渡辺金融相曰く「アメリカは日本のバブル崩壊の教訓を活かすことができる」

2008年03月25日 12:00

渡辺喜美金融担当相は3月23日、イギリスの経済誌FinalcialTimes誌とのインタビューの中で、アメリカが現在おかれている金融信用不安・不信問題に対し、「日本の教訓を活かし金融システムへの公的資金を投入すべきである(The US should inject public funds into its financial system, which is undergoing a worse crisis than that experienced by Japan during its non-performing loan crisis)」との考えを示した(【関連記事:US can learn from Japan’s crisis】)。

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渡辺金融相はインタビューの中で、現在アメリカが置かれている現状について、日本のバブル崩壊と不良債権問題の解消の過程で公的資金を投入した事例を説明し、「日本の事例から学び、アメリカにとって公的資金を金融システム分野に投入することは避けられない」と説明している。さらにこの意向について直接アメリカをはじめとした外国政府に伝えるのは難しいが、例えばG7(七カ国財務相・中央銀行総裁会議)において日本の教訓を解説、「必要ならば局面の打開に向けた必要な措置を取る用意が出来ている」といった意思表示をすることは可能だとコメントした。

「必要ならば協力措置の用意がある」
とG7で意思表示をすることは可能だ

現在欧米の中央銀行(≒政府)では、現在の金融不安の解消のため、公的資金を用いて主に不動産の担保抵当権付有価証券(モーゲージ)を購入するべきかどうか検討する段階にある。今回の渡辺金融相の発言は、現在アメリカのサブプライムローン問題に端を発した世界中に広がりつつある金融不安問題が、日本経済において1990年代に不動産などによる不良債権処理のもたつきで生じた「失われた10年」よりもはるかに重大な問題かもしれないという点において、日本の閣僚としては初のものとなる。

世界規模で協力体制をとらないと
日本の「失われた10年」以上の
問題に達する可能性がある

さらに渡辺金融相は「世界の主導者が協力しあってこの問題に素早く、適切に取り組まない限り、さらにドル安による信用不信などが拡大する」「現在金融市場で問題視されている過剰流動性も、アメリカに端を発している。これがさらに加速するのであれば、予想も付かない問題を引き起こしかねない」との懸念を示した。そしてこの解決策には「風呂おけの穴を埋めること(つまりアメリカからの資金流出を止めること)」「しかしこれまでのドル危機よりも解決へのハードルは高いものになる」とし、問題打開は容易でないことも語っている。

金融市場の過剰流動性問題と
アメリカの不良債権問題は同義

日本の不良債権問題とアメリカのサブプライムローン問題に端を発する金融市場不安との相違に関して渡辺金融相は「日本は銀行部門での問題がメインだった。アメリカでは銀行部門に限らず、他の金融業界にまで波及している。したがってその点においては日本の事例を参照することはできず、どれくらい大きな『風呂おけの穴』が空いているのかは分からない」とし、アメリカの金融市場の混乱が単に銀行だけの問題に留まらないことに対する不安を伝えている。

具体的な為替相場の予想などの言及こそないが、内容的にはほぼ先の【「年末までに1ドル90円突破も」「アメリカはすぐに大量に公的資金を投入すべし」ミスター円こと榊原氏大いに語る】にある榊原英資元財務官の助言と同じ。要は

・日本のバブル崩壊後の不良債権処理は公的資金注入で解決した。
・しかしタイミング的にはやや遅きに逸しており、解決までに余計な損失と時間をかけることになった。
・アメリカはこれら日本の教訓を活かし、一刻も早く大胆な公的資金投入による介入を果たすべき。


という点に尽きる。

日本国内においても場合によっては日銀総裁すら代行の出席、という可能性もあるほど政局が安定しているとはいえない。しかし、それでも過去に(失敗・成功両面における)不良債権処理の経験を持ち、それが有効であることに違いない。

G7が成果を見せ、アメリカの減税政策の効果が出始めると思われる5月以降のタイミングにあわせる形で、ダイナミックな施政が行なわれることを望みたいものだ。

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