食品に代表される消費型商品においては、物価上昇と共に品質と改めて向き合う姿勢が消費者側に見受けられる。企業側も「原材料の価格高騰によるコストアップはいかんともしがたく」と金太郎あめを切った断面のように同じような言い回しで値上げを説明するのではなく、むしろ「品質向上・安全性アップ」をアピールするような形で攻勢をかける勢いで対処するべきだろう。そうすれば消費者のニーズにこたえられるはずだ。
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