お酒の発酵技術を応用した「スーパー酵母」でバイオエタノールを簡単に製造・月桂冠開発
2008年03月20日 08:00
月桂冠は3月19日、バイオエタノールの生産技術としてもみ殻や稲わらなど、食用でない植物原料からも直接エタノールが生産できる技術を開発したと発表した。硫酸などの化学薬品を使う必要がないため、環境への影響を少なくするだけでなく、処理施設の規模も小さく抑えることができる(【発表リリース】)。
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バイオエタノールの原料となる植物のセルロースは、化学的に安定して強固な構造を持っている。そのため従来では硫酸などの化学薬品で前処理をし、発酵可能な状態に分解する準備を整える必要があった。今回開発された「スーパー酵母」では、セルロース分解酵素を作る遺伝子を持つ麹類の遺伝子を清酒酵母に組み込んであり、「亜臨海処理」(水を使って高温・高圧の状態にして酸性化する)と呼ぶ方法で前処理をした植物原料を「スーパー酵母」に用いることで、単独でエタノールを作ることが出来る。
この手法の場合、化学薬品を使うことなく生成ができるので環境への影響が最小限に抑えられる。また、亜臨海処理は従来の「超臨海処理」と比べて小型で簡易の施設で行なうことができるため、生産拠点のシンプル化を促進できる。
すでにこの技術を使い、もみ殻や稲わらからエタノールが生成できることを実験で確認済み。今後は実用化のために、アルコールの収量や収率を上げる研究などを進めていくという。
今回開発された「スーパー酵母」は、日本の酒造りの中で培われてきた発酵技術や微生物、酵素の利用技術が、バイオエタノールの生産に活かせる可能性を見出したもの。変換効率などが未発表のため、効率面での実用性を検証することはできないが、「簡単な施設や素材でできること」「周囲環境の汚染リスクを減らせること」、そして何よりも「既存の伝統技術を応用した新しい技術がエネルギー問題に寄与する可能性」を見せてくれたことが素晴らしい。発想の面でも、元々植物材料のバイオエタノールへの精製の際に大きな課題とされている「セルロースの分解」を、造酒の発酵技術をうまく活かした点には、感嘆すら覚える。
今技術に関する月桂冠からの続報に期待したいところだ。
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