三菱電機が携帯電話事業から撤退・「終息」再び語られる

2008年03月04日 08:00

株式イメージ【三菱電機(6503)】は3月3日、「終息」という表現を用い、携帯電話事業から撤退することを正式に発表した。今後は通信業界、セキュリティ、自動車や鉄道の情報通信システムなど対企業取引(B2B向け事業)に注力していく。【NTTドコモ(9437)】向けに提供販売している携帯端末は現行のD905iやD705iなどを最後に新規の開発販売製造を終え、アフターサービスのみの継続となる(【発表リリース】)。

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携帯電話事業からの撤退理由について三菱電機では、

市場が成熟化し、携帯電話端末の需要の伸びが見通せない中で、お客様の嗜好がますます多様化する非常に厳しい事業環境の下、当該事業につきましては、足下の出荷台数が減少するとともに、今後の業績改善を見通すことが非常に難しくなっております。

このような状況の中で、当社は、あらゆる角度から携帯電話端末事業の方向性に関して検討してきた結果、当該事業を終息するとともに、当該事業の経営資源を、当社がより注力・強化していく事業にシフトし、当社全体の持続的成長と、企業価値の一層の向上を目指すことといたしました。


という表現を用いている。要は市場が飽和化し、先行きが不透明になったから「戦略的転進」をしようということ。これまで携帯電話事業に割り当てられていた人材などの経営資源は、重点展開されることになるB2B事業に割り振られることになる。また本件に関わる当期の一時損失は約170億円に達する見込みだが、他事業の収益改善で吸収できる見込みとしている。

三菱電機のDシリーズといえばスライド式の本体が特徴的で、独特のフォルムからファンも少なくなかった。今回の「撤退」で今夏までに発売予定とも言われていたD906iも発売を取りやめることになる。会社全体の方針ならば仕方ないが、残念に思う人もいるに違いない。ちなみに当方の携帯電話も、現在のSH905iの前にはD503iSを用いていた。使用年数はD503iSが一番長かっただけに、複雑な心境であることは否定できない。

「終息」と「再編」が今年のトレンド!?

さて、今回の三菱電機の携帯事業の撤退を報じるリリースでは「1.携帯電話端末事業の終息」というタイトルにもあるように、事業からの撤退を「終息」と表現していた。つい先日の2月19日、【東芝(6502)】がHD DVD事業から手を引く発表をした時もこの「終息」という言葉が用いられている。

「撤退」「終了」「打ち切り」などと比べれば、「終息」という言葉はネガティブさに薄く、穏やかに事を終える感もある。「終息」が使われる背景には、顧客や関係者に余計な心配を与えたくない、という企業側の意図も見え隠れしている。景気後退が懸念される昨今、大手企業の事業再編に伴い、「終息」は今年のトレンドキーワードになるのかもしれない。

ただ、太平洋戦争時に「退却」を「戦略的転進」と言い換えたことや、昨今の報道で「窃盗」を「万引き」と表現を変えて事態をごまかすような事例も想像できたのも事実。今後「終息」という言葉を用いる企業が出ても第一印象で慌てさせないのはかまわないが、本文では今回の三菱電機のリリースのようにしっかりと事実を語り、企業としての責任説明を果たしてほしいものだ。

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